冷凍pizzaをはじめた村上のイタリアンバー「ストレイト アヘッド」。
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2021.05.08
コロナ禍で苦境にある飲食業界。新潟市では4月21日から5月9日まで、お酒を提供する飲食店に営業時間の短縮要請が出されましたが、それ以外の地域のお店も厳しい状況にあることは同じです。そんな中、この状況をあの手この手で乗り越えようと試みるたくましいお店もあります。県北・村上の市街にお店を構える「pizza & bar ストレイト アヘッド」は、看板商品の自家製窯焼きピザを冷凍し、家庭で気軽に焼きたてが味わえるよう新たな商品の提供をスタート。テイクアウトメニューの目玉として展開し、通信販売にも乗り出す予定です。店主の佐藤さんに、開発の経緯やこだわり、市販の冷凍ピザとの違いから、お店のことや対コロナのことまで、いろいろお話を伺ってきました。


佐藤 直樹 Naoki Sato
1979年埼玉県越谷市生まれ。4歳から中学1年までを両親の地元・村上市(旧朝日村)で過ごす。都内の専門学校を卒業後、携帯電話販売業や広告代理店の営業職を経て実家のある村上市に戻り、仙台での修業を経て、2012年、村上駅前に窯焼きピザが売りのバー兼テイクアウトの同店を開業。2016年に現在の場所に移転し、規模を拡大。大きく開いたシャツの胸元がトレードマーク。

「ひと工夫」で店の味を再現。来店が難しい今、焼きたてを家庭で。
――まずは「冷凍ピザ」について聞かせて下さい。お店のピザよりも少し小さいサイズで、お値段もリーズナブルですね。
佐藤さん:はい。ご家庭向けなので、一般的なトースターやオーブンレンジに入るサイズにしました。生地としては店で出しているピザの約半分の分量で、直径としては約20センチ、2回りくらい小さいですかね。材料はもちろんお店で出すピザと同じものを使っていますし、窯で焼くまでの工程もいっしょです。焼き上げたあとに冷凍するかしないかの違いだけですね。
――素人質問ですが、一度冷凍したものを解凍することで味が落ちたりはしないのですか?
佐藤さん:そこは試行錯誤しました。開発段階で何度もやり直しましたし、コンビニやスーパーで売っている市販品や、すでに通信販売をやっているお店のものを取り寄せて試食・研究したりしました。その結果、焼き上げたあとに「ひと工夫」を加えてから冷凍することによって、お店で出す焼きたてに限りなく近い味を再現できるようになり、商品化することができました。

――その「ひと工夫」とは?
佐藤さん:うーん、企業秘密ということにさせてください!
――そうですか。せめてヒントだけでも……?
佐藤さん:そうですね、まぁ、粗熱の取り方ですね。
――ありがとうございます。失礼ついでにもうひとつ聞いてもよろしいでしょうか。先ほど仰ったように今はスーパーやコンビニでも冷凍のピザが普通に安く売られていますが、それらとこちらのピザの一番の違いは?
佐藤さん:確かに市販の冷凍ピザの中にもすごく美味しいものがあることは否定できません(笑)。メーカーの企業努力ってすごいですし。でも何というか、生地がカリカリ・サクサクかモッチリか、どちらかに売りをはっきりと振り切っているものが多いのではないかと思います。うちの場合はそのバランスを取り、両方を併せ持ったピザを提供しているつもりなので、冷凍でもそれをできるだけ再現しました。
――そもそも、それほど試行錯誤されてまで冷凍ピザを商品化したのは、やっぱり新型コロナの影響なのでしょうか。
佐藤さん:そうですね。というか、新型コロナの影響でようやく踏ん切りがついたというのが正直なところです。もともと冷凍ピザの通信販売はやろうと思っていたのですが、以前はお店の忙しさもあってなかなか手がつけられなかったので、ケガの功名じゃないですけど、結果的にはこのコロナ禍が実現のきっかけになりました。以前から遠方の知人や村上を離れたお客さんからの要望自体はあったので。

ピザは味見できないから面白い? 都内のサラリーマンから帰郷し独立開業。
――お店のことについても教えてください。オープンはいつですか?
佐藤さん:2012年の夏です。最初はここではなく、村上駅前通りにありました。そのお店は本当に小さくて、席数は8席のみ、それこそピザのテイクアウトを中心にやっていました。おかげさまでたくさんの方にご愛顧いただいていたのですが、さすがに狭くて、満席で来店をお断りしてしまうことも増えてきてしまったので、2016年にこちらに移転してきました。
――オープンまでの経緯も少しお聞かせいただければ。それまでどちらかで修業されていたんですか?
佐藤さん:自分はもともと飲食業ではなかったんです。都内でサラリーマンをやっていたのですが、父が亡くなり帰郷することになりました。地元には自分がそれまでやってきたような仕事があまりないこともあり、サラリーマン時代からぼんやり考えていた飲食業での独立開業を具体的に目指すことにしました。それでまずは村上市内の飲食店で働き始めたのですが、そのお店のオーナーのお知り合いで、仙台で飲食店を複数経営している方と知り合って、「独立を考えているなら、ウチの店で勉強してみない?」と誘われ、仙台へ行くことにしました。そこで働いたのが修業といえば修業でしょうか。
――そうなんですね。当初からイタリアンでの開業を目指していたのですか?
佐藤さん:いや、その仙台のお店に入ってからですね。そのお店がイタリアンだったんです。そこでいろいろ勉強するうちに、特にピザの面白さに目覚めました。料理はサラリーマン時代から家でも普通に作っていたのですが、それまでやってきたことの中で、ピザが一番面白かったんです。なので、自分のお店をやるならこれをメインにしよう、と決めました。

――ピザの面白さとは、具体的には?
佐藤さん:うーん何というか、なかなか思い通りにならないのが逆に面白い、っていう感じですかね。ピザって、パスタとかと違ってお客さんに提供する前に味見できないじゃないですか、提供前に端っこを千切るわけにもいかないし(笑)。もちろん一枚一枚それまでに培ってきたことを込め、できる限りのことをしていますが、そのときできたピザの味は、最終的には口に入れたお客さんしか分からない。それなりに経験を積んできて、こうすればこういう味になるってことはおおよそ分かっているつもりではありますが、そういう怖さは今も少し感じます。それを乗り越えて「美味しい」と思ってもらえるのは、他の料理にはあまりない醍醐味のひとつじゃないかなと思いますね。
――確かに料理はだいたい味見できますものね。では、修業時代の後は?
佐藤さん:仙台のお店で働いていたときに、東日本大震災に遭って。実家からは心配なので帰ってこいと言われましたが、まずはお店を立て直さなきゃならない。それで震災から半年経って、ようやくまたお店が軌道に乗ったので退職し、再帰郷しました。それから1年くらいは地元の市場調査と開店資金の確保も兼ねて市街の居酒屋で働いたのですが、そのお店はごく普通の居酒屋なのに、意外とピザの売れ行きが良かったんです。当時は村上にイタリアン、ピザのお店がほぼなかったんですけど、実は需要はあるんだな、と分かって。それで独立開業しました。ただ自分が店を出す直前にピザのお店が同じ村上駅前に開業したんですけどね(笑)。あぁ同じこと考えていた人がいたんだ、って思いました。

城下町でもイタリアンを選択肢の一つに。新型コロナ収束後も見据えて。
――お店のコンセプトについて教えてください。
佐藤さん:当初は店名の通り、ピザを食べられるバーという感じで、今も基本的にはそのつもりなんですけど、移転してお店が広くなってからはパスタやサイドメニューも充実させて、家族連れや団体の方など幅広く対応できるようになりました。まぁ、バーにしては食事が充実していて、レストランにしてはお酒が充実している、って思っていただければありがたいです(笑)。村上はやっぱり和食が中心ですが、イタリアンも選択肢のひとつにしてもらえれば幸いです。
――ピザを焼いている窯も自作されたと聞きましたが。
佐藤さん:そうですね。自宅での試作窯、移転前のお店の2代目に続いて、現在のは3代目になるのかな(笑)。ピザ窯って既製品もあるんですけど、窯自体に加え送料も高額だし、せっかくお店をやるなら窯も自分で作ってみたいと思って。父は左官業をやっていたのですが、その道具が実家に残っていたのもきっかけのひとつでした。父から直接教えてもらうことはできなかったのですが、本やネットで調べながら道具の使い方や作り方を学んでいき、なんとか完成させることができました。
――今後の展望についてもお伺いしたいところですが、やはりコロナ禍の影響は大きいですか。
佐藤さん:かなりキツいですね。昨年の4月ころから客足がガクッと落ちて、一時は「飲食店を応援しよう」っていう空気にも助けられ少し持ち直した時期もあったのですが、この春からの再拡大でまた以前に逆戻りした感じです。いや、ひょっとしたら前より悪いかも。振り返れば、もう1年以上になるんですね……。うちでも席数を減らして空間を広く取ったり、仕切りを設けたり、個室を新調したり、ピザ窯があるのでもともと換気は強めですが空調をさらに改善したりと、少しでも安心して利用してもらえるように手を打ってきてはいるんですけどね。移転前からやっていたテイクアウトのさらなる充実もそのひとつです。その切り札、というほどでもないですが、冷凍ピザも良い起爆剤になってくれればなぁと思います。
――まだ発売開始から間もないですが、反応はいかがですか。
佐藤さん:ぼちぼちですね。想定していなかった反応としては、最近人気のキャンプに持っていくのにちょうどいい、という声でした。今はまだ難しいかもしれませんが、バーベキューに持ち込んでも喜ばれるかもしれません。そのうちネット販売も始めるつもりなので、どのようなシーンでお召し上がりいただくにせよ、これをきっかけに全国のどこかでうちのピザを知った方が、コロナ禍が収まったら村上への旅がてらうちにも寄ってもらえたりしたら理想ですね。世の中がまた早くそういう状況になってほしいと思います。
――そうですね。私もさっそく買って帰ります! 本日はありがとうございました。


〒958-0852 村上市南町2丁目5-32
TEL 0254-56-1331
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