「新潟5大ラーメン」というのをご存じですか? 新潟県を代表する5種類の人気ラーメン。三吉屋などの「新潟あっさり醤油ラーメン」は、新潟市古町を中心とした屋台発祥のあっさり支那そば。杭州飯店などの「燕三条背脂ラーメン」は、魚介系醤油スープを背脂が被う極太麺のラーメン。青島食堂などの「長岡生姜醤油ラーメン」は、生姜の風味が効いた醤油ラーメン。大衆食堂正広などの「三条カレーラーメン」は三条で70年以上の歴史があるカレーラーメン。そして今回紹介する「新潟濃厚味噌ラーメン」もその5大ラーメンのひとつと言われています。今日は「新潟濃厚味噌ラーメン」を提供している「ラーメン東横」の店長・安部義行さんにお話をお聞きしました。
ラーメン東横
安部 義行 Yoshiyuki Anbe
1950年出雲崎町生まれ。ラーメン東横代表。東京の洋食店で修行したのち、兄・潤二(じゅんじ)の誘いで新潟に戻り、ラーメン東横を手伝うようになる。兄が紫竹店に移り「東横」と改名してからは、駅南店を譲り受けて「ラーメン東横」として営業している。趣味はおいしいものを作ること。
まず、「新潟濃厚味噌ラーメン」とはどんなラーメンなのか。一番の特徴は、しょっぱくてコクの強い濃厚味噌スープです。初めて食べる人は、そのしょっぱさと濃厚さにちょっと驚くかもしれません。そのスープを、一緒に提供される割りスープで自分好みの味に調節して食べる。それがこのラーメンの食べ方です。また、スープに負けないインパクトなのが極太麺。そして山盛りのモヤシやキャベツです。濃厚スープ、極太麺、野菜。この3つの要素の絶妙なバランスが「新潟濃厚味噌ラーメン」を支えています。
——よろしくお願いします。今日は「新潟濃厚味噌ラーメン」についていろいろ教えてください。
安部さん:こちらこそ、よろしくお願いします。
——まず「ラーメン東横」についてお聞きしたいのですが、安部さんが創業したんでしょうか?
安部さん:安部は安部でも兄の潤二が創業した店なんです(笑)。兄は若い頃、東京や横浜の飲食店で中華から洋食まで様々な料理の修行をしていました。その後、新潟に戻って「四川飯店」でホールスタッフをしていたんですが、彼は当時から自分の店をやってみたいと思っていたようです。そこで新潟市西蒲区の「こまどり」での修行を経て、昭和58年も笹口にある現在の場所に「ラーメン東横」をオープンしました。ちなみに店名は若い頃に修行した東京、横浜それぞれの頭文字をとって初心を忘れないように「東横」にしたそうですよ。
——なるほど、お兄様が最初に立ち上げたんですね。創業時から味噌ラーメンはあったんですか?
安部さん:ありました。というより、味噌ラーメンありきで始めた店と言った方がいいかもしれません。「何か面白い料理を出している店はないか?」と人に相談したところ、新潟市西蒲区(旧巻町)にある「こまどり」で面白いラーメンを提供していると教えてもらいました。そこで「濃厚味噌ラーメン」に出会って衝撃を受けたようです。「給料はいらないので味噌ラーメンの作り方を教えてください。」と頼み込んで、「こまどり」で味噌ラーメンの作り方を学び、そこから独自の工夫をして「ラーメン東横」を始めたんですよ。
——「東横」の「濃厚味噌ラーメン」を食べた当時のお客さんの反応はどうだったんでしょうか?
安部さん:いやーお客さんは少なかったみたいですね(笑)。やっぱり、しょっぱくて濃厚な味噌ラーメンなんて、まだ馴染みがないですから。あと、当時の新潟駅南口は今みたいに拓けてなくて、人もあまり通らない場所でした。夜なんて女性が一人で歩くのも危ないくらい真っ暗でしたから。でもそのうち、周辺にある学校の学生さんを中心に口コミで話題になっていき、お客さんも増えていった感じですね。
——安部さんは創業時から「ラーメン東横」を手伝っていたんですか?
安部さん:いいえ。私は若い頃、東京の洋食店「煉瓦亭(れんがてい)」で15年くらい修行をしていたんです。ある日、兄から連絡があり「人手が足りなくて困っているから、店を手伝ってくれないか?」と頼まれまして、新潟に戻って「ラーメン東横」を手伝うことになりました。年号が平成になる数日前のことでした。
——いつ頃からお店を任されるようになったんでしょうか?
安部さん:平成15年に「東横 紫竹店」を作ったタイミングで兄はそちらの方に移りました。それで残った駅南店の店舗を私に譲ってくれました。店名も自由に変えていいといわれたんですが、今までのお客さんもいることですし「ラーメン東横」として営業していくことにしたんです。
——実際は、お兄さんの東横グループから独立した形になるんですね。
安部さん:はい。兄の方は「東横」という店名で、紫竹山店、愛宕店、白根店などグループ店がいくつかあります。私の方は「ラーメン東横」なんです。ちょっと混同しやすいので、最初の頃はクーポン誌に掲載された「東横」グループのクーポンを、間違って持ってくるお客さんがいましたね。「東横」グループと間違われるのを防ぐため、取材を遠慮した時期もあったんです。
——壁に貼ってあるサインを見るとアーティストのサインが多いですね?
安部さん:そうですね。新潟駅が近いこともあるのか、ツアーなどで新潟に来たアーティストの方々が食べに来てくれます。最初はアーティストかどうかなんてわからなかったんですが、他のお客さんが「あそこで食べてる人たちは◯◯◯◯◯ってグループだよ。」とか教えてくれました(笑)。でも、今ではニオイでわかるようになりました(笑)。なんか雰囲気というか空気感というか…。あと、楽しそうにサインを見てワイワイいってるから、なんとなくわかりますね。
——県外でも「新潟濃厚味噌ラーメン」と「東横」の名は知られてるんでしょうね。
安部さん:全国ネットテレビの人気情報バラエティー番組で取り上げてもらった時は、影響がすごかったですね。週末になると1日で270人くらいお客さんが来たんだけど、7〜8ヶ月間くらい影響が続いてました。テレビの影響力ってすごいなと、改めて思いましたね。
——すごいですね。うれしい反面、大変そうですが(笑)。ところでお店をやってて大変なことや嬉しいことってありますか?
安部さん:大変なことっていうか…お客さんが来てくれるかどうか毎日心配していますよ(笑)。ですので、お客さんに飽きられないよう新しいメニューを考えたり、味をリニューアルしています。味噌ラーメンも昔よりしょっぱさを抑えめにしてるんです。現代の健康志向に合わせた形です。うれしいことは、お客さんから「おいしかった」の一言をかけてもらえた時。どんなに忙しくて疲れていても、疲れが吹っ飛びますね。
——味のリニューアルや新メニューの予定を教えてください。
安部さん:夏限定のメニューになりますが「つけ麺」をリニューアルしました。ナスやチーズが入ったピリ辛味で、イタリアンな味わいが楽しめる自信作です。あと、夏が終わって涼しくなった頃には「カレーラーメン」も始めてみようと思ってます。
——最後に「新潟濃厚味噌ラーメン」についての思いをお願いします。
安部さん:以前、知り合いの料理人から「新潟濃厚味噌ラーメン」について、こう言われたんです。「お客さんの味覚に合わせた料理を作るのが料理人の仕事なのに、お客さんに自分で味の調節をさせる東横の味噌ラーメンってどうなの?」って。それで私は「じゃあ、焼酎やウイスキーはどうやって飲むの?自分で好みの薄さに調節して楽しむんじゃない?」って返したんです。そんなことを言われてたのに、今では「新潟5大ラーメン」として周知され、県外からもお客さんが来てくれるようになりました。本当にありがたいことですね。プレッシャーもありますが、がんばって守っていきたいです。
あまりのインパクトの大きさに、最初は受け入れられるのに時間がかかった「新潟濃厚味噌ラーメン」も、今では「新潟5大ラーメン」のひとつとして新潟を代表する人気ラーメンとなりました。それでもまだ新しいメニューやお客さんのことを考え続ける安部さん。これからもときどきソウルラーメンを食べにお邪魔しますね。
みそラーメン 680円
野菜みそラーメン 780円
特製みそラーメン 860円
特製野菜みそラーメン 960円
醤油ラーメン 580円
つけめん 750円