Things

新潟県で初めてニジマスの養殖に成功した「髙野養魚場」。

魚沼市(旧小出町)の「髙野養魚場」は、新潟県で初めてニジマスの養殖に成功し、発祥の地として記念碑が建てられている由緒ある養魚場です。ニジマスやヤマメ、イワナといった高級川魚を養殖するだけでなく、加工した商品をネットショップでも販売しています。インターネットで川魚が買えるなんて、時代が進みましたね。今回は4代目を務める髙野さんに、養殖の流れや今後の事業展開などを聞いてきました。

 

髙野養魚場

髙野 大輔 Daisuke Takano

1977年魚沼市生まれ。東京水産大学を卒業後、マグロを養殖する会社に6年間勤め、実家である「髙野養魚場」に入社。髙野養魚場4代目。

 

越後三山と魚野川の恵みを受けて。歴史を紡ぐ養魚場。

——「髙野養魚場」では、どんな川魚の養殖をしているんですか?

髙野さん:ニジマスやイワナ、ヤマメ、鯉、魚沼ブランドの「美雪マス」などを中心に育てています。ちなみに以前は、養魚場だけでなくて旅館も営んでいて、魚野川で鮎釣りをする人に利用してもらっていました。

 

——いろんな種類の川魚を養殖されているんですね。高野さんが4代目となると、やっぱり子どもの頃から家業を継ぐものだと思っていたんですか?

髙野さん:僕の高祖父からはじまって、生まれる前からの家業ですから、「いつかは自分もこの仕事に就くんだろうな」とは思っていました。だから大学は水産系へ進学したんです。卒業後は、大学剣道部の先輩が勤めている会社に就職して、6年間マグロの養殖に携わって。そこでいろんなことを学んで家業を継いだんです。

 

——なるほど。マグロの養殖を学んできたんですね。ちなみに「髙野養魚場」って、新潟県内で初めてニジマスの養殖に成功したって聞いたんですけど……いつ頃のことなんですか?

髙野さん:ニジマスは餌の食いつきもいいし、冷たい水を好むマス類の中では水温の高低差にも対応できて育てやすい魚種なんです。でも、昭和初期は技術がまだ成熟していなかったから、県からの指導を受けながら試行錯誤して、初めてニジマスの養殖に成功したと聞いています。だから発祥の地として、自宅の前には記念碑が建っているんですよ。

 

 

——おお、ほんとだ。

髙野さん:この場所は、越後三山からの伏流水と魚沼の豊かな水流に恵まれています。豪雪地帯だから雪解け水も豊富で、生け簀の水には川の水と地下水の両方を使っています。魚沼エリアでは当たり前になっている消雪パイプも地下水を使っていて、冬でも水温は10度以上だから融雪するにも魚を育てるにも最適なんです。

 

——魚沼の自然の力は生活や農業だけでなく、養殖にも力を貸してくれるんですね。

髙野さん:はい。僕たちが育てている魚たちは厳しい冬を経験する分、たくましく育つし、身がしっかり引き締まって、美味しくなるんですよ!

 

——なるほど、理にかなった立地で養殖をされているんですね。でも、これだけ魚野川が近いと自然災害の影響を受けたりしませんか?

髙野さん:水害と台風は天敵ですね。生け簀の水が濁る程度では魚たちは死なないけど、育成環境が悪くなるから水質を整えるために地下水の水量を増やします。その点でも、川の水と地下水の両方を使うメリットがあるんですよね。

 

孵化から始まる養殖の流れと、歴史的シンボリック。

——養殖の流れについて教えてください。やっぱり稚魚を買い付けるところから始まるんですか?

髙野さん:いえいえ、卵をかえらせるところから始まるんです。「髙野養魚場」では10月〜2月が孵化時期で、メスから卵を取ってから1カ月程かけて孵化させます。それから成長した魚たちを大きさや用途ごとに選別して、生け簀に分けていくんです。魚が小さい間は傷付きやすくて、生け簀の密度が高いとヒレが欠損してしまうし、ちゃんと選別しないと大きな魚が小さい魚を食べてしまって数が少なくなっちゃうんですよ。

 

——さっき、生け簀を見てきたら相当数の魚たちがいて驚きました。比較的大きく育った魚だったのかな……。

髙野さん:そうだと思います。全部で60 の生け簀があって、仕分けをしながら上流から下流の生簀へと徐々に移動させていきます。ちなみに、昭和8年の創業時から変わらず現役の生け簀もあるんですよ。

 

 

 

——ところで、餌って何を食べさせているんですか?

髙野さん:魚粉や小麦粉、大豆、油かすで作った餌を与えています。たまに地元の小学生たちに「魚粉を食べるなんて共食いなの?」と聞かれるんですけど、魚粉が好物なんですね。魚粉の含量が多いと大きく成長してくれるから、コストはかかるけどこだわって良い餌を仕入れているんです。

 

——たしかに、あれだけの魚たちがいるとコストが……。餌やりにはコツがあるんですか?

髙野さん:餌やりのコツは、まんべんなくやることと魚の様子をちゃんと確かめること。人間と同じでお腹が空いていればガツガツ食べるし、満腹になったら落ち着いてきます。それを見極めないと、残った餌が池の下に溜まって汚れの原因になるし、餌を無駄にすることにもなりますからね。

 

「美味しい」のコメントがダイレクトに響くネット販売。

——「髙野養魚場」では、ネット販売も積極的に行なっていますよね。

髙野さん:「髙野養魚場」の強みは加工場もあることなんです。だから刺身や甘露煮、塩焼きなど、20種類ほどの商品を加工していて、どんどん拡充しています。今までの販売ルートに加えてネット販売もできるんじゃないかと、3年程前から大手ショッピングサイトや新潟の産直サイトでも販売を始めました。去年はコロナの影響で、今まで商品を卸していた旅館や居酒屋などが壊滅状態だったので、インターネットという新しい販売ルートを確立していて良かったです。

 

——今の時代に合っていますね。ネット販売での反応はどうですか?

髙野さん:卸業者さんを介して販売すると、食べた人の声はなかなか届きません。でも、ネットの場合は率直な意見を聞くことができるから良いですね。「美味しい」っていうコメントは何より嬉しいし、食べた人が喜んでいることをダイレクトに感じられます。

 

——それは嬉しい反応ですね。髙野さんのオススメ商品は何ですか?

髙野さん:やっぱり、魚沼ブランド「美雪マス」を食べてもらいたいですね。お刺身や燻製、粕漬けや味噌漬け、何でも美味しいですよ。美しい紅色をしていて、舌触りは滑らかでとろけちゃいます。

 

 

——今後は、どんな事業展開を考えていますか?

髙野さん:もっと付加価値を創造していきたいですね。生産量が少なくて貴重な魚沼ブランドの「美雪マス」の養殖と加工をしていることもそうだし、ネット業界へ進出したことも、自社に付加価値を付けたいと思ってスタートしたことだったんです。だからこれからは、ネット販売にもより力を入れて、養殖だけでなく加工販売も事業の柱にしていきたいです。

 

 

養魚場の広さにも驚きましたが、数々の商品を自社で加工していることにもびっくりしました。「美雪マス」のお刺身は、腹と背で違った味わいが楽しめて、スモークサーモンならぬ「スモーク美雪マス」は、とろける舌触りがたまらない絶品の美味しさ。「髙野養魚場」の商品はインターネットで購入して自宅でも楽しめます。ぜひ味わってみてくださいね。

 

髙野養魚場

新潟県魚沼市虫野1540-18

TEL:025-792-0083

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP