新潟駅直結のビル「コープシティ花園ガレッソ」1階にある「大はし伝 十割そば 幸乃蔵」。数年前に閉店してしまった人気蕎麦店「蕎麦本陣 大はし」の味を引き継ぎスタートしたお店です。今回は「幸乃蔵」を任されている村山さんと運営母体「HAPPYCUBE株式会社」の岡本さんに、「大はし」の味を伝承することになった経緯やリニューアル後の反響などいろいろとお話を聞いてきました。
大はし伝 十割そば 幸乃蔵
村山 和宣 Kazunori Murayama
1994年新潟市生まれ。高校卒業後、新潟市内の工場、ガソリンスタンドで働く。2021年に「幸乃蔵」で働きはじめる。音楽鑑賞が趣味でロック好き。
HAPPYCUBE株式会社
岡本 拓也 Takuya Okamoto
1987年新潟市生まれ。大学卒業後、飲食業で6年間働く。20代後半で営業職に転身。「幸乃蔵」などを運営する「HAPPYCUBE株式会社」の事業統括部に所属。週末は子どもと一緒にミニバスをプレイ。
——こちらは以前もお蕎麦屋さんでしたよね。
村山さん:惜しまれつつ閉店した「蕎麦本陣 大はし」からその味を引き継いで、2020年に「大はし伝 十割そば 幸乃蔵」として再スタートしました。
岡本さん:当社の代表が「大はし」の味に惚れ込んでいまして。以前のオーナーさんが引退を考えていると聞いて、「それであれば私たちで引き継ごう」という話になったんです。
——じゃあ、お蕎麦の味や作り方は変わりないわけですね。
岡本さん:すべて「大はし」さんから受け継ぎました。「大はし」のオーナーは、自ら食材を探して気に入ったものを取り入れるようにしていて。お蕎麦や天ぷらはもちろんですが、そういったところも先代のやり方を見習っています。
——蕎麦づくりは村山さんが担当されているんですか?
村山さん:はい! ランチ前とディナータイム前に毎日製麺しています。お蕎麦って時間が経つと風味が落ちてしまうんです。だから当日作ったお蕎麦をその日に召し上がっていただくようにしています。
——福島県の蕎麦粉を使っていらっしゃるそうですね。
村山さん:「大はし」さんだった頃と同じ原料を使っています。僕は「幸乃蔵」がはじめての飲食業ですし、経験としてまだまだです。でも、以前からある『大はし』さんのスタイルをとにかく崩さないように、って思っています。
——もとからファンがいらっしゃるから、プレッシャーがあったんじゃないですか。
村山さん:「大はし」さんが営業されている頃から来てくださるお客さまの反応がいちばん気になります(笑)。「変わらずに美味しい」と言っていただくとホッとしますね。
——その言葉は嬉しいでしょうね。
村山さん:でも「大はし」さんがお店を閉じたのはコロナ禍前だったから、久しぶりにここに来て「雰囲気が変わっちゃった」って思われた方もいるみたいなんです。店内にはアクリル板の仕切りを置く必要があったし、前とまったく同じというわけにはいかなくて。そう聞いてまたその方が来られるときのためにも、お蕎麦の味、雰囲気を変えずにいようって強く思いました。
——その気持ちが伝わるといいですね。ところで村山さん、はじめての飲食の仕事はどうですか?
村山さん:前はガソリンスタンドで働いていたんですよね。同じ接客業だけど隣のスタンドでもガソリンは手に入るわけだし、ただお客さんとしゃべるのが楽しくてやっていたって感じでした。でもこの仕事は、料理を提供して喜んでもらうまでの流れの中とか「美味しかった」の言葉とかにやりがいを感じられるんです。
——若い方が「大はし」さんの味を引き継いでいるってすごいことですよね。まったく別のお店になっていてもおかしくないですもん。
村山さん:「大はし」のオーナーさんは、お蕎麦に対してものすごいエネルギーを持ってらっしゃる方です。僕が作ったお蕎麦を実際に食べてもらって意見をいただくこともあります。「大はし『伝』 十割そば 幸乃蔵」だから、「伝」の言葉の通り、「大はし」の味を守らないといけないですよね。
——お蕎麦について、もう少し詳しく教えてください。
村山さん:食感を生かしたいのと自家製のつゆがよく絡むように、気持ち細めに仕上げています。細麺だから十割蕎麦の香りを感じていただけると思います。
——おつゆはどんな感じですか?
村山さん:十割蕎麦に合うようにスッキリとした辛めのつゆです。「つゆが美味しい」と言っていただくことも多いんですよ。
——季節のお蕎麦メニューもあるんですか?
村山さん:今は旬の舞茸やキスの天ぷらを楽しんでいただこうと、「秋の味覚天ぷら」とお蕎麦をセットにしています。夏場は冷たいかけ蕎麦を用意していましたし、これからの季節は身体が温まるような蕎麦セットを考え中です。
——新潟駅直結のビルにあるから、観光や出張でいらっしゃる方も多そうですね。
岡本さん:最近は近隣のホテルも満席が続いているみたいですね。おかげさまで、新潟の食事とお酒を楽しみに来てくださる方が増えてきました。
——日本酒も充実していますね。県外から来られる方が喜びそう。
岡本さん:すべて新潟県内の蔵元の日本酒です。飲み比べセットはけっこうお得で、人気がありますよ。5種類から3つ選べて600円〜です。新潟の日本酒をいろいろと味わってもらいたくて、季節の限定酒も用意しています。
——これからも新潟の味を届けてくださいね。
村山さん:新潟駅が改装工事中で、今はこちら側への人の流れがちょっと落ち着いているんですよ。その逆風をはね返すくらい「幸乃蔵」が目的になるようなお店にしたいって思っています。それと個人的な目標は、「村山に会いたい」ってここへ来てもらうこと。「大はし」さんと比べると、まだ蕎麦づくりの入り口にも立てていないのかもしれないですけど、蕎麦ってとことん奥が深いと思うし、勉強すれば今よりもっと「大はし」さんに近づけると思っています。
岡本さん:新潟はへぎそば文化が根強いですけど、日本酒や一品料理と合わせるには十割蕎麦がぴったりだと思っています。「何食べようかな」と思ったときに「美味しい蕎麦があるから『幸乃蔵』行こうよ」って紹介してもらえるお店にしたいですね。落ち着いたお店なので、安らぎを感じていただけると思います。「今日来てよかったな。また誰かと来たいな」と思われる店づくりをこれからも目指します。
大はし伝 十割そば 幸乃蔵
新潟市中央区花園1-2-2 コープシティ花園ガレッソ1F
tel/ 025-290-6303