新潟市中央区上古町に新しくオープンした古着屋「THIS MAN(ディスマン)」は、ジャンルレスな古着がずらりと並んでいるお店。一見、小洒落た最先端のセレクトショップみたいだけど、一歩足を踏み入れるとそこには気の利いた古着ばかりの空間で、そのギャップに良い意味で驚かされます。今回は代表を務める大野さんに、古着の魅力をたっぷりうかがってきました。
THIS MAN
大野 寛太 Ohno Kanta
1993年新潟市生まれ。開志学園高等学校卒業後、HANJIROやZARA Japan、DESERT SNOW NIIGATAなどで勤務。2020年「THIS MAN」を開業。映画鑑賞が好きで、ベストワンは2007年に公開された「Into the Wild」。
――さすが古着屋さん、やっぱりお洒落ですね。いつ頃からファッションに興味を持ちはじめたんですか?
大野さん:小学4年生のときですね。古着が大好きな2歳年上のアニキがいて、いろいろと服を譲り受けていたんです。その時点で興味は持っていたけれど、The Rolling StonesのバンドTとトレンチコートを貸してもらったときに、「カッコイイな……」って思ったんですよ。これがキッカケになって、アニキみたいに古着を着ようと強く思いました。
――ベロマークのバンドTは、小学生からしたら衝撃的なデザインですよね。それからは古着を買い漁っていたんですか?
大野さん:そうですね。「WEGO」がまだ古着がメインだったり、古町にはWITHビルがあって、そこにも「sevens」が入っていたり、名前も知らない古着屋とか、いろいろ回っていましたね。だって古着屋って、1,000円札を握りしめて行けば何か買えるんですよ? しかも、たまに掘り出し物なんかも出てくるし。楽しくて仕方なかったですね。
――掘り出し物を探すのは、古着の醍醐味でもありますよね。ちなみに、コーディネートで参考にしていた人とかはいます?
大野さん:人と言えば人なんですけど、当時観ていた映画に登場する俳優を参考にしていました。洋画のスタイルって、とにかくカッコイイんですよね。
――映画を参考に? 例えばどんなスタイルを?
大野さん:そうですね……。黒のリーバイスと黒のドクターマーチンを合わせたり、70年代のコンバースを履いてオールドステューシーのTシャツを着たり、とかですね。
――アパレル業という仕事を選んだのは、やっぱり昔から古着などのファッションが好きだったからですか?
大野さん:もちろん根底には「服が好き」という思いはあります。でも、僕が学生のときは、カッコイイ夢の二大巨塔が「美容師」と「アパレル店員」だったんです。だから「アパレル店員になりたい」って語るのがカッコイイと思っていて(笑)
――その雰囲気なんかわかります(笑)。どんなアパレルショップで働いていたんですか?
大野さん:高校を卒業してからは、ラブラ万代の「HANJIRO」に入社したんです。ここは古着を取り扱っていたこともあって、店長から海外での買い付けの話をたくさん聞かせてもらいました。写真や実体験を事細かに話してくれて、まるで深夜特急を読んでいるかのような気分になったのを、今でも覚えています。空想でのバックパッカーみたいな。
――古着の買い付けって、宝探しみたいにワクワクするらしいですね。
大野さん:そうなんですよ。だからその話を聞いて、さらに古着にハマってしまいましたね。その後はアパレルショップを転々として、最後は上古町にある「DESERT SNOW NIIGATA」で古着の知識をたくさん得ることができました。
――どんな知識を得られましたか?
大野さん:それまでは接客を主体としていたけれど、古着の相場観や商品価値の識別とか、古着を取り扱う上で必要な知識ですね。例えばChampionのタグからは、年代を識別することが出来ます。刺繍タグは90年代、トリコカラーのタグは80年代、70年代はサイズによってタグのカラーが異なるとか。サイズによって価値も変わってくるんですよ。
――それでは「THIS MAN」についても教えてください。どんな古着屋さんですか?
大野さん:僕自身が古着とブランドを合わせるとか、自由な組み合わせのコーデが好きだから、ヨーロピアンやバンドTがあったり、Maison Margielaなどのハイブランドもあったり、いろんな組み合わせを楽しみながら古着の可能性をフルに感じてもらいたいっていう、とにかくジャンルレスな古着を取り揃えています。
――いろんな組み合わせというと、古着とファストファッションとか、そんな提案もしてくれるんですか?
大野さん:もちろんです。どんなサイズ感でも、ストリートファッションでも、さまざまなジャンルに対応していく意味でもジャンルレスなんです。あえて説明するなら、幅広い組み合わせの提案ができるから「品があって、気が利いているアイテムが揃っている古着屋」ですかね。
――なるほど。でも、どのアイテムもこだわってセレクトしているんですよね?
大野さん:はい。「THIS MAN」に並んでいるアイテムは、どれも汗水流して見つけてきたモノばかりです。だからそれぞれに思い入れもあるし、見つけたときのシーンを回想しながら、「コレどうですか?」と提案しています。
――ひとつひとつに思い入れがあるんですね。それでは最後に、大野さんにとって古着とはどんな存在ですか?
大野さん:古着って、どんな国で作られたのか、どんな人たちが着てきたのか、そういうさまざまなストーリーが一着に詰まっているんです。だからこそ、それらを知ることでその国や時代に行ったかのように疑似体験させてくれるんです。だから僕にとって古着は、旅の気分を味わわせてくれるアイテムだと思っています。
インタビューが終わって、店内をブラブラさせてもらっているとき、アウターやデニム、Tシャツを手にとるたびに、その商品についての話をしてくれた大野さん。しっかりとした知識はもちろんだけど、まるで子どもが夢を語っているかのようなキラキラとした眼差しが特に印象的でした。とにかく楽しそうに語ってくれて、「本当に古着が好きなんだな」と感じたインタビューでした。
THIS MAN
新潟県新潟市中央区古町通4-568