鵜ノ子ICから亀田駅へと向かう大通りをちょっと曲がると現れる酒屋さん「わたご酒店」。昔ながらの雰囲気の店内には、店主・寺田さんがセレクトした県内外の日本酒がずらりと並んでいます。「どんな日本酒が好きですか?」と、気さくにお酒の好みを探ってくれる寺田さんの接客はとても心地良く、酒好きにとっては頼りになる存在です。今回は寺田さんに聞いた日本酒の楽しみ方、オススメの日本酒などをご紹介します。
わたご酒店
寺田 和広 Kazuhiro Terada
1989年新潟市生まれ。明治大学卒業後、酒類卸を経て東京の地酒専門店に就職。現在は祖父母から引き継いだ「わたご酒店」の店主。とにかく日本酒が好きで、自宅には大量のストックがあるとかないとか。
――今日はよろしくお願いします。「わたご酒店」ってどんな酒屋さんですか? コンセプトなどを教えてください。
寺田さん:「わたご酒店」は生活の一部としてふらっと来れる場所としての「町の酒屋」、そして専門的な知識を兼ね備えたちょっと敷居の高さを感じる「地酒専門店」の両面を兼ね備えた「町の酒屋と地酒専門店」をコンセプトにした酒屋です。だからお酒以外にも、タバコや自家製の梅干しとか日用の品もちょっとだけ揃えています。
――どんなお酒が揃っていますか?
寺田さん:メインは日本酒ですね。県内10蔵、県外8蔵の合計18蔵の日本酒を取り揃えています。一般的な酒屋さんと比べると取り扱い数はちょっと少ないけど、ひとつひとつの酒蔵の方としっかりと向き合いたいからあえてそうしています。
――県外の日本酒も揃っているんですね。取り扱い数を少なくすることでどんなメリットがありますか?
寺田さん:たまにデッドストックの希少な日本酒を卸してくれます(笑)。あとはコミュニケーションがしっかりと取れるから、マーケットと作り手の中間に立てることでそれぞれの特徴や要望を取り入れたコラボ日本酒も作ることができました。
――希少な日本酒は嬉しいですね(笑)。ちなみに日本酒の選び方ってあるんですか?
寺田さん:ん~、好きな日本酒を飲んでもらうのが一番だと思います。だけど、まだ好みが分からない人や普段と違った日本酒にチャレンジしてみたい人はどんどん質問して欲しいですね。
――「甘口が好み、フルーティーが好き。そんな日本酒ありますか?」って、こんな質問でもいいんですか?
寺田さん:もちろんです。ヒアリングしながら好みは探れるし、ライフスタイルの話やファッションやその人の雰囲気からも提案することはできますから。
――え? ファッションや雰囲気で好みが分かるんですか?
寺田さん:なんとなく分かりますね。例えばファッションに興味の強い人は、感度が高いからナチュラル系の日本酒が好きな傾向があるんです。そんなふうに話したり、観察したりして、接点や共通点から提案していくこともあります。
――日本酒って温めたり、冷やしたり、いろいろな飲み方がありますよね。日本酒は種類によって飲み方は決まっているんですか?
寺田さん:好みなので絶対ではないけど、燗酒用の日本酒、冷酒にした方がおいしく飲める日本酒はそれぞれあります。
――寺田さんはどんな飲み方が好きですか?
寺田さん:最近は燗酒にハマっています。身体に染みわたる感じがするし、熱を加えることで原材料である米のうま味が最大限に引き立てられておいしいんです。熱燗の文化は広めていきたいですね。
――熱燗ですか。ふわっとアルコールを感じて、すぐに酔っぱらってしまう印象…。
寺田さん:実は熱燗って酔いにくいお酒なんですよ。アルコールは体温より温度が高くならないと体内吸収されないんです。つまりアルコール分解がはじまりません。だから燗酒は飲んだらすぐにアルコール分解がはじまって、後からガツンと酔いが回ることもないし二日酔いにもなりにくいんです。
――へ〜なるほど。でも自宅で熱燗を飲むにはどうしたらいいんですか? 湯煎は大変だし…。
寺田さん:確かに鍋にお湯を張って湯煎するのがベターだけど、電子レンジでもOKです。
――レンジで?
寺田さん:徳利を電子レンジにかけるとすぼんだ首の部分だけが熱くなって、全体が温まらないからあまり良くないと言われているけど、そば猪口や湯飲みを使えばちょうどいいんですよ。好みの温度を探りながら日常で熱燗が楽しめます。
――それならチャレンジできそうです。
寺田さん:東京では自然派ワインが流行っているように熱燗もブームになりつつあります。ゆっくり飲めるお酒として、これから熱燗に注目してみてください。
――せっかくなので最後に、オススメのお酒をご紹介してもらえますか?
寺田さん:わかりました。それでは3種類ご紹介します。まずは「齋彌酒造店 雪の茅舎 純米吟醸 生(¥1,500)」。日本酒ビギナーから上級者までが納得して楽しんでもらえる日本酒です。華やかな吟醸香と口に含んだ瞬間のふくよかな味わい。そしてキレイな余韻が味わえる、「わたご酒店」の入り口的な1本です。
寺田さん:次は「仁井田本家 にいだしぜんしゅ しぼり(¥1,600)」です。このお酒は日本酒の概念を再考するキッカケをくれた1本。日本酒度-20、酸度3.0と、普通の日本酒では考えられない数値なのに、味わいと酸味が見事にまとまっています。天然炭酸が含まれた微発泡の日本酒です。
寺田さん:そして最後は「西飯田酒造 積善 シードル ドライ」。伝統製法だけでなく、閃きとセンスで表現する若きクラフトマンが生んだお酒です。長野市の「王井りんご園」が丹精込めて育てたリンゴをたっぷり使い、花酵母で醸して発泡酒に仕上げてあります。
――どれも気になるお酒ばかりですね。ご紹介いただいた日本酒は、やっぱり熱燗がオススメですか?
寺田さん:いえ、どれも日本酒の入り口に適したお酒だから熱燗向けではないんです。こういった珍しいお酒から興味を持ってもらえて、熱燗の魅力を発見してもらえたら嬉しいです。熱燗に興味のある方は、ぜひお店にいらしてください(笑)
わたご酒店
新潟県新潟市江南区亀田四ツ興野2-3-3
025-382-5777