三条と一ノ木商店街の魅力を伝える発信基地「TREE」とは?

若者のチカラを使って、地方の町の問題を解決したい。

少子高齢化、シャッター商店街、空き家問題、若者の地元離れ…地方ならではのたくさんの社会問題を、「若者のチカラを使って解決しよう」と立ち上がったひとりの男がいます。株式会社MGNETの中川さん。三条市・一ノ木商店街にある古民家を活用した中心市街地拠点施設「TREE(ツリー)」のマネージャーとしての活動を通して、商店街の魅力を発信し続けているのです。商店街への思い、今の若者の未来、そして気になる施設のコトなど、いろいろと話を聞いてきました。

 

TREE

中川裕稀 Yuki Nakagawa

1993年三条市生まれ。高校卒業後、新潟市内の音楽専門学校へと進学。暇さえあれば友人宅の車庫でミニライブを繰り返した(ギター担当)。現在は燕三条のモノづくり企業「株式会社MGNET」に属し、一ノ木戸商店街の拠点施設「TREE」のマネージャーを務める。

 

一ノ木商店街の「TREE」って、どんな場所? 気になることを聞いてみた。

――まず気になるのが、建物についてです。かなり古い建物ですよね?

中川さん:100年くらいの歴史がある建物ですね。といっても、これ、ひとつの建物じゃないんですよ。大正時代の赤レンガ造りのお風呂屋さんと、昭和初期に建てられた三条の伝統的な町屋造りのお米屋さんを改修&再利用した建物です。カッコよくいえば「古民家をリノベーションした複合施設」って感じですね(笑)。

 

――複合施設とおっしゃいましたが、「TREE」というのはひとつの店舗ではないんですか?

中川さん:「TREE」としてはひとつの店ですが、中身はカフェ、ショップ、レストランの3つのスペースからなる施設なんです。そのすべてのスペースに、この一ノ木商店街(「TREE」のある商店街)で買える品物や、三条で作っているアイテムをたくさん散りばめています。

 

――3つのスペースというのはそれぞれどんな特徴がありますか?

中川さん:まず、昔ながらの町家作りの扉を開くと、すぐにエントランスみたいになっているカフェスペースがあります。ここでは、一ノ木商店街にあるお茶の専門店「星野園」から仕入れたコーヒー、老舗菓子屋「かつぼ屋」が作ってくれるスイーツ、それとフルーツ店「カネギフルーツ」から届く最高級のフルーツを贅沢に使ったフルーツサンドといったオリジナルメニューの販売をしています。

 

 

――なるほど、商店街にあるお店の商品を取り入れているんですね。ショップスペースでは、どのようなアイテムが並んでいますか?

中川さん:三条で開催される大きな露店市「三条マルシェ」で活躍されているクリエイターの作品や、三条のアウトドアブランド「CAPTAIN STAG(キャプテンスタッグ)」のギアなどが中心となっています。ちなみにこのショップスペースのすぐ隣にある日本庭園は、三条市の若手庭師が手掛けてくれたんですよ。

 

 

――ここは“三条”がたくさん詰まっていますね。あれ?「Snow Peak(スノーピーク)」もたしか三条ですよね? 取り扱いはないんですか?

中川さん:実は、レストランスペースにあるんですよ。

 

――え?レストランスペースに?ごめんなさい、ちょっと想像ができません…。

中川さん:レストランスペースは、食事だけでなくグランピングを体験してもらえるスペースになっているんです。アメリカンインディアンが移動用住居として使っていたティピ(テントのようなもの)を設置して、「Snow Peak」のイスなどで食事を楽しんでもらえます。

 

 

――あー、そういうことなんですね。てことは食事にも三条や商店街が詰まっているんですよね?

中川さん:もちろんです。一ノ木商店街にある老舗割烹「魚兵(うおひょう)」と協力して作り上げた、こだわりのハンバーガーが食べられます。バンズも、野菜も、肉も。食材はすべて商店街の方々が目利きをしてくれたものばかり使っています。夜になるとアルコールも提供していて、キャンプ料理も楽しめるので、よりグランピングを体感してもらえると思います。

 

「買い回り」したくなる。集まりたくなる場所。若者で生まれ変わった商店街。

――中川さんは「TREE」ではマネージャーという立場ですが、どのようなキッカケでこの商店街へ?

中川さん:中学生時代からバンド活動をしていたんです。たまにライブとかやって。ある時、思ったんです。「なんで三条には若者がいないんだろう。いないのか?ただ集まる場所がないだけなんじゃないか?」って。それで若者を対象としたライブやDJイベントをはじめて、「三条マルシェ」「三条バル街」などの実行委員としての活動もはじめたんです。そしたら、ちょっと面白いやつがいるぞってなって、声をかけてもらったんです。

 

――どうしてイベントなどをしていて、声をかけられたんですか?

中川さん:「TREE」をスタートするにあたって、利用者の高齢化、郊外大型店の出現による若者の集客不足という商店街の問題がありました。そこで、この「TREE」を橋渡しにして、若者からお年寄まで、幅広い年代の方が商店街の魅力を知って集まり、「買い回り」をしてくれるような仕掛けが必要だとなったんです。つまり、若者が集まる場所を作って、商店街の魅力を発信するには若者が必要だと。それで、僕を含めた若者3人が立ち上げメンバーとして集まりました。

 

 

――そういうことなんですね。2017年に「TREE」がオープンして2年が経ちました。実際の若者の集まり具合や、商店街など周囲の反応はどうですか?

中川さん:昨年は4万人以上の人たちが一ノ木商店街に来てくれたんです。なんと、その65%以上が20代女性で。「TREE」を拠点として、商店街の商品などを知ってもらい、買い回りもしてもらえています。あとは、僕たちの活動に興味を示してくれて、写真を趣味としている若者を中心とした「まちなか撮影会」や着物で街を歩くイベントなど、多くの若者向けイベントが開催されはじめました。それが一ノ木商店街の集客につながり、商店街の方々からは嬉しい言葉をたくさんもらえました。

 

――若者が集まる場所として「TREE」が拠点となっていますが、現在の状態をどう感じていますか?

中川さん:何かをチャレンジするとなると、市街地、中心地でやろうと思いがちですが、僕たち「TREE」は地方ではじめました。若者が少ない場所だからこそ、若者の表現や発信が目立ち、さらには昔から暮らしている人たちからたくさんのフォローももらえました。商店街や地方は、「自分たちのやりたいコトに夢中になれる場所」なんだと思います。ショップスペースで販売しているクリエイター作品もそうですが、これらの活動を見てもらい何かにチャレンジしたい若者が増えてくれたら、もっともっと活気の溢れる商店街になっていくと感じています。

 

若者が集まる商店街。これから10年先の未来予想図。

全国で約14,000もあるという「商店街」。歴史ある建物を生かしたり、外国人観光客を誘致したりと、商店街はシャッターをいかに閉めずにこれから先の未来を歩んでいくか、それぞれの地域で考え、今もその歩みを進めています。商店街の中心拠点を若者に任せ、若者集客に注力し一新した一ノ木商店街もそのひとつ。「TREE」で働くスタッフは、中川さんを含めた全員が20代。現在は若者だけで運営し、若者が集まる拠点として盛り上がっていますが、でも10年先を考えたら彼らは今と同じ「若者」ではなくなってしまいます。そのことをどう考えているのか、中川さんに尋ねてみると、「自分たちは、商店街の方々をはじめとした大人に活躍できるステージを作ってもらった。決して自分たちのチカラだけではここまでできなかった。だから、自分たちがしてもらったように、次世代が活躍できるような支えられる環境を作っていきたい」と話してくれました。商店街でも、地方でもチャレンジはできる。三条、そして一ノ木商店街の魅力が体感できるだけでなく、若者に希望も見せてくれる「TREE」。クラーク博士じゃないけれども、「少年よ大志を抱け」。そんなコトバが、ふっと頭に浮かんだ帰路でした。

 

 

TREE

新潟県三条市仲之町2-15

0256-55-1162


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