今使っているお鍋、みなさんはどう選びましたか? 価格やデザインはもちろん、使いやすさや機能性も大事なポイントになりますよね。燕市で家庭用の調理器具を製作している「宮﨑製作所」は、今年4月に「おかず鍋」という新商品を発売しました。この鍋にはお家の料理をより美味しく、快適につくれる工夫がたくさんあるんだとか。開発から販売まで携わった宮﨑さんご夫婦に、いろいろ聞いてきました。
宮﨑製作所
宮﨑 絢子 Ayako Miyazaki
1989年燕市出身。神奈川の大学を卒業後、東京のPR会社で働く。その後カナダに留学し貿易について学ぶ。10年前から家業である「宮﨑製作所」で働きはじめる。「おかず鍋」で切り干し大根をよくつくるそう。
宮﨑製作所
宮﨑 敏樹 Toshiki Miyazaki
1989年燕市出身。東京の大学を卒業後、燕市の企業で働く。絢子さんとの結婚を機に「宮﨑製作所」で働きはじめる。絢子さんとは小学校からの同級生なんだとか。「おかず鍋」の洗いやすさがお気に入り。
――「宮﨑製作所」は絢子さんのご実家の家業なんですね。まず、おふたりが一緒に働くまでにどんな経緯があったか教えてください。
絢子さん:大学を卒業した後、東京のPR会社で働いていました。そのなかで、日本のいいものを外に売っていく仕事っていいなって思うようになったんです。そこで貿易のことを勉強しにカナダへ留学しました。その後、「宮﨑製作所」で働きはじめましたね。
――カナダに留学するときから、家業を継ごうと思っていたのでしょうか?
絢子さん:そうですね。東京で働いているときから「宮﨑製作所」で作られている製品は「いいもの」なんだって気づいていて。その魅力を外に伝える架け橋になりたいと思って留学しましたね。
敏樹さん:僕は東京の大学を出てから、地元の企業に就職して働いていました。結婚を機に、「宮﨑製作所」で働きはじめました。今は妻と一緒に商品の企画から販売まで携わっています。
――そもそも、「宮﨑製作所」はどんな会社なのでしょうか。
絢子さん:1960年に創業して、今年で65年を迎える会社です。最初は家の倉庫の横で「ヒメフォーク」をつくりはじめました。80年代には、鍋をつくりはじめるようになって。百貨店で取り扱ってもらえるように、自社ブランドを立ち上げました。
――長くものづくりに携わっているんですね。ここでつくられるお鍋には、どんな特徴が?
絢子さん:「永く使えて、良いものをつくる」をコンセプトにしています。何十年も使える丈夫さはもちろん、親から子、子から孫まで使ってもらえるような、飽きのこないデザインになるように製作しています。
――新たな自社ブランドとしての「宮﨑製作所シリーズ」について詳しく教えてください。
絢子さん:創業65年を迎えるにあたって、会社のリブランディングをすることになったんです。それにあわせて新しくつくったブランドが「宮﨑製作所シリーズ」になります。今回のリブランディングでは、今まで使っていた「Miyaco」というブランドの名前ではなく、社名の「宮﨑製作所」を覚えてもらいたかったんです。
――第1弾として、「ごはん鍋」つくられたのには、どんな経緯が?
絢子さん:「宮﨑製作所」は日本の家庭料理をつくるための道具を製作してきました。なので、「日本の家庭料理をより美味しく、快適につくってもらえる道具」をコンセプトに商品を開発しました。まずは主食からということで、「ごはん鍋」を開発しました。
敏樹さん:炊飯器のある今、鍋でごはんを炊くってこと自体ニッチかなと思ったんです。でも思った以上に反響があって。お鍋でごはんを炊く人は結構多いのかもしれないですね。
――「ごはん鍋」に続き、シリーズ第2弾として「おかず鍋」が発売されましたね。
絢子さん:ごはんの次はおかずかなって。この鍋は私自身がほしいと思っていたものなんです。日本のおかずをより美味しくつくれるだけじゃなくて、今のライフスタイルに合った使い方ができるように開発しました。
――日本のおかず、と言いますと?
敏樹さん:海外でつくられる鍋の多くは、底面にだけ、熱を入りやすくする構造でつくられています。でもその構造でつくられたお鍋って、日本の料理には合わないんですよ。
絢子さん:肉じゃがみたいなおかずって、しっかりを火を通さなきゃいけないですよね。でも、鍋の底面だけ熱が通る海外の鍋を使うと、火の入り方にムラができたり、煮崩れしたいするんです。それを防ぐために「おかず鍋」は全面をチタンやアルミニウム、ステンレスを使った三層構造にしています。
――構造そのものから、日本のおかずに合わせてつくられているんですね。
絢子さん:鍋の内側にチタンを使うことで、おかずの食味を買えることなく調理ができますし、腐蝕しづらいので長くお使いいただけます。
――鍋の見た目からはわからない工夫があるんですね。他にもそういった工夫が?
絢子さん:層のひとつとしてアルミニウムを使っているんですけど、この素材は熱伝導に優れている反面、食洗機には対応していないんです。食洗機でも洗ってもらえるように、アルミニウムを内部に閉じ込めています。
――ふむふむ。
絢子さん:洗いやすさも考えて、「スポット溶接」という技術を取り入れています。洗いやすくなる反面、多くの鍋にされているビス止めよりも、強度がないっていう課題もあって。そこをクリアするために、工夫を重ねました。
――シンプルだけど丸みのあるデザインにも、何か理由があるのでしょうか。
絢子さん:デザインは手づくり感と機械感のいいところを合わせて、機能美を追求したデザインにしました。鍋の底にかけてのカーブは、かき混ぜやすく、かつ洗いやすく設計しています。サイズもコンパクトだから使いやすくて気に入っています。
敏樹さん:表面も1度ペーパーサンドで磨き、さらにミラーの仕上がりにしてから、つや消しの磨きをかけています、この順番にすることで、凹凸のがなくて洗いやすくなるんです。この磨きの工程は手作業で行っていますよ。
――細かいところまで、ひとつひとつ丁寧につくられているんですね。
絢子さん:蓋のつまみも、実はとってもこだわったんです。このカーブになるまでに何度も金型をつくりました。「ガラ研磨」という技術を使って、持ちやすく使いやすい手触りになるように細かく調整しました。
――「おかず鍋」には長く使ってもらうための見えない工夫がいっぱいあるんですね……。ところで、この鍋はどんなふうに使うといいんでしょう。
絢子さん:調理に関しては、普段と同じように使っていただけます。この鍋の大きな特徴としては、鍋ごと冷蔵庫に入れて保存することができるんですよ。ステンレス単層の鍋は、劣化の原因にもなるのでおすすめはできないんです。でも、「おかず鍋」は内側がチタンだから、メーカーとしても安心して「大丈夫ですよ!」ってお伝えしています。
――そのまま保存できるなら、お皿に移し替える手間が省けていいですね。
絢子さん:オール金属だからできることとして、ブレンダーみたいな調理器具も鍋に直接使えますよ。例えばかぼちゃの煮物をつくったとして、2日目も同じものを出すと、子どもは特に飽きちゃうと思うんです。「おかず鍋」ならブレンダーを使って、煮物をスープにアレンジするのも簡単にできますよ。
――アレンジするための手間が省けるんですね。
絢子さん:肉じゃがであれば、鍋の中で具材を潰して、コロッケにするのも簡単ですし。料理のレパートリーが増えるようなアレンジがしやすくなる鍋なんです。HPやInstagramでアレンジレシピの提案をしているので、ぜひ見ていただきたいですね。
敏樹さん:いつも使っているお気に入りの鍋として「おかず鍋」を愛用してもらえるように、アレンジレシピの発信を続けていきたいですね。
――「宮﨑製作所シリーズ」の今後が気になります。
絢子さん:このシリーズを第3弾、4弾と続けていきたいですね。実はもう、次に何を作るかを決めていて。ごはん、おかずときたら、次は「おつゆ」かなって。これまでとは違う、片手で持てる「宮﨑製作所シリーズ」のお鍋を考えています。
――これからが楽しみです!今日はありがとうございました!
宮﨑製作所
燕市小池4852-8
0256-64-2773