毛糸で人や土地、時間をつなぐ。
東湊町通の「Tres Yarn」。
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2026.01.05
暖かい部屋でひたすら編み物をするのが、冬の楽しみだったりします。今は100円ショップでも毛糸を気軽に買うことができますが、せっかくなら使う毛糸にもこだわりたいところ。今年の秋、中央区にオープンした「Tres Yarn(トレスヤーン)」はオーナーの赤澤さんが選んできた、海外の毛糸に出会えるお店。赤澤さんのこれまでのことや、お店をはじめたきっかけ、毛糸のことなど、いろいろお話を聞いてきました。
赤澤 泰子
Yasuko Akazawa(Tres Yarn)
1968年東京都出身。外資系の金融機関に長く勤め、実家の保育園を引き継いだのをきっかけに新潟に住みはじめる。フリースペースである「赤沢ミナトテラス」を運営していく中で、毛糸を取り扱うお店の開店を決意する。昨年の10月に「Tres Yarn」をオープン。編み物をしているときのお供は、YouTube。
拠点を東京から、新潟へ。
赤澤さんのこれまで。
――赤澤さんは長く東京でお仕事をされていました。どうして、新潟に来られることに?
赤澤さん:小さい頃から東京で生活をしていましたが、実家が新潟で、保育園を運営していたんです。東京では長く金融の仕事をしていたんですけど、ちょうどコロナが流行りはじめたときにその保育園を引き継ぐことになって。しばらくは東京に拠点を置いて、毎週新潟に通うっていう生活をしていたんです。
――毎週行き来するのは、なかなかハードだったのでは。
赤澤さん:その後、ちょうどご縁があって、保育園の近くに土地を見つけたので、2拠点生活をやめて新潟に住むことにしました。新潟に移り住んでからも、金融のお仕事をリモートで続けていたんですけど、週1回の出社がやはり身体にはきつくなってきて。仕事の区切りがついたので、今年の6月ごろ退職を決めたんです。
――そして今に至るわけですね。そもそも赤澤さんが編み物をはじめたきっかけは?
赤澤さん:編み物は小学校の低学年の頃からはじめていたと思います。母が編み物をしていたので、道具は一式揃っていました。最初は母に教わっていましたが、そのうち自分のお小遣いで編み物の本や毛糸を買うようになって。はじめは上手くできないことも多かったんですけど、何回もやり直して編んでいましたね。
――それは、大人になっても変わらず?
赤澤さん:20代後半の頃、勤めていた会社の女の子に編み物を教えたんです。そしたら、他の女性社員が「私も教えてほしい」って集まってきて、会社のほとんどの女性社員に編み物を教えることになったんですよ。お昼休みの時間とか、仕事が終わった後にみんなで編み物をして。今でもすごく楽しい経験だったなって覚えています。

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編み物がつなぐ、
人、土地、時間。
――「Tres Yarn」は、どんな経緯ではじめたお店なのでしょう。
赤澤さん:元々ここは、フリースペースとして使っていて、私も「編み会」を開催していたんです。東京での経験から、「みんなで編み物がしたい」って思っている人は絶対新潟にもいると思っていたんですけど、はじめて半年は誰も来なくて(笑)。でもSNSで発信しはじめたら、少しずつ人が来てくれたんです。
――新潟にも「みんなで編み物がしたい人」がいましたね。
赤澤さん:編み会に来てくれた方とお話して、「毛糸が買えるお店が少ない」って声をよく聞くようになりました。海外の毛糸をネットで買うのもハードルが高くて、自分が欲しい糸を買うために、わざわざ東京に行くっていう人もいたみたいなんです。それで毛糸を実際に手に取って買える場所をつくろうと思ったんです。
――そうしてできたのが、「Tres Yarn」なんですね。
赤澤さん:「Tres」は「3つの」っていう意味があって、編み物が持っている、3つの不思議なつながりを大切にしたいと思ってこの名前にしました。ひとつ目は人とのつながり。編み物をしている人って年齢も経験も関係なく、編み物をしているってだけで、他人とは思えない親近感で盛り上がることができるんです。
――編み物という共通項が、人とのつながりを紡ぐ、と。
赤澤さん:それと、ここでは毛糸を生産している人もつないでいきたくて。実際に毛糸がつくられている土地に行ったり、生産者の方にお話を聞いたりして、彼らの熱い思いをお伝えしていきたいんです。コロナが流行っていたとき、海外から買った毛糸に牧草がくっついていたことがあったんです。それを見たとき、その土地とのつながりが感じられて、大好きな海外に行けない閉塞感が解放されたと感じたんです。
――なるほど。人、土地、そして3つ目のつながりも教えてください。
赤澤さん:時間のつながりですね。若い頃お金がなくて、アクリルの入った安い毛糸を買っていたんですけど、長持ちしないし、ほどいて別のものをつくろうと思っても、ほどけなくて捨てちゃうこともあったんです。でも、ここに置いてある毛糸はちょっと高いけど長く使えるものばかりです。お母さんが子どもに、子どもがそのまた子どもに、編み物を教えるときにも使い続けてほしい、という思いを込めました。

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初心者でも、使いやすい。
生産者の思いが詰まった毛糸たち。
――こちらには、赤澤さんが選んだデンマークやフランスなど、海外で作られた毛糸がたくさんあります。
赤澤さん:ここには、私が好きなメーカーさんはもちろん、編み物の経験値を問わず使ってもらえる毛糸を選んでいます。私は初心者の方にこそ、良い毛糸をおすすめしたくて。モヘアなんて結構顕著で、アクリルの入ったモヘアだと本当にほどきづらいんです。でも良い糸を使えば、何回失敗してもやり直せるし、編みやすさも変わってくると思います。
――それぞれの毛糸について、丁寧に説明が書かれていますね。
赤澤さん:やっぱり毛糸の背景を知って買うのと、知らないで買うのでは編むときのモチベーションが全然違うと思うんです。どこのどんな毛を使って、どんな思いでつくられたのかを知ると、「絶対に完成させよう」って思えるんです。
――ふむふむ。
赤澤さん:例えば私が好きな「Knitting for Olive」っていうメーカーさんは、お母さんがつくった編み図を娘さんが販売したところからはじまったんです。ネットで販売したら世界中から反響があって、編み図を改善していくうちに、自分たちで毛糸もつくるようになりました。最初はお母さんと娘さんだけでしたが、そのうち息子さんも手伝いはじめて。ご家族で頑張っているメーカーさんなんですよ。
――そこまで詳しく知ることができると、編み物をするモチベーションも変わってきます。こちらで編み物をすることもできるんですよね。
赤澤さん:もちろんです。かせ糸もここで巻くことができますし、編み図の本も販売しているので、つくりたいものを編んだり、編み図から探して編んだりできます。最近は編み物をお仕事にされている方や、編み物にハマっている若い方も来てくれています。


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新潟といえば、編み物。
そんな場所になれるように。
――お店をはじめてみて、いかがですか?
赤澤さん:今までとはまったく違う異業種なんですけど、保育園や金融のお仕事と共通していることもあって、全然違うことをやっているっていう感覚はないんです。いろんなところで働いてきた経験は、どんなお仕事にも応用できるんだって感じています。
――そう言える大人に私もなりたいです。赤澤さんがこれからやってみたいことを教えてください。
赤澤さん:なにより、良い毛糸を皆さんに届けていくことは続けていきたいです。漠然と思っているのは、もう少し広い、大きな駐車場のある場所にお店を移したいですね。他にも、海外の毛糸の工場を見学するツアーや、編み物のワークショップなど、やりたいことはたくさんあるんです。新潟にいるからってできないことはないんじゃないかと思っていて。
――新潟でも、やりたいことができると。
赤澤さん:もちろん。県外の人に「新潟にこんなところがある」って知ってもらえて、ここに足を運んでくれる。こんなにいいことはないじゃないですか。県外や海外から新潟めがけてきてくれるような、「編み物と言えば新潟だよね」って思ってもらえるようなお店にしていきたいです。

Tres Yarn
新潟市中央区東湊町通1ノ町5922-1
水 13:00-19:00
土日祝日 13:00-18:00
※営業時間は急遽変更となる可能性がありますのでInstagram等でご確認ください。
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