新潟市西区にオープンした「土と花 花筏(はないかだ)」は、古民家の古い納屋を店舗に使った花屋さんです。花や植物だけではなく、陶器やアンティーク家具も取り扱っています。お洒落で居心地のいい店内で、オーナーの水野さんご夫婦に、古民家や商品についてのこだわりを聞いてきました。
土と花 花筏
水野 洋一 Yoichi Mizuno
1974年新潟市中央区生まれ。東京都の工学院大学を卒業。電機メーカーに就職し電気回路の設計を担当。25年勤めたのち退社し、新潟に戻る。実家の生花店で修業し、2023年6月に新潟市西区で「土と花 花筏」をオープン。以前はコピーバンドでギターやボーカルを担当していたこともあり、現在はジャズを聴くのが好き。
土と花 花筏
水野 陽子 Yoko Mizuno
1977年広島県生まれ。高知県の大学で魚の研究をし、卒業後は東京都の博物館や大阪府の研究所で働く。転勤先の茨城県で洋一さんと出会い、結婚。新潟県に移住し、2023年に夫婦で「土と花 花筏」をオープン。時代小説が好きで、好きな作家は高田郁。
——わ〜、かなり年季の入った、渋くて味わい深い建物ですね。
洋一さん:ありがとうございます。こちらは長い間納屋として使われていた建物なんです。
陽子さん:私たちはふたり揃って古民家が好きなので、お店をはじめるんだったら古民家を使いたいと思っていたんです。
——結婚される前は、おふたりはそれぞれどんなことをしていたんですか?
洋一さん:僕は電機メーカーで電気回路の設計や開発に携わっていました。
陽子さん:私は大学で魚の研究をした後、博物館の学芸員助手をしたり、研究所で睡眠の研究に携わったりしていました。
——花や雑貨とは無縁なお仕事をされていたようですが、どうして「土と花 花筏」をはじめることになったんでしょうか。
洋一さん:コロナ禍になってから、自分の将来を考えるようになったんですよね。それまではふたりとも設計や研究の仕事をしていて、お客様の顔を見ることなく仕事をしていたんですけど、お客様の喜ぶ顔が見られるような仕事をしたいと思うようになったんです。
——花屋さんになったのは?
洋一さん:僕の実家が新潟駅前で花屋さんをやっているんです。電機メーカーで働く前は花屋さんを継ごうか考えたこともあったので、自分でお店をはじめるんだったら花屋さんかなと思ったんですよね。帰ってきてから1年くらい、実家で花屋さんの修業をしながら店舗に使う古民家を探していました。
——それで見つけたのが、こちらの納屋なんですね。
洋一さん:下越から上越まで、県内はもちろん県外まで探したんですけど、なかなか条件に合うような物件は見つからなかったんです。
——ちょっと待ってください。この裏にある母屋で暮らしているんですよね。この納屋のことは考えなかったんですか?
陽子さん:もちろん最初から「素敵だな」と思って目をつけてはいたんです。でも物がいっぱい片付けられていて納屋として使われていたので、貸していただけるとは思っていなかったんですよ(笑)
洋一さん:いよいよ物件が見つからなかったのでダメ元で大家さんに相談してみたら、あっさり使わせてもらえることになったんです。こんなことなら、最初から相談すればよかったと思いました(笑)
——お店として使うにあたって、リノベーションはされたんですか?
洋一さん:なかにあった道具を移動して、掃除をしたくらいです。天井が高いので掃除は大変でしたけどね(笑)
陽子さん:できるだけ古い建物の味わいをそのまま残したかったので、リノベーションはしていないんです。入り口の引き戸に柿渋を塗ったくらいですね(笑)
——納屋のなかということもあるのか、一般的なお花屋さんとは雰囲気が違いますね。並べれらたお花も渋めのものが多いような……。
陽子さん:できるだけ個性的でユニークなものを選ぶようにしています。お客様に「こんなお花や植物があるのね」って驚いたり感動したりしていただけたら嬉しいです。
洋一さん:贈りもの用というよりも、生活のなかで普段使いできるようなものが多いですね。もちろん、ご予約をいただければギフト用のお花も作ります。
——古い建物にマッチしたものばかりに感じます。陶器も違和感なく馴染んでいますよね(笑)
陽子さん:ありがとうございます(笑)。私はもともと茨城の笠間焼(かさまやき)が好きだったので、どうしてもお店で扱いたいと思っていたんです。そこで「陶炎祭(とうえんさい)」という笠間焼の陶器市に乗り込んで、出店していた好きな作家さんに直接交渉をして作品を買い付けました。
——すごい行動力ですね。ちなみに、どんな作家さんの作品を扱っているんでしょうか。
陽子さん:出口結莉さん、横田篤徳さんと小坂裕美さんのユニット「CRAFT BORO×BORO(クラフトボロボロ)」、佐藤健太さんと佐藤和美さんのユニット「佐藤陶房」、安藤子由利さん、藤田稔さんと理子さんの「藤田陶房」、長岡で活動されている益子焼(ましこやき)の岡﨑宗男さんの作品です。
——今挙げていただいた作家さんの作品を探している人は、こちらに来れば巡り会えるわけですね。お花や植物だけじゃなくって陶器も扱っているのはどうしてなんですか?
洋一さん:心豊かな生活を送るためのアイテムとして、お花や陶器、それからアンティーク家具をご提案しています。
陽子さん:生産者や作家の思いをお客様に伝えることで、よりお花や陶器に対しての愛着が湧くと思うし、お客様の感想を生産者や作家にフィードバックすることで、これからの励みになると思うんです。そうしたパイプのような役割も務めていけたらいいなと思っています。
——なるほど。あの、さっきアンティーク家具とおっしゃいましたけど、商品はどこにあるんでしょうか?
洋一さん:今座っていただいている椅子やテーブル、花を生けている壺や、それを置いている棚が商品です(笑)
——えっ、インテリアかと思ったら商品なんですね。
洋一さん:目立たないような小さい値札が貼ってあるんですよ(笑)。気になる家具があったら、気軽に質問していただけたらと思います。
陽子さん:生活のなかのコーディネート例をご提案する、ギャラリーみたいな空間にしたいと思っているんです。それと同時に居心地のいい、ゆったり過ごせる空間にしたいんですよね。
——モデルルームみたいな感じですね。
洋一さん:気に入っていただけたら、部屋の一角にある植物や家具ごとまとめてお買い上げいただくことも可能です(笑)
——確かに店内のディスプレイを見ていると、植物や陶器、家具のコーディネートがお洒落で刺激を受けますね。
洋一さん:ありがとうございます。今後はもっとお客様にゆっくり過ごしていただけるよう、お茶やコーヒーの提供もしていきたいと思っているんです。その他にも、フラワーリースや苔玉、テラリウム作り、金継ぎ(きんつぎ)のワークショップを開催していきたいと考えています。
——これからいろいろと発展していきそうですね。ところで「金継ぎ」って何ですか?
洋一さん:欠けたり割れたりした器を、漆で修復する伝統工芸なんです。仕上げに金を使うことから「金継ぎ」と呼ばれています。お気に入りの器を少しでも長く使っていただけるよう、覚えていただけたら嬉しいですね。
土と花 花筏
新潟市西区鳥原1593-1
090-4383-1745
10:30-17:00(土日曜13:00-17:00)
水木曜休