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カフェコーナーを新設した、秋葉区の老舗日本茶店「加藤茶舗」。

新津駅東口に位置するにいつ鉄道商店街の「加藤茶舗(かとうちゃほ)」。静岡県から仕入れている日本茶と、新津ならではのSLグッズなどを扱う老舗のお茶屋さんです。2年前には店内の一角にカフェコーナー「CHAYA CAFE」を設け、今、若い層の来店も増えているそう。今回は代表取締役の小林さんにお茶の楽しみ方や選び方など、いろいろとお話を聞いてきました。

 

株式会社加藤茶舗

小林 佳代 Kayo Kobayashi

1962年新潟市秋葉区生まれ。東京の大学を卒業後、家業の「加藤茶舗」へ入る。現在は代表取締役を務め、妹の智栄さんとふたりでお店を切り盛りしている。趣味は、長年続けているハワイアンキルト。

 

大学卒業から約40年、家業を守る店主。

——「加藤茶舗」さんは、いつ頃からあるお店なんですか?

小林さん:創業年や私が何代目の店主だとかは分からないんです。法人化したのは昭和23年ですね。ずっと新津の商店街で商売を営んできました。

 

——小林さんが家業へ入られたのは?

小林さん:高校を卒業してからは、まず上京して大学へ進学しました。在学中に父が亡くなり、卒業して家業に入ったんです。

 

——じゃあ、ずっとお家の商売を守ってこられたんですね。

小林さん:本当はどこかに就職したかったんです。卒業してすぐに実家で働くなんて、若い頃は嫌で嫌でしょうがありませんでした(笑)。働きはじめたのは今から40年近く前ですから、新津のまちは今よりももっと田舎でしたしね。東京は楽しかったし、ひとり暮らしで思うように生活できていたのが、ここでは母も従業員さんもいて。よその人といつも一緒っていうのも、東京暮らしとは大きく違うことでした。

 

 

——それでもお家の仕事を選ばれたのはどうしてですか?

小林さん:選択肢はないようなものだったのかな。外堀から埋められてしまいました(笑)。母の頭の中には「長女が卒業したら、ここへ来るもの」って考えがありましたから、他で働きたいとはなかなか言えなかったんですね。

 

——こちらのお店ではお茶の小売をしていらっしゃると思えばいいですか?

小林さん:そうですね。ずっと小売を中心とした商売をしてきました。それだけ各家庭でお茶を飲む習慣があったんですね。今より家族の人数も多かったでしょうし。新津は鉄道のまちだから、私たちが小さい頃は、新津駅に旧国鉄の皆さんが生活用品などを買う生協みたいなところがあったんですよ。そこや同じく鉄道の拠点である山形県の酒田だとかにお茶を卸していましたね。今も卸先はいくつかあるかな。

 

——小林さんが「加藤茶舗」さんに入られた頃と今とで、違いを感じることってありますか?

小林さん:大量消費をしなくなったといいますか、お客さまは本当に気に入ったものを選んでいる気がしますね。一時期は消費が美徳みたいな感じでしたけど、今の皆さんは、好きなことにはお金と時間をかけて、そうでないところは「これで十分」ってあまりこだわらない。そんなふうに使い分けているような気がします。こだわるポイントにお茶が含まれているといいなと思いますし、そう考える方は少しずつ増えているのかもしれないと感じています。

 

太陽の当たり方や等級、お茶の温度で味わいが変わる日本茶の世界。

——お店で扱っている日本茶について教えてください。

小林さん:静岡県の山手の方で栽培されているお茶を仕入れています。日本茶は、深蒸し、中蒸し、浅蒸しとあるんですけど、うちで扱っているのは山手で作られた茶葉だから中蒸しから浅蒸しのものです。一方、お日様がいっぱい当たる平野部の茶葉は深蒸しにすることが多いんですよ。

 

——茶葉が栽培される場所によって、煎り具合が変わるんですね。

小林さん:山手のお茶は、寒暖差と適度な湿度のおかげで質が良いんですね。平野部で作られた、太陽をいっぱい浴びた茶葉はちょっと硬さがあるんだけど、製法を工夫して深蒸しにすることで甘くて口当たりのいいお茶に仕上がるんです。うちは山手で作られた茶葉を扱う問屋さんとずっとお付き合いしているので、中蒸し〜浅蒸しの日本茶を揃えているということなんです。

 

——日本茶以外もいろいろとあるんですか?

小林さん:日本茶の他には、和紅茶とコーヒーを扱っています。日本茶は大きく分けて、緑茶、ほうじ茶など。緑茶の中には、玉露、煎茶、粉茶、抹茶といろいろありますね。

 

——それぞれに何種類もあるんですか?

小林さん:何種類もあるというか、等級がいくつもあるんです。お煎茶は100グラムで500円くらいのものから3,000円くらいまであるかな。お茶は年に1度しか採れないんですよ。毎年、九州だとか南の方から出回るんです。それも等級の高い茶葉から。はじめは量が少なくて値が張りますけど、5月くらいからは品質と価格が安定してくるんですよ。

 

 

——お客さんは、ご自宅用のお茶を買われる方が多いんでしょうか?

小林さん:そういう常連さんが多いですね。昔はどこの家庭でも、食後に「はい、どうぞ」ってお茶が出てきたと思うんです。我が家もそうですけど、今は家族揃って朝ご飯を食べるご家庭は少ないでしょう。昔はどこのお家でも、みんなで一緒にご飯を食べて、食事の後にお茶を飲んでって、ずっとそうだったんじゃないかしら。でも、生活が変わってちょっとずつお茶を飲む機会は減っていきましたよね。

 

——カフェも増えたし、お茶文化に変化を感じます。

小林さん:今は日本茶、コーヒー、紅茶、中国茶って、選択肢がたくさんありますよね。それをうまい具合に生活に取り入れれば良いんだと思いますよ。私も日本茶だけじゃなくて、コーヒーも紅茶もいただきます。

 

——私は普段、パックで淹れたお茶を飲んでいるんです。でも茶葉を買って、急須と湯のみでお茶を飲む習慣っていいなって思いました。

小林さん:パックのお茶もいいじゃないですか。今はペットボトルがありますし、日本茶に親しむ習慣は以前よりあるかもしれませんよね。

 

——でも茶葉の魅力ってありますよね。

小林さん:茶葉って案外経済的だと思いますよ。ペットボトルよりゴミが少ないですしね。1人前を淹れるのに茶葉の目安は4グラム。それで2服いただけます。100グラムの茶葉を買えば、1ヶ月弱もちますよ。

 

——もし「これから日本茶を楽しみたい」って方がお店に来たら、どんなお茶を勧めますか?

小林さん:1,000円くらいの茶葉を目安にお勧めするかな。同じ茶葉でもお湯の温度によって味が変わるんですよ。熱いお湯を淹れるとお茶が渋くなるんですね。等級が上がるほどお茶っ葉が柔らかくなるので、お湯の温度を下げないと本来の風味を楽しめなくなります。なので、まずは「70度くらいのお湯で、1,000円の茶葉を淹れてください」とご紹介します。

 

——等級とお湯の温度の違いで、お茶の味が変わるんですね。

小林さん:等級が高ければ高いほど、お茶の甘みが増すと考えていただくと分かりやすいかな。逆に等級が低いお茶は渋みや苦みが強くなります。

 

SLギフトにカフェコーナー、月1イベント。気軽にお茶を楽しめる機会を生み出す。

——新津らしいSLのギフトも用意されているんですね。

小林さん:鉄道のまちですからね。「新津鉄道資料館」の売店に商品を卸しているので、そこに置けるものを用意したいと思って。SLをモチーフにしたオリジナルのトートバッグもありますよ。

 

——それにカフェコーナーがあって驚きました。日本茶のテイクアウトもできるんですか?

小林さん:「CHAYA CAFE」を作ったのは2年くらい前かな。コロナ禍で「手洗い場が欲しいね」ってところから、せっかくだからテイクアウトコーナーを作ちゃおうと思って。旅行先でいつも思っていたんです。コーヒーと違って、日本茶を飲めるところは少ないなって。コーヒーも置いていますけど、私たちはコーヒーの専門家じゃないからお茶メニューを中心にご用意しているんです。

 

 

——どんなメニューがあるんですか?

小林さん:煎茶とほうじ茶のホットとアイス(アイスは5月〜10月の期間限定)。それにラテもあります。アイスクリームもはじめちゃいました。大学生なんてほとんど来なかったんだけど、「CHAYA CAFE」をきっかけに若い方にもお茶に親しんでもらえるようになりましたね。

 

——他にも何か取り組まれているいることはありますか?

小林さん:毎月「和菓子の日」を開催しています。上古町の「美豆伎庵 金巻屋」さんの季節の和菓子とお茶を楽しんでもらう企画です。それから地元の「八帖二間」という複合施設で、月に1回「喫茶ハチフタ」という「加藤茶舗」セレクトのお飲み物とお菓子でアフタヌーンティーを楽しめるイベントも開催しています。

 

——いろいろ新しい試みをされているんですね。

小林さん:商売をやっているとね、「何かをやってみよう」って気持ちと同じく、続けることが大事だし、難しいと感じるんですよね。新津の商店街にはたくさんのお店がありますけど、長く続いているお店には「これが肝だよな」って納得できるポイントがあるような気がします。それが大事だし、自分たちもそうなりたいって思うんです。変えられない部分はあるけど、それから派生する枝葉のところは時代に応じてちょっとずつ変えいけたらいいですよね。祖父母の時代は「ティーパックなんてお茶じゃない」って感じでしたけど、私はティーパックでもお茶を飲んでもらえたらそれでいいと思うんです。手軽に美味しくいただけますから。自分に合ったスタイルで日常的に楽しんでお茶を飲むことで、身体の中もお肌もきれいになりますよ。

 

 

 

株式会社加藤茶舗

新潟市秋葉区新津本町2-6-26

Tel/ 0250-22-0233

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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