秋分の日を過ぎると、少しずつ夜の時間が長くなっていきます。そんな秋の夜長を楽しむために、天体観測にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。ただ星空を眺めるだけでもいいけれど、天文台で本格的に星を観察するのもおすすめです。今回は「胎内自然天文館」の宮原さんに、天文館の特徴や天体の魅力についてお話を聞いてきました。
胎内自然天文館
宮原 昭夫 Akio Miyahara
1959年新潟市北区生まれ。東京の専門学校を卒業し新潟の結婚式場に就職。その後「新潟郵便貯金会館」でプラネタリウムの担当になり、フリーランスを経て2013年より「胎内自然天文館」の仕事をはじめる。休日は洗濯や草刈りなどの家事をして過ごすことが多い。
——うわ〜、ずいぶん立派な天体望遠鏡ですね。
宮原さん:口径60センチの反射望遠鏡です。口径が60センチ以上の望遠鏡は新潟県内だと当館の他に「新潟市自然科学館」「上越清里 星のふるさと館」の2カ所しかないんですよ。
——この望遠鏡で星を見せてもらうことはできるんですか?
宮原さん:会館期間中の毎週土曜と連休の夜に、誰でも参加できる「星空観望会」を開催しています。ただ、天候によっては星を見ることができませんので、その場合は17時以降にFacebookやスタッフブログで実施か中止かのお知らせをしています。晴れていたのに急に雨が降ってきて慌ててドームの屋根を閉めたり、雨が降っていて中止のお知らせをしたのに夜になったら晴れちゃったりすることもあるんですけどね(笑)
——自然相手だと思う通りにいかないことが多いですよね。宮原さんはこちらでガイドの仕事をされているんですか?
宮原さん:はい、「星空観望会」の他に、昼は望遠鏡で太陽の観察をしてもらうこともありますし、望遠鏡を持参して学校へ出張教室に伺うこともあります。誰にでもわかりやすく説明しなければならないので、あまり専門的な内容になり過ぎないよう気をつけています。それから太陽や月、星にいたるまで、まんべんなく魅力を伝えるように心掛けているんですよね。
——そもそも「胎内自然天文館」はどういういきさつで作られた施設なんですか?
宮原さん:1984年から続いている「胎内星まつり」というイベントのおかげで、この胎内平が天体ファンの間で「星の聖地」として有名になったんです。せっかく天体ファンが集まる場所になったんだから、ぜひここに天文台を作ってほしいということで、「胎内星まつり実行委員会」が当時の黒川村村長に呼びかけて2004年にオープンしました。
——天文館ができたいきさつには「胎内星まつり」が大きく関わっていたんですね。どんなイベントなんですか?
宮原さん:国内外の天体ファンや一般参加者が集まり、誰もが気軽に満天の星を楽しむことができるイベントです。ご協賛いただいている50社を超える望遠鏡メーカーをはじめ、飲食やグッズのブース出店もありますし、期間中はフィールドにテントを張ってキャンプをしながら楽しむこともできます。今年で40周年を迎えますが、この規模の天体イベントは世界でも珍しいと思いますよ。
——宮原さんはもともと天体に興味があったんですか?
宮原さん:まったくなかったんです(笑)。学生時代はピンクフロイドやビートルズといった洋楽を聴くのが好きで、ミキサーを目指して東京にある放送制作の専門学校に進みました。
——じゃあ、その後は東京で音響関係の仕事を?
宮原さん:私は農家の長男だったから、家を継ぐために新潟へ帰ってきたんですよ。だけど専門学校の夏休みにイベント会社で音響補助のアルバイトしていたとき、付き合いのあった結婚式場の方からスカウトしていただいていたので、新潟に帰ってきてからはその結婚式場に就職しました。
——結婚式場ではどんな仕事をされていたんですか?
宮原さん:音響から司会まで、結婚式に関わるすべての業務をやりました。当時は結婚式ラッシュの時代だったので、司会をする際には時間内にきちんと終わらせるように気をつけていましたね。
——天文とはまったく関係のない仕事をされていたんですね(笑)。どんなきっかけで天文に関わるようになったんですか?
宮原さん:23歳のときに働いていた「新潟郵便貯金会館」に、プラネタリウムがあったんです。私はフロント業務をやっていたんですけど、5年くらい経った頃にプラネタリウムを担当することになったんですよ。天文の知識がまったくなかったので最初は大変でしたね。
——プラネタリウムの仕事って、どんなことをするんですか?
宮原さん:私がやっていたのは番組制作でした。台本を作って、必要なイラストや写真を準備して、プログラムを作るんです。なかでも写真撮影は初心者だったので苦労しましたね。天体撮影用のレンズを自腹で購入して、感度の高いフィルムを自作するんです。
——フィルムを自作?
宮原さん:市販されているフィルムを加工することで、感度を上げることができるんです。でも現像所では現像できなくなってしまうので、自分で現像していたんですよ。それが天体に触れた初めての仕事でした。
——いきなり苦労をされたんですね。「胎内自然天文館」で働くことになったのは、どういう経緯があったんでしょうか。
宮原さん:プラネタリウムが廃止されることになって、「新潟郵便貯金会館」を退職してフリーランスで制作の仕事をしていたんです。2013年に胎内市が「胎内自然天文館」の業務を外部委託することになったのを機に、尊敬する写真家の紹介でこちらでお世話になることになりました。
——「胎内自然天文館」で働きはじめて苦労したことはありましたか?
宮原さん:今まではプラネタリウムに関わってきましたが、こちらでは天体望遠鏡に関わることになったので、今度は望遠鏡について勉強しなければなりませんでした(笑)
——望遠鏡を使わずに天体観測をするコツがあったら教えてください。
宮原さん:まずは教科書にもよく載っている北斗七星、カシオペア座から北極星を探してほしいんです。それを見つけられると方角もわかりますから、星や星座が見つけやすくなるんですよ。しばらく夜空を眺めていると流れ星や人工衛星も見られることがあります。これからの季節は寒くなっていくので、防寒には気をつけて風邪をひかないようにしてほしいですね。
——宮原さんおすすめの星があったら教えていただけますか。
宮原さん:私がおすすめしたいのは月なんです。望遠鏡で月の表面を観察していると、毎日表情が違うので見ていて飽きません。太陽と月の存在と、そこにいろいろな要素が加わって、奇跡的に生物が生活できているのが地球なんです。
——そう考えると不思議ですよね。
宮原さん:宇宙っていうのは遠い存在のようでいて、私たちの生活に直結しているんです。人間が生きていられるのも地球があるのも、宇宙があるからなんですよね。そういうところも意識して、天体に興味を持ってみてはいかがでしょうか。
胎内自然天文館
胎内市夏井1251-7
0254-48-0150
9:00-17:00(その他、星空観望会あり)
冬期、月曜休(祝日の場合は翌日)