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手打ちでしか出せない甘みや風味を信じて。こだわりの戸隠蕎麦「越水」。

新潟で食べる「日本三大蕎麦」のひとつ戸隠蕎麦。

新潟で蕎麦っていうと十日町発祥の「へぎ蕎麦」がパッと思い浮かびますよね。でも県外には他にも美味しい蕎麦がたくさんあります。加茂市にある「越水」では、岩手県のわんこ蕎麦、島根県の出雲蕎麦と並んで「日本三大蕎麦」のひとつともいわれる長野県の戸隠蕎麦を食べることができるんです。「戸隠蕎麦」って一体どんな蕎麦なんでしょうか? 店主の田中さんにお話を聞いてきました。

 

 

越水

田中 隆之 Takayuki Tanaka

1976年加茂市生まれ。高校卒業後に長野市戸隠の蕎麦店で6年半蕎麦打ちの修業をする。その後、名古屋の蕎麦店でも修業して、2001年新潟県加茂市に「越水」をオープン。趣味はサーフ釣りや渓流釣り。

 

戸隠のおばあちゃんから教わった蕎麦打ち。

——田中さんってもともと蕎麦が好きだったんですか?

田中さん:うちの両親が揃って蕎麦好きだったんです。特に父親は趣味で蕎麦打ちをするほどだったんですよ(笑)。だから子どもの頃から蕎麦を食べる機会が多くて、自然と蕎麦が好きになっていたっていう感じです。

 

——ご両親の影響が大きかったんですね。

田中さん:蕎麦に限らずものを作ることが好きだったので、「何か作る仕事をしたい」っていうのもありました。大工でも飲食でも何でもよかったんですけど、子どもの時から馴染みのあった蕎麦を選んだって感じでしょうか。

 

——長野県まで行って戸隠蕎麦の修業をしたのはなぜですか?

田中さん:まだ高校生だったので、正直あまり深い考えはなかったんですが(笑)。進路指導の先生に相談したら修業先の蕎麦店を探してくれて、自分でも食べてみて戸隠で修業しようと決めたって感じです。どちらかっていうと、修業をしているうちに戸隠蕎麦の魅力がわかっていったんです。

 

——蕎麦打ち修業って厳しそうですね。どんな修業だったんでしょうか?

田中さん:「蕎麦職人」っていうと頑固親父みたいなイメージありますよね(笑)。でも戸隠では蕎麦打ちってお母さん達の仕事なんですよ。だからお店で蕎麦を打っているのは圧倒的に女性が多いんです。私もおばあちゃんからやさしく蕎麦打ちを教わりました。でも、観光地にあった店だったのでとにかくお客様も多くて、朝から晩まで蕎麦打ちで。だけどそのおかげで、6年半の間に技術はかなり磨かれましたね。

 

——その後、すぐ新潟に帰ってきたんでしょうか?

田中さん:いいえ。その後は名古屋市の蕎麦店で半年ほど修業しました。蕎麦の味だけで勝負している都会の人気蕎麦店も見てみたかったんですよ。その店は自家製粉で蕎麦を作っていたので、製粉の技術を勉強することができました。にしんそばも出していたので、にしんの調理法も教わりましたね。「越水」のメニューにある「にしん」はその時習ったものです。

 

バカ正直で真剣な蕎麦打ち、が取り柄の店。

——「越水」を始めたのはいつからですか?

田中さん:私が25歳くらいの時だから2001年頃かな。正直いって自分で店をやるのを迷ってたんですよ。まだ若かったし不安もありましたから。でも蕎麦好きな両親から熱烈なプッシュがあって背中を押されたんです(笑)

 

——若いのにお店始めるって勇気がいりますよね。やはり地元の加茂市でお店をやりたかったんですか?

田中さん:本当はもっと街中で営業したかったんですけど、地元でやった方がいいっていう両親の意見もあって加茂市でやることになりました。この場所も眺めがいいってことで決めたんです。

 

——眺めが良くて気持ちよく食事できますよね。眺めの他にはどんなことにこだわったお店なんですか?

田中さん:まず安心安全なものをお出しするっていうこと。小千谷のJAから直接仕入れた秋蕎麦だけを100%使ってます。その蕎麦を石臼で自家製粉して、その日製粉した蕎麦粉を手打ちをして作ってるんです。とにかくバカ正直に、真面目な蕎麦打ちをしているのが取り柄ですね。本当に自信を持ってお客様に出せる蕎麦なのかを大事にして作っています。悩んだ時は自分が食べたいものかどうかで判断するようにしてるんですよ。

 

気温や湿度に影響され難しい夏場の蕎麦打ち。

——蕎麦打ちってやっぱり難しいんですよね?

田中さん:難しいですね。いまだに試行錯誤しています。特に新潟の夏場は気温や湿度が高いから、水分量の加減が難しいんですよ。使う蕎麦の実にどれくらいの水分が含まれているかわからないので、様子を見ながら水分量を決めるんです。これはもう経験を元に感覚でやるしかないですね。

 

——手探りみたいな感じですね。

田中さん:そうですね。参考にするデータがないんです。昨年の今頃と同じかっていうと全然違いますし。こねてる時はいい感じでも茹で上がってみると、ゆるくなっちゃうこともあるし、切った時はいい太さなのに茹でると太ることもあるんです。蕎麦粉の挽き方から茹でる時間まで毎回違ってきます。

 

——デリケートな作業なんですね。そうして丁寧に作られたお蕎麦、おすすめの品をいくつか教えてください。

田中さん:まず「ぼっちそば」ですね。戸隠でいうところのざるそばです。「ぼっち」っていうのは戸隠蕎麦独特の盛り方のことで、諸説ある中で山の数え方を意味してるっていう説もあります。「ぼっちそば」では5つの山に分けて盛るんです。戸隠では蕎麦を神社に奉納する習わしがあって、その神社が5つあることに由来しているそうです。

 

 

——へ〜、たしかに新潟ではちょっと珍しい盛り方ですね。他にもおすすめはありますか?

田中さん:「まかない」も人気がありますね。蕎麦の上に大根おろし、ネギ、ワカメ、温泉たまご、天ぷら2種類が乗っていて、そばつゆをかけて食べてもらう「ぶっかけそば」っていう感じのものです。気取らずにがっつり食べてもらいたいですね。

 

 

——時間がない時に食べやすそうな蕎麦ですね。蕎麦以外にもいろんな料理があるんですね。

田中さん:名古屋の修業時代におぼえた「にしん」っていう、6時間くらい煮たにしんの甘露煮も食べてほしいですね。あと「そば団子」「そば白玉」「そばようかん」といった甘味もすべて手作りですので、食後に味わってもらえたら嬉しいです。

 

手打ちにしか出せない甘みや風味を信じ続ける。

——これからも蕎麦打ちにはこだわっていきたいですか?

田中さん:もちろんです。自分が食べたいものを基準にしてますからね。乾麺の技術がどんなに進歩したとしても、私は手打ちでしか出せない甘みや風味を信じて、昔から伝わる技術を大事に守り続けていきたいと思ってます。そのためにも日々研究していきたいですね。

 

 

直接仕入れた蕎麦を石臼で挽いて粉を作るところから、こねて打って切って丁寧に手打ち蕎麦を作っている「越水」の田中さん。目の前に広がる田園風景を眺めつつ、戸隠蕎麦を味わってみてはいかがでしょうか?

 

越水

〒959-1311 加茂市大字加茂新田10020-2

0256-53-7028

11:00-14:00/17:00-20:00

火曜休

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