長岡駅から歩いて5分のところにある「Yoriito(ヨリイト)」。4階建ての空き家をリノベーションしたこの場所は、喫茶店としてコーヒーやごはんを楽しめるだけではなく、併設されているコインランドリーで洗濯をすることもできます。さらに、勉強やワークショップ、BBQなどに使えるレンタルスペースも。このお店をつくった吉田さんに、お店がはじめたきっかけや思いなど、いろいろお話を聞いてきました。
Yoriito
吉田 寛生 Hiroki Yoshida
1996年見附市出身。幼少期から東京で生活し、大学を卒業後、柏崎市で小学校の教員として働く。その後、家業である「山田修整有限会社」に入社し、新規事業のとして「Yoriito」をはじめる。趣味はサウナやコーヒー、読書などで、「Yoriito」の店内には吉田さんの本が置いてある。
――「Yoriito」は「山田修整有限会社」が運営しているお店です。こちらは、どんな会社なのでしょう。
吉田さん:キズがついてしまった洋服の修整をしています。僕たちが直すのは、商品として販売される予定だったものが、何らかの原因でキズがついて、販売できなくなってしまったものです。市場に出回らずに廃棄されてしまう洋服が、実はたくさんあるんですよ。
――そういったお仕事があること、はじめて知りました。吉田さんは、どんな経緯でこの会社に?
吉田さん:この会社は家業なんです。大学を卒業してから、柏崎市で小学校の先生をしていました。学校教育に携わる仕事はとても楽しかったんですけど、子どもたちの主体性を育むことの難しさを感じていて。「子どもたちに主体性の大切さを教えるなら、まず自分がやりたいことをしないと」と思って、転職しました。
――まずは吉田さんが行動をしたんですね。
吉田さん:「山田修整有限会社」に入ったとき、ちょうど新規事業を立ち上げようとしていて、僕はそこに携わることになりました。その新規事業としてはじまったのがコインランドリーと喫茶店を合わせた「Yoriito」 だったんです。
――「Yoriito」ができた経緯を教えてください。
吉田さん:うちの会社は市場に出る前にはじかれてしまった洋服を手直しして、市場に出せるA品に格上げするのが仕事です。この仕事を僕たちは「洋服の居場所をつくる仕事」と呼んでいて。新しい事業は洋服だけではなく、人の居場所もつくれるようなことがしたかったんです。
――ふむふむ。
吉田さん:「山田修整有限会社」を、はじかれる予定だった洋服を「再生」する会社と考えて、人の居場所をつくるここも、使われなくなった僕の叔父の家を再利用しました。この場所をどうするかを考えたとき、東京の街づくりの会社と知り合ったんです。そこがやっていた、「喫茶ランドリー」というお店を参考に「Yoriito」をつくりました。
――喫茶店とコインランドリーの組み合せ、面白いですね。
吉田さん:喫茶店をやりたいんじゃなくて、人の生活に根付く場所をつくりたかったんです。生活って「衣食住」からできているじゃないですか。カフェでくつろいだり、ランドリーで洗濯をしたり、いろんな人が集まって自由にくつろげる「第二の家」のような、ちょっと頼れる場所を目指しています。
――「Yoriito」という名前の由来は?
吉田さん:「Yoriito」という名前は、「撚り糸」という言葉からきています。糸をねじって合わせることで、強度が増したり、糸に風合いが生まれたりするんです。人と人、暮らしと街をつなぐ場所になりたい、という思いを込めました。
――こちらの場所ができるまでをお聞きしてきました。次はどんな過ごし方ができるのか教えてください。
吉田さん:ここは屋上を含めて4つのフロアがあります。1階には喫茶店と、僕らが「家事室」と呼んでいるコインランドリーがあります。コインランドリーには洗濯乾燥機と乾燥機が2台ずつ、おしゃれ着用の洗濯・乾燥機を1台ご用意しています。「家事室」にはミシンとアイロンも置いてありますし、コインランドリーだけ利用される方も大歓迎です。
――喫茶店では、コーヒーはもちろん、ごはんやスイーツも楽しめるんですね。
吉田さん:そうなんです。うちで使っているお米は、「山田修整有限会社」の本社がある、栃尾の棚田で育てられたお米を使っています。ごはんは身体に優しいものを提供するようにしていて、中でも僕のオススメは「麹チキンカレー」ですね。自家製の麹を使っていて、麹の甘みとコク、深みが感じられるカレーになっています。
――洗濯の待ち時間に楽しんでみたいです。他のフロアは、どんな使い方が?
吉田さん:2階は「よりいとルーム」 と小さな畳のお部屋があります。「よりいとルーム」にあるテーブルは古板を1枚1枚つなぎ合わせてつくったので、人数や用途にあわせて、テーブルのかたちを変えることができるんですよ。ここでは飲食もできますし、会議やワークショップ、勉強のためのスペースとしても使ってもらえます。
――2階と3階には、子ども連れの方も使えるお部屋があるんですね。
吉田さん:それぞれの階に1部屋ずつ、畳の部屋があります。ここでは、お子さま連れのママさんが集まって使ってくれたり、ふらっと来て寝転んだり、勉強したり。いろんな使い方をしてもらっています。3階にはもうひとつ、「Yoriitoリビング」というピアノがあるお部屋があります。ここは時間単位で貸し切りができるので、演奏会やお誕生日会の場所としてオススメですよ。屋上もレンタルできて、今日もこのあとBBQをするのに使ってくれるんですよ。
――駅チカでBBQ、いいですね。イベントも定期的に開催されていると聞きました。
吉田さん:過去には読書会を開いたり、ボードゲームをみんなでしたり、アプリを使ってチラシや動画をつくるワークショップを開いたりしました。僕のやってみたいことをイベントとして企画することが多いですね。イベントをはじめて、人を集めるのに苦労することもあるのですが、お店のコンセプトである「くつろぐ つながる やってみる」の気持ちで、自分のやりたいことにチャレンジしています。
――「Yoriito」がはじまってから2年目の夏ですね。ここまで振り返ってみて、いかがですか?
吉田さん:まずは1年間、僕たちで運営することを頑張っていました。2年目になって、それはひと通りできたので、今度は長岡に活気が生まれるような手助けをしていきたいですね。この辺は飲食店が多いので、夜は賑わいますが、お昼は割と静かなので。
――吉田さんの今後の目標を教えてください。
吉田さん:お店の目標と、自分自身の目標がありますね。お店としては、どんな人でも働ける場所をつくることです。教員時代、特別支援学級の担任をしていたことがあって、「この子達は学校を卒業したらどこで働くんだろう」って考えたことがあって。障がいの有無にかかわらず働ける場所を自分でつくっていこうと思っています。
――ご自身の目標は?
吉田さん:教え子たちに、「かっこいい」と思ってもらえる大人であり続けることです。そのために、自分がやりたいと思ったことに挑戦し続けていきたいですね。今は、子どもたちの教育に携わりたいと思っていて、学校のなかではできない、職業体験をさせてあげたいんです。体験の場所はこの喫茶店でもいいですし、あるいはここで知り合った農家さんや美容師さんにお願いして、体験できる機会をつくっていきたいですね。
――使い方次第で、いろんなことができる場所になりそうです。
吉田さん:暮らしの中で困ったことがある人や、ちょっとやってみたいことがある人の拠り所になれたら嬉しいです。「Yoriito」と一緒に、「山田修整有限会社」や繊維業に興味をもってもらうきっかけも、つくっていけたらと思っています。
Yoriito
長岡市東坂之上町1-1-7
10:00〜18:00
不定休