Things

古民家再生や岩室食材へのこだわり。「灯りの食邸 KOKAJIYA」。

岩室温泉街にある築100年余の古民家が、おしゃれなレストランとして蘇ってもうすぐ6年。岩室の新鮮な食材で作る料理を提供し、県外からも多くの人が訪れる「灯りの食邸 KOKAJIYA」のオーナーシェフ・熊倉さんに、古民家再生の思いや岩室食材へのこだわりをお聞きしました。

 

灯りの食邸 KOKAJIYA

熊倉誠之助 Seinosuke Kumakura

1979年、新潟市西区生まれ。株式会社リトモ代表取締役社長。沖縄県の琉球大学卒業後、那覇市にカフェバー「café & bar RitMo(カフェアンドバルリトゥモ)」をオープン。2009年に新潟に戻り、2013年「灯りの食邸 KOKAJIYA」をオープン。趣味は狩猟。獲物を食材として使うことも。

 

岩室温泉の古民家と熊倉オーナーシェフの出会い。

弥彦山の麓にある新潟市の奥座敷・岩室温泉街の真ん中に建つ古民家レストラン「灯りの食邸 KOKAJIYA」。この建物はもともと、築100年以上もの歴史を持つ「小鍛冶屋」と呼ばれる一軒の古民家でした。長い間、地域の人々から親しまれてきたその呼び名は、この家の本家である温泉旅館がかつて鍛冶屋だったことに由来しています。

 

 

以前、この「小鍛冶屋」にはおばあさんが一人で暮らしていました。しかしその後空き家となり、地域団体が管理することになります。当初は公民館のようなコミュニティスペースとして利用されていましたが、それでは維持管理するための収益が出ません。2013年、この建物の取り壊しが検討されることになります。そこで、地元観光施設「いわむろや」館長の小倉壮平さんから「この建物を使ってレストランをやってみないか?」と声をかけられたのが、熊倉さんでした。

 

 

――「灯りの食邸 KOKAJIYA」をやる前は、どんなことをされていたんですか?

熊倉さん:私は新潟市出身なんですが、沖縄にある琉球大学で海洋学を学んでいました。卒業後、そのまま沖縄の飲食店に勤め、2004年には那覇市内でカフェバー「cafe&barl RitMo」をオープンしました。ずっと沖縄に住むつもりだったんですが、2009年に実家の都合で新潟に帰ってくることになり、個人宅へのケータリングや、料理教室などをやっていたんです。

 

――どうして古民家レストランの話を引き受けようと思ったんですか?

熊倉さん:以前の「小鍛冶屋」がコミュニティスペースだった頃、古民家再生の取り組みの一環として、年1回、ランチを提供する催しをやっていたんです。もともと古民家が好きで、「小鍛冶屋」はとくに気に入っていました。それで、この場所だったら自分でレストランをやってみたいと思ったんですよ。

 

 

「小鍛冶屋」から「KOKAJIYA」へ。生まれ変わった古民家。

――古民家を店舗に再生するのは、とても大変な作業ですよね。

熊倉さん:大変でした。地域の方や支援者による大掃除が3回行われ、その度に軽トラック3台分もの粗大ゴミが運び出されたんです。その後、表具屋、建築屋、電気屋、金属加工屋、家具職人など、20人以上もの様々な業種の職人やクリエイターが、このプロジェクトに関わってくれたんです。参加してくれた皆さんには、古民家再生に取り組む意味をしっかりお話しし、理解した上で関わっていただきました。

 

――古民家には、かなり手を加えたんですか?

熊倉さん:歴史を感じてほしいという気持ちがあったので、できるだけ建物には手を加えず、調度品もこの場所に残っていたものを生かす形で作り上げました。照明のシェードに使われているのは、火鉢の灰入れや、こたつ用の豆炭を入れていた木箱なんですよ。テラス席のテーブル台になっているのも大きめの火鉢。素敵なのにもう使うことのない道具を、多くの人に見てもらいたいという思いで再利用したんです。

 

 

――残っている道具を生かすというのは素晴らしいですね。でも、ほとんど手を加えていないとなると、メンテナンスが大変なのでは?

熊倉さん:そうですね。メンテナンスはずっと続くことになりますね。そういう意味では、古民家再生には終わりがないと思ってます。でも、それも古民家と付き合っていく楽しみなんです。次はどこを直そうかなと、常に考えてますよ(笑)。

 

――照明のほかに、注目してほしいものってありますか?

熊倉さん:本家のルーツでもある鍛冶屋のイメージで作った、ロゴマークの鉄製ランタンでしょうか。昔の「小鍛冶屋」をイメージするものとして、建物内のいたるところに吊るしてあります。夜になると明かりが灯って、とてもいい雰囲気なんですよ。

 

 

――2階もありますが、どのように使っているんですか?

熊倉さん:平日はカフェスペースとして使っています。週末は混み合いますので、ウェイティングスペースとして使うことも。以前に住んでいたおばあさんが、お花やお茶の先生だったので、2階には茶の湯を沸かす炉の跡が残ってるんですよ。ぜひ見ていただきたいです。

 

四季折々の新鮮な岩室食材にこだわった料理。

――料理についてのこだわりを教えてください。

熊倉さん:白ナス、ごぼう、大根など、地元・岩室の食材にこだわっています。岩室でしか食べることができない、岩室まで来なければ食べられない料理を提供しています。日本海や越後平野に囲まれた岩室温泉周辺は、驚くほど食材の宝庫なんですよ。それから、四季折々、その時だけ楽しめる旬の食材も大切にしています。

 

――食材はどこで仕入れていますか?

熊倉さん:お店に来る前に、岩室の直売所や農家の畑で野菜は仕入れています。魚介類は、出雲崎、寺泊、佐渡で水揚げされた新鮮なものを使っています。毎朝仕入れした食材によって、その日のメニューを決めているので、毎回違った料理をお楽しみいただけます。

 

――そんな食材を使って作る料理は、どんなメニューがあるんでしょうか?

熊倉さん:「灯りの食邸 KOKAJIYA」のメニューには、リーズナブルに楽しめる2種類の日替わりパスタをメインとした「ランチコース」。肉や魚をメインとしたコース料理を3種類から選んでゆったり楽しんでいただく「ディナーコース」があります。その時々のシーンに応じて、お食事を楽しんでいただけますよ。

 

岩室の地で飲食店をやる理由。そして、今後の抱負。

――繁華街ではなく、岩室温泉街でレストランを続ける理由を教えてください。

熊倉さん:以前、那覇市でやっていたカフェバーは街中にあったんです。街中で店舗を構えると家賃が高くなるし、毎日売上のことを考えなければなりません。もちろん、お店を経営するためには大切なことなんですが、収支の計算ばかりにウェイトが傾いてしまうのが嫌でした。そうではなく、自分が提供したい料理を、お客様に楽しんでいただくことにウェイトを置きたかったんです。

 

――今後、やっていきたいことはありますか?

熊倉さん:「灯りの食邸 KOKAJIYA」も今年で6年目を迎えます。おかげさまで料理も日々進化してきて、今では県外からも多くのお客様が来てくれるようになりました。なので、もっと岩室を感じてもらえる料理を提供していきたいと思ってます。それと、私は狩猟が趣味なので、11月〜2月の狩猟解禁時にはカモやキジを撃ちに行きますし、それ以外の時期には素潜りで魚を捕ったりしています。今でも、狩猟の獲物で料理を作ることがあるんですが、今後はもっと提供する機会を増やしていけたらと思っているんです。

 

 

岩室温泉街にある古民家でゆったりとした時間の流れを感じながら、岩室の旬の食材を使った料理を楽しむことができる「灯りの食邸 KOKAJIYA」。毎日違ったメニューを提供しているので、四季折々の味を楽しむことができます。今後はジビエメニューも増えていくそうです。岩室の自然の恵みをいただく機会も、さらに多くなるのではとワクワクしますね。

 

 

 

灯りの食邸 KOKAJIYA

新潟市西蒲区岩室温泉666

0256-78-8781

平日 11:30-14:30(L.O.13:30)/18:30-21:00(L.O.20:00)/土日祝 18:00-15:00(L.O.14:00)

火曜/第1・3水曜定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP