新しい表現が発見できる場所「古本詩人 ゆよん堂」。

サブカル、音楽、詩集、アート画集。なんでも揃う、古本屋を見つけた。

あの音楽アーティストの伝記、ちょっとエモーショナルな気分に浸れる小説、なんだか元気をくれる詩集。好きな本ばかりを読むのもいいけれど、たまにはお店の本棚で出会いを探すのも楽しいひととき。まだ知らない一冊との出会いを求めて、オープンして間もない古本屋「古本詩人 ゆよん堂」へ、店主である山田さんに会いに行ってきました。

 

古本詩人 ゆよん堂

山田正史 Masashi Yamada

1980年新潟生まれ。新潟大学工学部建築学科卒業。30歳までを都内で過ごし、2019年「古本詩人 ゆよん堂」をオープン。時間さえあれば読書と映画鑑賞に明け暮れ、ギターも弾いてみたり。

 

ボンクラ高校生から教えてもらった、本の世界。

――本日はよろしくお願いします。読書を好きになったキッカケから教えてもらえますか?

山田さん:10代の頃は、正直、そんなに本を読んでいたわけではありませんでした。音楽ばかりを聴いていて、何かを読むといえば歌詞カードや、せいぜい音楽雑誌ぐらいでしたね。「ROCKIN’ON JAPAN(ロッキンオンジャパン)」とか。

 

――幼少期の頃から読書好きだと思っていました。「ROCKIN’ON JAPAN」を読んでいたとなると、バンド寄りの生活だったんですね。

山田さん:大学生の頃はバンドを組んで、音楽活動をしていましたね。同じバンドのベースが、とにかく読書が好きなヤツで、曲を書くときにインスピレーションの源として、オススメの本を貸してくれていたんです。その中の1冊が、読書の楽しみを教えてくれたんです。

 

 

――人生を変えた1冊、なんて本ですか?

山田さん:何をやってもダメなボンクラ高校生の日常を綴った、大槻ケンヂの「グミ・チョコレート・パイン」です。大槻ケンヂといえば、UFOとかUMAを紹介するオカルト番組のコメンテイターのイメージしかなかったので、驚きましたね。こんなに面白い本があるんだって、読書をはじめたキッカケとなったのは確かです。

 

――確かに変な番組には必ず出演しているイメージです。あとは「筋肉少女帯」としてのバンド活動ですね。

山田さん:ちなみに彼の本名は「大槻健二」。「グミ・チョコレート・パイン」の主人公は「大橋賢三」なんですよ(笑)。本の内容はネタバレになってしまうので話しませんが、書き出しがとにかくしょうもないので、注目して読んでみてください。

 

すべての原点は大槻ケンヂにあった。詩集から見つけたグミチョコ。

――サブカル系の本は、大槻ケンヂからスタートしたんですね。「ゆよん堂」には、いろいろなジャンルの本がありますね。ほかのジャンルには、どういった経緯で興味が?

山田さん:「グミ・チョコレート・パイン」って、とにかくダメな17歳の物語なんです。17歳と書いて、バカと読むくらいに。ただ、飛躍することができなくて悶絶している様子に共感を覚えて。ほかの本も読んでみようと、大槻ケンヂの小説やエッセイを読み漁りはじめました。彼のエッセイには「こんな本を読んだ、こんな映画を観た」と、いろいろなことが書いてありブックガイドとして、たくさんの本を教えてくれました。

 

――大槻ケンヂからさまざまな道が繋がったんですね。例えばどんな本(作家)を知りましたか?

山田さん:中島らも、筒井康隆、みうらじゅんなど。サブカルを入り口に文学などに広がりましたね。あと、詩集にも。バイブルとして読み続けている中原中也の詩集を知るキッカケにもなりました。

 

 

――サブカルから詩集に繋がるって、予想の斜め上を行きましたね。

山田さん:23歳のときに発見したんですよ。「グミ・チョコレート・パイン」の文中に中原中也の詩があるって。ダメな男子高校生の青春物語に、こんな文学的なワードがあったなんてと、さらに本の世界にのめり込むキッカケになりましたね。

 

――チラッと「グミ・チョコレート・パイン」を読みました。あの世界観に登場すると、脳裏に刷り込まれるかもしれないですね。

山田さん:そうなんですよね。当時は大学院に通っていて、1日1冊のペースでたくさんの本を読んでいました。中島らものマネをして、ウイスキーを片手に(笑)

 

とある本屋との出会い。こんな場所を作れたらいいな。

――大学院卒業後は、本に携わる仕事をされたんですか?

山田さん:本に関わる仕事で頭に浮かんだのは本屋でした。でも当時から話すことが苦手で。そもそも接客に向いていないと思い、本に携わる仕事をしようと思いませんでしたね。大学時代からずっとバンド活動をしていたので、何となく東京でバンドを組みたいと考えて上京したんです。今考えると、甘やかな夢ですよね。

 

――では、就職をしないでバンド活動を?

山田さん:音楽スタジオや防音環境を作る会社、競馬の映像編集の仕事などをしながら、バンド活動をしてみたり、ちょっと休んでみたり。紆余曲折あり、30歳でUターンしました。

 

 

――戻ってきてからは?

山田さん:JR内野駅近くにあった本屋「ツルハシブックス」をインターネットで知り、ちょくちょく通っていたら手伝うことになりました。この本屋はNPOが運営して、ボランティアスタッフで成り立っています。なので、大学生スタッフと一緒に、ボランティア店長として君臨しました。2~3年ほど関わらせてもらい、いろいろな諸事情で閉店。この経験から、自分で何かできないかと考えはじめました。

 

――「ツルハシブックス」、知っています。地下(?)にも本が並んでいる、ちょっと不思議な本屋ですよね。閉店してからはどうされたんですか?

山田さん:何かをしようと思ったとはいえ、本に関わることは本屋しか考えられなかったので、まずは行動しました。いや、行動しないといけないと思いましたね。自宅の離れに本棚を作って、本を選んでもらえる空間を作り、知り合いだけに案内をして。これならできると思っていたときに、この物件の話があり、ついに「ゆよん堂」はスタートしました。

 

文字から経験を知る。本との対話でインスピレーション。

――「ゆよん堂」には、どのような本がラインナップされていますか?

山田さん:本の世界へのキッケカとなった大槻ケンヂをはじめとしたサブカルはもちろん、バンド活動をしていたので音楽アーティストの自伝、大正から昭和初期の詩集など、年代もジャンルもさまざまな本がランダムに陳列しています。来年は2020年なので、漫画「AKIRA」も最上段に並べました(笑)。この本はマストだなって。

 

――ラインナップの幅が広いですね。本をセレクトする時に意識していることがあれば教えてください。

山田さん:「クリエイティブなアイディアを刺激する場所」になれたらと思っているので、その本が書かれた時代や著者の人生経験としっかり対話ができて、経験を知れる本を多く揃えるようにしています。お気に入りの1冊に出会ってもらいたいのはもちろん、インスピレーションを得られるような本も見つけてもらいたいです。そのために、店内でゆっくり過ごせるよう、あちこちにイスを置いています。“ゆよん”とサーカスのブランコが行き来するような、ゆったりとした店内で時間の流れも楽しんでください。

 

山田さんに聞いた。ほっこりとワクワクする本。

「ゆよん堂」では、「こんな気分になれる本ないかな」「あんなシチュエーションの本が読みたい」などの要望に沿って、本のセレクトをしてくれます。取材日は雨の日。ちょっと気分が晴れたらいいなとの思いを込めて“ほっこりとワクワクする”本を山田さんにおすすめしてもらいました。本のレビューはあえて書きません。どんな本なのか気になった方は、山田さんに聞いてみて(笑)

 

ムーミン谷の彗星|トーベ・ヤンソン

 

蛙のゴム靴|宮沢賢治

 

金子みすゞ童話集|金子みすゞ

 

 

 

古本詩人 ゆよん堂

080-5456-3019


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