Things

新年一発目は、書道の魅力を広く伝える女流書家「下田彩水」。

新年明けましておめでとうございます。今年も「Things」をどうぞよろしくお願いいたします。お正月といえば、「書き初め」。パソコンが主流の現代では文字を手で書く機会がぐんと減ってしまいましたが、手書きの文字には、活字やパソコンのフォントにはない表現力と魅力があります。今回は新年最初の記事らしく、加茂市を拠点に活躍している書家の下田彩水(しもださいすい)さんに、書の魅力をたっぷり語っていただきました。

 

 

下田 彩水 Saisui Shimoda

加茂市生まれ。書家の家に生まれ育ち、幼少期より書を学ぶ。長岡造形大学でデザインを学んだ後、書道師範の免許を取得し家業の書道教室で指導を始める。その傍ら商品ロゴや題字などの文字デザインをはじめ、パフォーマンス、講座と幅広く活動。華道の師範でもある。スノーボードが趣味という一面も。

 

書道とグラフィックデザインの間で揺れ動いて。

——彩水さんはいつ頃から書道を始めたんですか?

彩水さん: 家が「下田書道会」という書道教室をやっていて、祖母や両親が書道の師範なんです。そのような家庭で育ったので、私も3歳の頃から書道を続けてきました。

 

——おお、書家のご一家なんですね。

彩水さん: 一族に書家が多いんです。祖母方の祖先は北条時宗と血縁の安達泰盛(あだちやすもり)で、「徒然草」にも登場する書の達人なんです。父の曽祖父は校長から中魚沼郡会議員になった一筆書きの書家で、父の伯父は大蔵省勤務時に昭和天皇から書を認められて、宮内庁で侍従としてお仕えしていたんですよ。

 

——むちゃくちゃ由緒正しい一族ですね! じゃあ彩水さんも幼い頃から書家を目指していたんですね。

彩水さん: いえ、小学生の頃はファッションデザイナーになるのが夢でした(笑)。でも中学生のとき、テレビで見た公共広告機構のコマーシャルを見て、広告の仕事に惹かれるようになっていったんです。たくさんの人にメッセージを伝える仕事って素敵だなって思ったんですよね。それで大学に進学するとき、新潟大学の書道科で書の勉強をするか、それとも長岡造形大学でデザインの勉強をするか迷ったんです。

 

 

——結局どちらに進学したんですか?

彩水さん: 祖母に相談したら「書道は家でも学べるから、造形大学でデザインの勉強をした方が将来の役に立つんじゃないか」って言われたので、長岡造形大学に進学して、広告デザインやタイポグラフィックの勉強をしました。でも卒業のときにデザインの仕事と書の道とどちらに進むかでまた悩んでしまったんです。

 

——確かに悩みますよね。

彩水さん: そのとき大学で教わったグラフィックデザインの先生から、「グラフィックデザインをやる人間は文字を書けた方がいい」って言われたんです。その言葉のおかげで書とデザインが私の中でつながって、家業の「下田書道会」で師範として書道を教えながら、デザイン関係の仕事もするようになりました。

 

ロゴやパフォーマンス。様々なシーンに広がり続ける書の世界。

——どんないきさつでデザイン関係の仕事を始めることになったんですか?

彩水さん: 一番最初にやったのは友人から頼まれた「雪恋祭(ゆきこいまつり)」っていうイベントの題字でした。それがクチコミで広がって、今度は広告代理店に勤めていた友人から筆文字の仕事を依頼してもらったんです。文字を書く仕事をもらえるっていうことが嬉しかったですね。

 

——文字を書く仕事では、他にどんなものがありますか?

彩水さん:2013年に原酒造の「越の誉−彩−」っていうお酒の商品ロゴを書きました。原酒造の社長さんから気に入っていただけたみたいで、その後もいろいろなお酒のロゴを書かせていただきました。

 

 

——たしかに日本酒のロゴには筆文字が合いますもんね。他にも印象に残っている仕事ってありますか?

彩水さん:長岡造形大学と青陵大学がコラボしたファッションショーで、ウエディングドレスに書を書いたことが印象に残ってますね。昔の夢だったファッションデザイナーになったような気分でした。あと加茂山公園で開催された「JIN ROCK FESTIVAL」でタイムテーブルとTシャツの文字を書かせていただきました。好きなアーティストが出ていて、その名前を書くことができたのがうれしかったです(笑)。アーティストのPVに使う書を書かせていただいたときは、自分の書が動くのが新鮮で面白かったですね。

 

——ひとことで「書」といっても、幅広い使われ方をしているんですね。

彩水さん:そうですね。オーダーをいただいて文字を書く以外にも、イベントや式典で書のパフォーマンスをやってきました。ウェディングパーティーで大きな紙に「比翼連理(ひよくれんり)」と書かせていただいたのが最初でしたね。その後も「新潟県民会館50周年記念祭」で、三味線の曲に合わせて9メートルくらいの紙に「飛躍」という文字を書いたり、神社で奉納揮毫をしたりしてきました。私のパフォーマンスを見ることで「書」を体験してもらって、少しでも興味を持ってもらえたらと思っています。

 

——本当にいろんな活動をされているんですね。作品展に出展したりは?

彩水さん:ご依頼いただく仕事と違って、作品展は自分の好きな作品が作れる絶好の機会なんですよね。じつは何年も前から海外での展示やパフォーマンスのお誘いもいただいているんです。でも今は子育て中なので、作品を作る時間がないんですよ。書の活動に力を入れたいという葛藤もありますが、祖母から聞かされた「生き方が字に表れる」という言葉を思い出して、今は子育ても楽しみたいと思っています。

 

書の魅力は、人の心が映し出されること。

——「下田書道会」というのは書道教室なんですか?

彩水さん:そうです。現在では父、母、兄、私で指導させていただいています。他界した祖母も指導者でした。加茂市を中心に、新潟市、見附市の7か所に教室がありますが、最近は子どもの数がどんどん減ってきているので、生徒の数も減少しているんです。

 

——どんな子どもが習いに来ているんですか?

彩水さん:集中力を身につけてほしいと考えて子どもに習わせる親御さんが多いですね。手を動かすことは脳の発達にもいいですし、集中力も身につくと思います。

 

——書道が上達するコツってあるんでしょうか。

彩水さん:お手本をよく見て、美しい文字の形を自分の頭の中に落とし込むんです。後はその形が表現できるように、繰り返し練習することですね。そのためにも集中して書くことが大切ですが、どうしても書けないときには無理をしないで筆を止めることも必要なんです。

 

 

——なるほど。ちなみに彩水さんご自身はどんなことに気をつけて書いていますか?

彩水さん:その文字のイメージを思い描きながら書くようにしています。たとえば「朝」という字を書く場合は、自分が想像する朝を頭で思い描きながら書いていますね。オーダーをいただいて書くときは、できるだけイメージを細かくヒアリングして、それを表現するようにしています。

 

——彩水さんが思う書の魅力を教えてください。

彩水さん:書というのは活字とは違って、書いた人の心を映し出すものだと思うんです。同じ人が書いても、日によって文字が変わってくるんですよ。書道教室に来る子どもの字を見ていても、いいことがあったり、嫌なことがあったりするとわかるんです。そこが面白いと思いますね。

 

日本の素晴らしい伝統文化を伝えていきたい。

——今後やってみたいことってありますか?

彩水さん:とりあえず海外での個展を開催できるように頑張ります。あと、子どもたちに書を楽しんでほしいという思いで「書人サンガ」っていうキッズパフォーマンスグループを作ったんです。いろいろなところで活動をして、それを見た子どもたちに書への興味を持ってもらえたらと思っています。日本の素晴らしい伝統文化を絶やさないように、多くの人たちに伝えていけたらいいですね。

 

 

手書きの文字には活字にはできない表現力がありますよね。彩水さんの書を見て心が動いたら、ぜひ自分でも手を動かしてみてはいかがでしょうか。お正月といえば、書き初めです。皆さんにとって今年一年がいい年になりますように。

 

下田彩水(下田書道会)

〒959-1313 新潟県加茂市幸町1-7-20

0256-52-2232

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