村上市に今年オープンした宅配弁当専門店「ゆのかべんとう」。どんなお弁当を届けてくれるのか、担当者の大倉さんからお話を聞くため村上市へ向かいました。しかし教えられた住所に従ってたどり着いた先にあったのは、瀬波温泉にある旅館「木もれ日の宿 ゆのか」だったのです……。
株式会社 TwoSeed
大倉 華奈 Kana Okura
1994年村上市生まれ。陸上推薦で大学に入学し、2015年より放課後等デイサービスで働く。2025年に村上で設立された「株式会社TwoSeed(トゥーシード)」に入社し、「木もれ日の宿 ゆのか」「ゆのかべんとう」のサービス管理責任者を務めている。
——ここって温泉旅館ですよね。どうして、そのなかにお弁当屋さんがあるんでしょう?
大倉さん:「木もれ日の宿 ゆのか」の前オーナーには後継者がいなかったので、県外で就労支援サポート事業をやっていた方が縁あって引き継ぐことになったんです。新オーナーは旅館業をそのまま続けながら、「株式会社TwoSeed」という就労継続支援A型事業所を立ち上げて、事業の一環として宅配弁当専門店「ゆのかべんとう」もはじめました。
——なるほど。「ゆのかべんとう」は、どんなお弁当屋さんなんですか?
大倉さん:村上市内の企業や自治体、病院、学校などを対象とした宅配弁当なんです。1個からでも無料配達しています。
——一般住宅への配達はしていないんですね。
大倉さん:個人情報を保護するために表札を出していなかったり住所を公表していなかったりするご家庭が多いので、申し訳ないのですが一般住宅への配達には対応していないんですよ。
——「ゆのかべんとう」では、どんなお弁当が注文できるんでしょうか?
大倉さん:管理栄養士が監修している、ヘルシーな日替わり弁当です。40種類以上の食材を使っているのに、とてもリーズナブルなんですよ。「贅沢弁当」「デラックス弁当」「ヘルシー弁当」の3種類からお好きなものをお選びいただけますが、「贅沢弁当」のみ前日までのご注文とさせていただいています。
——他のお弁当は当日の朝9時までに注文すればいいんですね。日替わり弁当だから毎日食べても飽きないですよね。
大倉さん:月に数回「スペシャル弁当」や「プレミアム弁当」もあって、黒毛和牛やトリュフといった高級食材を使ったお弁当もお楽しみいただけるんですよ。
——大倉さんはどうして福祉の仕事に就いたんですか?
大倉さん:保育園で仲良くしていた子が障がいを抱えていて、小学校に入ってからも声掛けをしたり一緒に教室移動をしたりして、その子の学校生活をお手伝いをしていたんです。その頃から将来は福祉関係の仕事をしたいと思っていました。
——じゃあ、大人になってからは最初から福祉関係の仕事をしていたんでしょうか?
大倉さん:放課後等デイサービスで働いていました。放課後の他、夏休みや冬休みといった長期休暇中に、障がいのある子ども達をお預かりするサービスなんです。
——働いてみていかがでした?
大倉さん:子ども達と同じ目線で一緒に遊びながら支援していたので、楽しいと思うことはあっても、難しく感じることはありませんでしたね。子ども達が日常のなかでできなかったことを、できるようになっていく成長が見られるのは嬉しかったです。
——接し方が難しい子もいたんじゃないですか?
大倉さん:暴れる子もいましたが、原因はきっとあるんですよ。その原因を見つけて、その子のことを理解するように努めていました。そうすることで暴れることはなくなるんです。
——「株式会社TwoSeed」で働きはじめたのは、どうしてだったんでしょうか?
大倉さん:放課後等デイサービスで子ども達の支援を10年間続けてきたなかで、大人も含めた、幅広い障がい者支援にステップアップしたいという気持ちが生まれたんです。そんなタイミングで、故郷の村上に就労継続支援A型事業所「株式会社TwoSeed」ができることを知り入社しました。
——「就労継続支援A型事業所」というのは具体的にはどういうことですか?
大倉さん:一般企業での雇用は難しいけど、雇用契約に基づく就労が可能な方を対象にしていて、最低賃金以上の給与が支払われます。これに対してB型事業所の場合は、雇用契約に基づいた就労も難しい方を対象としているため、作業に応じた工賃が支払われるかたちになっているんです。
——では「就労継続支援A型事業所」の方が収入は多いんですね。
大倉さん:そうです。でも新発田市より北のエリアにはB型事業所しかなかったので、A型事業所で働ける方であってもB型事業所を利用するしかなかったんです。だから村上にA型事業所ができたことで、喜んでくださる方は多いですね。
——障がいを抱えた方と一緒に働く上で、気をつけていることはありますか?
大倉さん:今までの子ども達とは遊びながらコミュニケーションを図っていましたが、一緒に働く仲間ですから同じようにはいきませんよね(笑)。私は責任者という立場ですけど、けっして上から指示を出すようなことはしないで、みんなと同じ目線に立ちながら一緒に作業をしています。その上で休まず毎日出勤していることや丁寧な仕事をしていること、そういった相手の良い面を褒めるようにしているんです。
——褒めることで良い面を伸ばすんですね。
大倉さん:必要とされることで、自信を持っていただけたらと思っています。過去にパワハラを受けたことがきっかけで一般企業で働けなくなってしまった方もいるので、「自分のペースで働いていいよ」と伝えているんです。
——でも、指導や注意をする場面もあるわけですよね
大倉さん:ちょっとした言葉で落ち込んでしまう方もらっしゃいますので、声のトーンに気をつけながら、言われてモヤモヤするような言い方をしないようにしています。皆さんに気持ちよく働いていただきたいですからね。
——それはどこの職場でも、大切なことかもしれませんね。今後、取り組んでみようと思っていることはあるんですか?
大倉さん:瀬波温泉の立地を生かした取り組みを考えています。人手不足の温泉街で就労をしたり、温泉熱を生かしたハウス農業にチャレンジしたりしてみたいです。あと手先の器用な方も多いので、アクセサリーやグッズをつくってハンドメイドイベントに出店してみたいですね。
ゆのかべんとう
村上市瀬波温泉2-4-17 木もれ日の宿ゆのか内
0254-75-5777
11:00-15:00
不定休