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楽しみながら美味しい日本酒をつくる、柏崎「阿部酒造」の挑戦。

  • ものづくり | 2021.07.30

最近、日本酒にこだわる飲食店を取材するたびに目にするのが、「あべ」というシンプルなラベルの日本酒。これはいったいどこのどんなお酒で、どんな思いで作られているのか、ずっと気になっていました。そこで今回は柏崎市にある蔵元の「阿部酒造株式会社」にお邪魔して、6代目の阿部さんからお話を聞いてきました。

 

 

阿部酒造株式会社

阿部 裕太 Yuta Abe

1988年東京都生まれ。6代目蔵元。2010年飲食店検索サイトの運営会社に就職。2014年に「株式会社ぐLocal(グローカル)」を立ち上げ、醸造試験場で実習を受けた後、柏崎市にある実家の「阿部酒造」で酒づくりを始める。2年目以降は製造責任者として、「あべ」「スター」「圃場別(ほじょうべつ)」シリーズなどを開発する。

 

廃業寸前の酒蔵を立て直した、6代目のチャレンジ。

——阿部さんは「阿部酒造」の6代目としてずっと蔵元で働いていたんですか?

阿部さん:いえ、僕は大学を卒業してからインターネットの飲食店検索サイトを運営する会社に勤めていたんです。その頃から日本酒づくりをやってみたいと思っていたんですけど、家業の「阿部酒造」で働くことはできなかったんです。

 

——えっ、働くことができないって、どうしてですか?

阿部さん:「阿部酒造」5代目の父は、自分の代で蔵を廃業する決心をしていたんですよ。だから酒づくりもほとんどしていなくて、酒販業をメインにしていたんです。でも一度廃業しちゃうと日本酒の酒造免許はもう二度と取れないので、僕はなんとか「阿部酒造」を残したいと思っていたんです。

 

——そうだったんですね。どうやって「阿部酒造」を続けることに?

阿部さん:2014年に自分で「株式会社ぐLocal」という会社を立ち上げて、会社と会社の契約というかたちで「阿部酒造」の営業を継続することにしたんです。それで父親に僕の本気度が伝わったと思うんです。まずは親子としての甘えをなくしたかったんですよね。

 

 

——すごい熱意ですね。そこからどんなふうに立て直したんですか?

阿部さん:父に「3年間だけ自分の好きなようにやらせてほしい」と頼みました。それで結果が出なければ自分でもあきらめがつくし、サラリーマンに戻るからと言って父を説得したんです。それからは自分の思うまま、がむしゃらに酒づくりや営業に取り組みました。

 

——具体的にはどんなことに取り組んだんですか?

阿部さん:まず「阿部酒造」の主要銘柄だった「越乃男山」の作り方を壊しました。本当にゼロから自由に作り方を変えてしまったんです。あと、僕が作るブランドの日本酒は地酒専門店と契約を結ばせていただきました。

 

——かなりいろいろと改革したんですね。酒づくりはお父さんから教わったんですか?

阿部さん:僕はまったくの素人でしたから、まずは醸造試験場で基本を勉強してから蔵に戻って、父から1年間酒づくりを教わりました。その他にも「原酒造」さんをはじめとした地元・柏崎市の蔵元さんからも酒造技術を教わったり、スタッフを応援に回してもらったりして助けていただきましたね。本当にありがたいと思っています。その恩もあるので、柏崎市内では「阿部酒造」のお酒をガンガン営業しないようにしているんです。

 

——なるほど。同業の方たちといい関係ができているんですね。

阿部さん:本当にまわりに人たちに助けられてきたと思っています。長岡市の「カネセ酒店」さん、新潟市中央区の「吉川酒店」さんなどの酒屋さんたちからは、「酒づくりで失敗してもうちで売ってやるから挑戦してみろ」と応援していただいて、とても励みになりました。そのおかげもあって、7年間酒づくりを続けられています。

 

楽しみながら酒を作り、地元を盛り上げたい。

——阿部さんはどんな思いで日本酒を作っているんですか?

阿部さん:酒づくりを楽しむことだけです。売れる酒を作るということは考えず、価格設定も考えず、とにかくいい酒を作りたいと思っています。その結果として、「圧倒的に美味しい酒」を作ることを目指しています。

 

——じゃあ、そんな思いで作っているブランドを教えてください。

阿部さん:最初に始めたのは「あべ」シリーズです。飲食店に置いてもらえるように作った日本酒なので一升瓶を中心にご提供しています。

 

 

——ものすごくシンプルなラベルにインパクトを感じますよね(笑)

阿部さん:ありがとうございます(笑)。個性的で覚えやすい名前にしたかったんです。「阿部」はうちの姓ですが、日本酒の銘柄は漢字表記のものが多いので、あえてひらがなにしたんです。ひらがなだと「安倍」とか「安部」とかの「あべさん」でもOKじゃないですか。新潟には「あべ」っていう苗字の方が多いから、贈り物に使ってもらったり、同じ名前の飲食店関係者が置いてくれるんじゃないかっていう期待も込めた名前なんです(笑)

 

——名前はシンプルなのに、ずいぶんいろんな戦略が練られているんですね(笑)

阿部さん:次に生まれたのが「スター」シリーズです。こちらは個人のお客様をターゲットにして、自宅で飲むことを想定した日本酒なので750ml瓶で提供しています。日本酒のイメージを変えることを目的に、従来のレシピを壊して作っています。アルコール度数も低めなので、日本酒への入口としておすすめですね。

 

 

——「スター」シリーズはそれぞれ星の名前がついているんですね。こちらには地名のような名前がついた日本酒がありますが。

阿部さん:そちらは2年前から始めた「圃場別」シリーズです。柏崎市内の米農家さんと一緒にやっているプロジェクトで、それぞれの地域で獲れたお米を使って作った日本酒なんです。柏崎市の農産物を紹介して、酒蔵としても街を応援していきたいっていう思いで始めたものなんです。

 

——そんな取り組みも始めているんですね。

阿部さん:最初は酒づくりのために地元産の原料を使っていたんですけど、やっていくうちに、じつは地元を盛り上げるために酒づくりをしているんじゃないかって思うようになったんです。今後も美味しい日本酒をつくることで、地元の柏崎市を盛り上げるお手伝いができたら嬉しいですね。

 

ノンアルコール飲料で、幅広い層にアプローチ。

——「阿部酒造」の日本酒は東京への出荷も多いと聞きましたが。

阿部さん:そうですね。新潟県には酒蔵が多いし、うちのように若い蔵元が勝負するにはすごく時間がかかるんです。その点、東京はいろいろな地域の日本酒が集まっていますし、値段がちょっと高めでも需要があるんです。でも最近では地元の柏崎市でもクチコミで認知していただけるようになって、販売店に来てくださるお客様も増えました。

 

——それはうれしいですね。最後に今後やってみようと思っていることはありますか?

阿部さん:日本酒はもちろんなんですが、ノンアルコール飲料の製造も始めてみようと思っています。そうすることで、お子さまをはじめとした日本酒とは縁のない人たちにも、広くアプローチできると思うんですよ。小さいときからうちの製品に親しんでいただいて、その子が成人した暁にはうちの日本酒を飲んくれたら嬉しいですね。

 

 

 

阿部酒造株式会社

新潟県柏崎市安田3560

0257-22-4317

9:00-18:00

日曜休

 

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