米粉と平飼い卵で作る優しいおやつ。
「みんなのおやつ i ppu ku」
食べる
2025.12.05
イベントなどで米粉の焼き菓子を販売している「みんなのおやつ i ppu ku」。ベーグル、マフィン、クッキー、すべて店主の川﨑さんの手作りです。イベント参加のそもそものきっかけは、ご夫婦が営む「川﨑農園」の新鮮卵をPRすること。ですが最近、卵を使わないビーガンレシピにも関心を寄せているのだそう。その理由や今後の活動について、いろいろとお話を聞いてきました。
川﨑 美絵
Yoshie Kawasaki(みんなのおやつ i ppu ku)
1975年三条市生まれ。高校卒業後、企業へ就職し、出産を機に子育てと家事に専念。2018年に「米粉と卵のおやつ i ppu ku」としてマルシェなどに出店をはじめる。2025年、屋号を「みんなのおやつ i ppu ku」に変更。
自宅の台所発。
卵を使った、節約おかし。
――川﨑さんが、お菓子づくりをはじめたきっかけは?
川﨑さん:子どもに手作りのものを食べさせたくて。「スナック菓子ばっかりじゃな」と気になったとの、あとは節約したい気持ちもあったんです。主人が勤めを辞めて実家の農家を継いだばかりの頃で、家計が心配で仕方なかったんですよね。
――手作りは節約にもなりますもんね。
川﨑さん:うちの農園の卵を使えるのもポイントでした。美味しい平飼い卵なのに、当時は売り先がほとんどなかったんです。それでまずは、自宅でシフォンケーキでも作って消費しようと思いまして。
――そこからイベントで販売してみようと思われたのは、どうしてなんでしょう?
川﨑さん:「川﨑農園」の卵の売り先に困っていることを子育て支援施設の人に相談したら、「欲しい人がたくさんいるだろうから、ここで売ったらいいよ」と言っていただいて。試しに卵とお米を販売してみたら、皆さんにすごく喜んでもらえたんです。その経験を踏まえて、今度は農家さんが多く出店するマルシェに参加してみることにしました。そのとき分かったんですけどね、商品がお米と卵だけでは、とにかく映えないんですよ(苦笑)。少しでも目に留まるものがあるといいな、と思いついたのが自宅で作っているお菓子だったんです。
――川﨑さんの手作りお菓子がついにデビューするんですね。
川﨑さん:保健所の営業許可を取得して、準備万端になったのが2018年。最初は「川﨑農園」と「i ppu ku」のWネーミングみたいな感じで、お菓子と農作物を一緒に売っていました。そこからだんだんお菓子だけになっていったんです。
――反響はどうだったんですか?
川﨑さん:それが、ほとんど売り上げがなかったんですよ。「お菓子があれば売れる」なんて簡単なことじゃないんだな、と考えさせられました。製菓学校で学んだわけでもないですし、「そりゃ、こうなるよね」と思う部分もあって。それ以来、陳列の仕方やパッケージ、お店の装飾などは自分なりに研究してきたつもりです。

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米粉のお菓子に大きな期待。
卵を売りたかったのに、どうする?
――卵だけじゃなく米粉も「川﨑農園」さんのものだとか。
川﨑さん:今は自家栽培のお米から作った米粉を使っています。でも最初はスーパーの米粉を「なんとなく」選んだだけなんですよ。「米農家なんだから、米粉で作ってみるか」くらいの気持ちで(笑)。米粉のお菓子ってコツがいるから、最初は上手に作れなかったんだけど、母屋の大きいオーブンを使ってみたら、突然、見事なシフォンケーキが完成して。楽しくて、それからお菓子づくりにのめり込みました。
――「小麦粉は使わず、米粉100%」とお聞きしました。
川﨑さん:「i ppu ku」のおやつには、小麦粉は一切使っていません。お菓子づくりをはじめたときから、「米粉オンリー」です。あとは、なるべく国産の有機材料を選ぶようにしています。
――アレルギーを気にされている方には、ありがたいお菓子だろうなと思うんですが。
川﨑さん:もしかして今も、「米粉で作っている=アレルギー対策がしてある」というイメージがあるのかもしれないですね。買いに来られる方から「卵は使っていますか?」「乳は入っていますか?」とよく聞かれます。でもそもそも「卵を売りたくて」お菓子を作っていたわけですから、「卵は入っています」とお伝えすると、とても残念そうにされて。なんだか申し訳ない気持ちになることもあります。「米粉で作っているお菓子は、卵や乳などを使っていないと思われるんだな」「でも私、卵を売りたいし」という葛藤があった時期もありました。
――そもそもは、卵を売ることが大事なミッションだったわけですもんね。
川﨑さん:お客さまが「i ppu ku」に求めているのは、「ただの米粉のお菓子」ではないんだなと思うようになってきて。それで最近、卵や乳、ハチミツなどを使わないお菓子の通信講座を受けました。今年の8月には、屋号を「米粉と卵のおやつ i ppu ku」から「みんなのおやつ i ppu ku」に変えたんです。

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みんなが安心して食べられるおやつ。
その根本に、母の愛。
――イベントに参加して、お客さんの声を聞くことで、いろいろな発見があるものですか?
川﨑さん:子育てに専念していると、社会とつながっている実感が持ちにくいんですよね。子ども中心の生活で、自宅と保育園を行き来するだけの毎日。あのときは大きな孤独を感じていました。私にとって、「i ppu ku」でのイベント参加は、社会とつながるための数少ない手段だったんでしょうね。
――印象に残っているエピソードなど、ありますか?
川﨑さん:「小児がんの治療中で、小麦粉を摂れないから」と「i ppu ku」に足を運んでくださった親子がいました。「このおやつであれば食べられます。ありがとうございます」と言われたことをよく覚えています。体質の問題ではなく、「病気で食べられないものもあるのか」とはじめて実感して。大人であれば分別をつけられるけど、子どもはなかなか難しいものです。きっとそういう子どもと向き合っているお母さんは、「気にせず食べられるもの」を熱心に探しているんですね。
――そう思います。
川﨑さん:「i ppu ku」のおやつが食べられるんじゃないかと期待してもらったのに、「ごめんなさい。お望みの原料だけで作ったものではないです」なんて、同じ母親としてしのびないと思って。それでアレルギー品目に配慮したヴィーガンスイーツの勉強をはじめました。「みんなのおやつ」と屋号を変えたのも、アレルギーや食事制限がある人も、ない人も同じように食べられる美味しいものを提供したいと思ったからです。
――これからも、みんなに美味しいおやつを届けてくださいね。
川﨑さん:「i ppu ku」としてスタートを切って、今年で7年目です。気持ち的には、10年まで続けたいなと思っています。

みんなのおやつ i ppu ku
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