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フードトラックで復活したシルクスイート専門店「絹いもや」。

「絹いもや」という名前に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。新潟市北区の特産品「しるきーも(シルクスイート)」というさつまいもを使った焼きいもやスイーツを販売していたお店で、以前は葛塚本店の他、ビュー福島潟、万代シテイバスセンターにも店舗がありました。その「絹いもや」が、全国的にも珍しいフードトラックで復活したんです。今回は代表の大倉さんにいろいろとお話を聞いてきました。

 

 

割烹 大倉屋

大倉 雄二 Yuji Okura

1967年新潟市北区生まれ。新潟調理師専門学校卒業。水道管工事の仕事を経験後、古町の料亭で5年間料理の修業をする。20代後半で家業の「割烹 大倉屋」に就業し、30代で四代目店主となる。北区の観光特産品を作るべく、有志と共に「株式会社Nアグリ」を立ち上げ「絹いもや」をオープンするも数年後「株式会社Nアグリ」は解散。2022年2月よりフードトラックを導入して「絹いもや」を再スタートした。

 

「絹いもや」を運営している老舗割烹「大倉屋」。

——すごい車ですね。こんなのはじめて見ました。

大倉さん:ありがとうございます。中に入れるフードトラックは全国でも珍しくて、新潟県内では「絹いもや」が初めてなんです。普段は「割烹 大倉屋」の駐車場で営業しています。

 

——かなり珍しいタイプのフードトラックなんですね。ちなみに「割烹 大倉屋」さんとはどんな関係があるんですか?

大倉さん:私は「割烹 大倉屋」の四代目店主なんです。割烹をやりながら焼きいも屋をやっている、っていうね(笑)

 

——そうだったんですね! 「割烹 大倉屋」さんって、いつ頃からやっているお店なんですか?

大倉さん:昔はこの駐車場のあたりに川があったんですよ。110年くらい前にその川を利用して魚屋をはじめたのが「割烹 大倉屋」の起こりだったようですね。戦後は食堂を経営していたこともあったようです。現在の割烹というかたちになったのは60〜70年前なのかな。

 

 

——かなり歴史のあるお店なんですね。それじゃあ、大倉さんは最初から跡を継ぐつもりだったんですね。

大倉さん:まったく、そのつもりはなかったですね(笑)。そもそも私は正統な跡継ぎじゃないんです。

 

——え? どういうことですか?

大倉さん:「割烹 大倉屋」は母方の実家がやってきたお店なんです。でも大倉家には跡継ぎがいなかったので、私が家ごと継いだんですよ。ある朝、起きてみたら親戚一同が集まっていて、その場で養子縁組させられました(笑)。今までおじさんやおばさんだった人が両親になったんです。

 

——現代ではちょっと珍しい話ですね(笑)。それからは割烹の跡継ぎとして育ったんですね。

大倉さん:当時は豊栄にも芸者さんがたくさんいて、「割烹 大倉屋」のお座敷にも呼ばれて来ていたんです。そうした芸者さんたちから可愛がっていただきましたね。花札で遊んでもらったりね(笑)

 

——そんな環境で育っても、跡を継ぐつもりはなかったんですか?

大倉さん:そうですね。車関係の仕事に就きたかったんです。それで大学受験をするんですが志望校は落ちてしまって、浪人して予備校に通わせてもらう条件として調理師専門学校へ行くことになったんです。昼は専門学校で料理を勉強して、夜は予備校で受験勉強をする日々でしたね。

 

——それはハードですね……。

大倉さん:結局大学へは行かず、高校時代からアルバイトをしていた水道管工事の会社に就職したんです。でも割烹を継がせたい義父から、強制的に古町の料亭で修業させられることになったんですよ。景気がよかった頃の料亭はとにかく忙しくて、朝9時から夜11時まで働き通しでしたけど、狭い寮に入るのが嫌でアパートを借りていたので、家賃を稼ぐために仕事が終わってからもスナックで働いていました(笑)

 

——さらにハード(笑)。「割烹 大倉屋」を継いだのはいつからなんですか?

大倉さん:私が30代のときに、亡くなった義父の跡を継ぎました。

 

新潟市にしるきーもを広めた「絹いもや」。

——しるきーもって、もともと北区で作られていたんですか?

大倉さん:いいえ。北区の木崎や松浜には、昔から葉たばこ農家がたくさんあったんですよ。でも禁煙の風潮が高まって、ほとんど全部の農家が葉たばこの生産をやめてしまいました。その結果多くの耕作放棄地ができてしまい、役所やJAが他の作物を栽培できないか検討していたんです。そこで試しにシルクスイートを栽培してみたら、他の地域に負けないくらい美味しいものが作れたので、新潟市北区の特産品を目指していくことになったんですよ。

 

——なるほど。それでしるきーもの栽培をはじめたんですね。

大倉さん:ところが、当初は農家さんから不評だったんです。どうしてかというと、種芋の値段が高くて紅はるかの倍くらい掛かるのに、最初の年の生産量が少なかったからなんです。おまけに買取先も決まっていないので、しるきーもを栽培する農家は少なかったんです。

 

——確かに農家さんにしてみれば、安心して栽培することができないかもしれないですね。

大倉さん:そうなんです。そこでしるきーもを買取する「株式会社Nアグリ」という会社を作ることになり、私も協力することになりました。メンバーは「お菓子処 菜菓亭」の会長、観光協会前会長、農業委員会会長、それと私の4人でした。

 

——割烹をやっている大倉さんが、さつまいもの事業に関わったのはどうしてなんですか?

大倉さん:しるきーもを特産品にすることで活性化すれば、生まれ育った地域への恩返しになると思ったし、その事業に関わることに魅力を感じたんです。

 

 

——その事業の一環で「絹いもや」をはじめたんですね。

大倉さん:街の人たちにも協力してもらって「絹いもや」をオープンして、仕入れたしるきーもを使った焼きいもや加工品の販売をはじめました。ところが、さつまいもを使った商売っていうのはとても難しかったんですよ。

 

——どんなふうに難しいんでしょうか?

大倉さん:まずしるきーもって形のいいものができにくいんです。だから割烹の仕事が終わってから、毎晩選別作業をしていました。形のいいものは焼きいも用にして、他のものはペーストや加工品に使っていたんです。

 

——できてみるまで、いもの形はわからないですもんね。

大倉さん:そうなんです。あとは保存の問題ですね。さつまいもは13〜15℃を保って保管しなけらばならないんです。茨城には1年中保存できる施設があるんですけど、私たちにはそんな施設がないので、たくさん仕入れても長期間の保存ができずに傷んでしまうんです。

 

——なかなか難しいものなんですね。

大倉さん:それで残念ながら「株式会社Nアグリ」を解散することになったんですが、「絹いもや」の商標だけは4人のメンバーで使ってもいいという条件だったので、私も使わせてもらうことにして、「新潟駅CoCoLo」や「イオン」などで出店させてもらったり、シルクスイートをペーストに加工したものを販売したりしていました。ちなみに観光協会の前会長も「絹いもや」として「きらきらマーケット」で出店しています。

 

フードトラックを引っさげて、「絹いもや」復活。

——このたび「絹いもや」をフードトラックで復活させたいきさつを教えてください。

大倉さん:せっかく地元に美味しいものがあるのに、それを使わないのはもったいないし、誰も使わなければ農家さんも作るのをやめてしまうと思ったので、割烹業務の妨げにならない程度に「絹いもや」を続けてきたんです。イベント出店のたびに店舗営業を望む声があったり、コロナ禍で割烹業務が落ち着いてきたこともあって、もう一度「絹いもや」を店舗営業してみようということになしました。

 

——でも、どうしてフードトラックで?

大倉さん:以前は割烹のなかで販売していたんですが、なかなか店内までは入りづらいという声が多かったんです。そこでキッチンカーでの販売を思いつきました。キッチンカーだったら場所を移動して販売することもできますからね。

 

——それはいいところに目をつけましたね。

大倉さん:ところが、いざキッチンカーを調べてみると、誰もが使っているような車ばかりで魅力に欠けると思ったんです。それでキッチンカーを諦めかけたときに、千葉の会社で作られているフードトラックを見つけたんですよね。現地まで見に行って、そのまま予約してきました(笑)。あまりにも車が広かったので、お客様が中に入れるような造りにしてもらったんです。これは「絹いもや」がはじめてのケースなんですよ。

 

 

——確かに今まで見たことがないような気がしますね。ちなみに焼きいもの他には、どんなものを売っているんですか?

大倉さん:おすすめは「揚げいも」です。しるきーもの焼きいもを油で揚げることで、カリッとした食感や、黒糖みたいな香ばしい甘さになるんです。あとソフトクリームも食べてほしいですね。バニラに焼きいものペーストが入っていて、濃厚な味わいになっています。

 

 

——さつまいももいろいろな楽しみ方があるんですね。今後はどんなふうに「絹いもや」をやっていきたいですか?

大倉さん:北区の特産品を扱う店として、地元を盛り上げるお手伝いをしていけたらと思っています。特に最近の「葛塚市」はお客様もまばらで、出店数も減っているんです。市が立つ通りも両端にしかお店がなくて、真ん中がぽっかり空いているので、昨年からそのスペースを使わせてもらって「うまいもん市場」をはじめてみました。「絹いもや」のフードトラックはもちろん、地元のお店にも出店してもらって、以前の賑わいを取り戻せたらと思っているんです。

 

 

絹いもや

新潟市北区嘉山1-2-18 割烹大倉屋駐車場内

025-387-2017

11:00-17:00

月火水曜休(イベント出店時も不在)

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