以前ご紹介した燕市のオーガニックショップ「Mother Organic(マザーオーガニック)」が、観葉植物やアートに囲まれた「Mother(マザー)」というカフェを新たにオープンしました。その場所というのも、以前紹介させていただいた「SPUTTER(スパッタ)」というファクトリーショップの2階なんです。なんだかご縁を感じるこちらのカフェにお邪魔して、店長の知野さんからお話を聞いてきました。
Mother
知野 今日子 Kyoko Chino
1984年新潟市中央区生まれ。スポーツ専門学校を卒業し、スポーツクラブでインストラクターを務める。その後はインテリアショップなどを経て2023年のオープンと共に「Mother Organic」で働き、2024年にオープンした「Mother」で店長を務める。趣味は旅行で石川県の七尾市が印象に残っている。
——知野さんはずっと飲食関係の仕事に携わってきたんですか?
知野さん:以前はスポーツインストラクターをやっていたんです。子どもの体育教育に関わりたかったので、スポーツクラブでスイミング指導をしていました。でも23歳のときにクラブが閉館することになったので、それからはインテリアショップで働くことにしました。
——どうしてインテリアショップで働こうと?
知野さん:昔から建築物や空間が好きで、なかでも古い建物を再生した空間に興味があったんです。私が働くことになったインテリアショップも、倉庫をリノベーションした素敵な店舗だったんですよ。
——それって「Mother」につながっている気がしますね。リノベーションのどんなところに興味を持ったんでしょうか?
知野さん:古いものに手を加えることで、新しい表情や魅力が生まれることが面白いんですよ。こちらの「SPUTTER」さんの建物も古い廃工場をリノベーションすることで、工場の雰囲気を残しつつお洒落な空間に生まれ変わっていると思います。
——では、その建物の2階でカフェをオープンすることになったいきさつを教えてください。
知野さん:人生の転機に直面して、将来についていろいろと考える機会があったんです。自分がいちばんやりたいことは何なのかを考えてみたら、世の中にある素晴らしいものの魅力を多くの人に伝えることだと気づきました。
——「素晴らしいもの」っていうのは、例えばどのようなものなんでしょう?
知野さん:私はあちこち旅して回るのが好きなので、旅先で素敵なものに出会うことが多いんですよ。なかでも山形のある農家で作られているぶどうが大好きで、新潟の人にもぜひ食べてもらいたいと思っていました。そんなことを考えていたところ、「Mother」のオーナーでもある「株式会社MAYROW」の堀口と出会ったんです。話をしてみてやりたいことの方向性が同じだと感じたので、会ったその日に「ぜひ一緒にやらせてください」とお願いしました(笑)。それから間もなく「Mother Organic」というオーガニックショップがオープンしたので、まずそちらで働いていたんです。
——その1年後にカフェをオープンすることになるんですね。
知野さん:オーナーがよくこちらの「SPUTTER」さんへ買い物に来ていたんです。そのうち意気投合して「2階でカフェをやってみないか」とお誘いいただいたんですけど、まだ「Mother Organic」をオープンしたばかりだったこともあってお断りしたんですよ。でもずっと頭の片隅に引っかかっていて、昨年の末に「せっかくの機会だからやってみよう」と決心しました。
——「Mother」はどんなコンセプトではじめたカフェなんでしょう?
知野さん:現代を生きる人は忙し過ぎて、自分に優しくできる時間もないじゃないですか。そんななかで、ゆっくりと何も考えずに心を休めてもらえる場所を作りたかったんです。癒される空間を作るために「SPUTTER」さんからもご協力いただいて、植物いっぱいの空間になっています。
——すごく広い空間ですよね。いろいろな席があって面白いです。
知野さん:ありがとうございます。いろいろな空間で自分の時間を過ごしていただけるようにしているんです。ソファー席でお友達と寛ぐ方もいれば、カウンター席でスタッフとおしゃべりを楽しむ方もいます。ハンモックに横たわって読書を楽しんでいる方もいらっしゃるんですよ。
——へぇ〜。インテリアの素材が木や布だから、自然を感じられて落ち着きますね。
知野さん:水道や電気の工事以外は、全部自分たちでDIYしているんです。カウンターやテーブル、ベンチは、ホームセンターから買ってきたカフェ板を使って、ひと月で内装工事を仕上げました。
——そうだったんですね。ところで、こちらではどんなフードやスイーツをいただけるんでしょうか?
知野さん:ホットサンドプレートは、私が韓国の屋台で出会った味を再現したものなんです。甘めのスクランブルエッグをバタートーストでサンドしたシンプルなものですが、飽きずに美味しく食べることができます。
——それは美味しそうですね。スイーツのおすすめも教えてください。
知野さん:自家製プリンです。家庭で作るような固めの焼きプリンなんですけど、理想的な固さになるまで何度も試作を繰り返して辿り着きました。
——こちらも美味しそうですね。
知野さん:あと「無農薬レタスのサラダプレート」もぜひ召し上がってみていただきたいです。無農薬、無化学肥料で育てた「フィッシュベジ」を食べてほしいという思いからはじめたメニューで、大皿にたっぷりとレタスが乗っていて、日替わりバゲット、ミニスープ、ブリュレバナナがセットになっています。暑さで疲れた方がよく召し上がっていかれますね。
——オープンしてまだ間もないですけど、カフェをやっていて難しいと感じることはありますか?
知野さん:複数で来られているお客様に、同じタイミングでメニューを提供することです。温かいメニューは温かいうちに、冷たいメニューは冷たいうちに召し上がっていただきたいんですけど、タイミングがズレるとお連れの方のメニューが提供されるまでお待ちになる方が多いんですよ。とはいっても、スタッフ人数の都合ですべてのメニューを一緒に提供することも難しいので、そこが大きな課題になっていますね。
——そうした課題については、どのように解決したいと考えていますか?
知野さん:どうすればお客様のためにより良いオペレーションができるのか、スタッフ間で年齢や立場は関係なくディスカッションしています。アルバイトのなかには調理師専門学校に通っている子もいるので、その子に効率の良い調理方法を教えてもらったりしているんです。娘くらいの歳の子にもアドバイスをもらっていますね。
——それだけお店を居心地よくしたいという気持ちが強いんですね。
知野さん:そうですね。ゆっくり心地よく過ごしていただきたいと思っています。そのためにもアルコール以外のドリンクは、半額でお替わりをご提供させていただいているんです。別なドリンクをお替わりしていただいても半額ですので、飽きることなくご利用いただけます。だから午前中はここで打ち合わせをして、終わった後もひとりでのんびりと過ごす方もいらっしゃいます。
——そんなにのんびりさせてくれるんですね(笑)
知野さん:何度もお越しいただいて、このお店を「自分の場所」にしてほしいんです(笑)。ですから居場所に困っている方は、ぜひ一度お立ち寄りいただきたいですね。そして自分の過ごし方を見つけていただけたら嬉しいです。
Mother
燕市吉田幸町6-12 SPUTTERビル2F
050-5527-7197
10:30-18:00
不定休