ソンブレロをかぶった陽気な人たちが、テキーラを飲みながらギターを片手に歌っている、そんなイメージが強い中南米の国、メキシコ。この国のソウルフードといえば、トルティーヤといわれる皮でバラエティー豊富な具材を挟んで食べる「タコス」です。そんなタコスを提供しているキッチンカー「タコスの森」が、新発田市役所に出店しているとの情報を聞きつけ、さっそくオーナーの五十嵐さんにインタビューしに行ってきました。
タコスの森
五十嵐 基浩 Motohiro Ikarashi
1989年新発田市生まれ。翔洋学園高等学校を卒業後、国際調理製菓専門学校へ進学。卒業後は東京のメキシコ料理店や新潟県立新発田病院などで経験を積み、メキシコへ。2017年より「タコスの森」をスタート。
――五十嵐さんは、昔から料理が好きだったんですか?
五十嵐さん:高校生までは、まったくしたことがありませんでした。料理をやりはじめたり、学びはじめたのは国際調理製菓専門学校へ進学してからですね。
――え? 料理をまったくしてこなかったのに、料理の道に進んだんですね。
五十嵐さん:はい。当時、テキーラにハマっていて。それで、テキーラのことがもっと知りたくなって、瓶裏のラベルを見てみたんです。そしたら「原産国:メキシコ」の文字があって。それでメキシコについて調べ始めたら…タコスという美味しそうな食べ物があるじゃないですか。気になって作ってみたら…美味しい! もっと作れるようになりたいと思って、料理の道へ進むことに決めました。
――テキーラ、タコス、料理とつながったんですね。専門学校で料理を学んでからは?
五十嵐さん:専門学校の卒業を前に、校長先生の知り合いがメキシコにいるからもしかしたら行けるかもしれない、とチャンスが巡ってきました。でも、スペイン語がまったく話せなかったから、結局はNGになってしまって。それで、そのままスーパーの総菜コーナーで働くことになりました(笑)
――おっと、タコスから遠ざかってしまいましたね。
五十嵐さん:そうなんです。その後は、専門学校で研修に行った東京のメキシコ料理店で働かせてもらえたんですけど、3ヶ月でクビになっちゃって。寝坊の常習犯だったんですよね(笑)。あとは仕事を転々として、なんとかお金を貯めて、どうにか憧れのメキシコへ行きました。
――ついに念願かなってメキシコへ。メキシコでは何をしていたんですか?
五十嵐さん:とにかく食べて、飲んでいましたね(笑)。そのお陰か、いろんな人と出会えて、たくさんの刺激や知識をもらえたことで、タコスのキッチンカーをやってみようと決心できたんだと思います。
――どんな出会いだったんですか?
五十嵐さん:一番の出会いは、福岡でタコスのキッチンカーをしている方との出会いでしたね。「帰国したら見学しに来なよ」と言ってくれて。実際にキッチンカーの仕組みや、メニューの作り方を教えてくれました。それこそ、「タコスの森」で提供しているジャークチキンを教えてくれたんです。
――それは素敵な出会いでしたね。「タコスのキッチンカーをやろう」と決心してからは、どうされたんですか?
五十嵐さん:アルバイトで生計を立てながらイベント出店をして、タコスを販売していました。でも、あまり売れなくて。それで意を決してキッチンカーをスタートしたんですけど、そしたら「会社に来てくれないか」「イベントで出店しないか」などと、たくさん声をかけてもらえるようになって。キッチンカー同士のつながりもできて、出店などの知識を教えてもらえたり、いろんな良いコトがありましたね。
――なるほど。それじゃあ、今日出店している新発田市役所も、そのつながりからなんですか?
五十嵐さん:そうですね。お陰様で新発田市役所や新潟県庁、万代シテイで定期的に出店させてもらえたり、今は新型コロナウイルスの影響で減っているけど各地のイベントに声をかけてもらったり、いろいろな場所で活動させてもらえています。
――「タコスの森」について詳しく教えてください。どんなメニューがありますか?
五十嵐さん:店名の通り、看板メニューはタコス。その他にもハンバーガーやオムタコライス、ジャークチキンなどがあります。基本的にはメキシコ料理をベースとしているけれど、辛くないサルサソースを作るなど、誰でも食べやすいメニュー作りを心掛けています。
――辛くないサルサソースがあるなんて、家族連れにも優しいですね。
五十嵐さん:はい。それともうひとつ、「タコスの森」のサルサソースは、火を入れています。本来であれば生のトマトや玉ネギ、パクチーなどの食材で作るけど、それが苦手な人も多いから、食べやすくトマトソースみたいに作っているんです。
――そんな気遣いまで。誰でも食べやすいように考えられていますけど、本場メキシコで学んできたことは、どう生かされていますか?
五十嵐さん:サルサソースを食べやすいように火を入れたり、辛さをなくしたり、今はこれまで学んできたことの真逆をしています。それは日本人に合わせるため。まだまだタコスの文化が根付いていない日本では、とにかくみんなに知ってもらって、食べてもらうことが重要だと考えています。
――では最後に、タコスをどのような存在にしていきたいですか?
五十嵐さん:メキシコのタコスは、いつでも、どこでも食べられるソウルフードです。それこそ、日本でいうおにぎりと同じような存在。日本でも、本場のタコスの味が浸透して「あ!タコスだ!」ってなれるように、徐々に本場のテイストも取り入れていきたいと思っています。まずは地元の新発田から。目指せ新発田のソウルフード!
タコスの森