織物の産地から生まれた「越後十日町 小嶋屋」のへぎそば。
ソウルフード
2025.07.08
新潟を代表するご当地グルメに十日町発祥の「へぎそば」があります。独特な木の器にひと口大で並べて盛られた美しいビジュアルと、つるっとした食感や喉ごしで人気のお蕎麦です。今回は十日町にある「越後十日町 小嶋屋 和亭(こじまや なごみてい)」にお邪魔して、代表の小林さんからへぎそばやお店についてのお話を聞いてきました。


越後十日町 小嶋屋
小林 均 Hitoshi Kobayashi
1956年十日町市生まれ。大学卒業後は様々な飲食店で経験を積み「株式会社 小嶋屋」に入社、現在は二代目代表取締役社長として会社を継ぐ。趣味は旅行で、学生時代はバックパッカーとして世界各国を旅して回った。
新潟県を代表するグルメ「へぎそば」とは。
——新潟県民にはおなじみの「へぎそば」ですが、まだ知らない県外の方に向けてご紹介をお願いします。
小林さん:「へぎそば」は十日町発祥のお蕎麦で、つなぎに「布海苔(ふのり)」という海藻を使っているので、つるっとした食感や喉ごしを楽しむことができます。おまけに小麦粉を使っていませんので、グルテンフリーな食品でもあります。雪深い十日町地方では、長い冬の農閑期を利用した織物が盛んでした。その織物の洗い張りに使っていた布海苔をつなぎにして「布海苔そば」が生まれたんです。
——地域性から生まれた十日町のソウルフードなんですね。お蕎麦の盛り方も特徴的です。
小林さん:この地域では冠婚や節句などのおめでたい席で、大皿に盛りつけたお蕎麦を大勢で食べる習慣があったんです。その際にひとりひとりが食べやすいよう、美しくひと口大に盛り付けていました。この盛り方を「手振り」と呼んでいます。

——「布海苔そば」ではなく「へぎそば」と呼ばれるようになったのは、どうしてなんですか?
小林さん:布海苔そばを盛り付けるために用いた木の器を「へぎ」と呼びます。木の皮を剥いでつくったことから「剥ぐ」という言葉が「へぐ」に訛ったものと考えられています。その器に盛り付けて食べることから「へぎそば」と呼ばれるようになりました。
——ところで、へぎそばを提供している「小嶋屋」というお店がいくつかありますけど、同じお店なんでしょうか?
小林さん:「小嶋屋」の他に「小嶋屋総本店」と「長岡小嶋屋」があります。同じ創業者の元から分かれて、現在はそれぞれ独立したお店として営業しています。うちは昭和30年に十日町で父が出店したんです。

バックパッカーとして世界を見てきた学生時代。
——小林さんは最初から「小嶋屋」を継ごうと思っていたんですか?
小林さん:そうですね。だから高校、大学時代は自由にバックパッカーとして、アメリカやカナダ、グアテマラなど世界各地を旅して回っていました(笑)。大学時代には80日間かけてヨーロッパをほぼ一周しましたよ。
——そうした旅で得たものは?
小林さん:いろんな国々を見てきたことで、感動する気持ちを培うことができましたし、グローバルなものの見方が身についたと思います。特にダイバーシティというか……様々な価値観を受け入れられるようになりましたね。

——いろいろな国を見てきたなかで、印象に残っていることはありますか?
小林さん:当時の「禁煙」や「シートベルトの着用」「ハンバーガーショップ」といった、日本にはまだなかった、新しい習慣や文化に触れたことは刺激になりました。
——今ではみんな当たり前になっていますけど、その頃はまだ新しかったんですね。大学を卒業してすぐに家業の「小嶋屋」へ入社されたんですか?
小林さん:その前にファミリーレストランやステーキハウスといったいくつかの大きな飲食店で、勉強のために経験を積んできました。特にファミリーレストランは、東京のなかでもいちばん繁盛している店舗に配属してもらったんです。おかげでいろいろ勉強になりましたね。
——その後に「小嶋屋」へ入社したことで感じたことはあったんでしょうか?
小林さん:昔から変わらない旧体制のままだと感じました。そこでひと月かけて徹底的に社内の改革を進めたんです。その後は多くの人に十日町のへぎそばを知っていただきたいという思いで、新潟県各地への店舗展開を進めてきました。現在は十日町をはじめ、新潟、長岡、湯沢、上越に6店舗を展開しています。

「もの」を売るのではなく「思い」を売る。
——小林さんがお店を営業する上で、大切にしていることって何ですか?
小林さん:美味しいことは当たり前ですから、その上で安心してお召し上がりいただける料理を提供するよう心掛けています。衛生管理の徹底はもちろんのこと、使用する素材には厳選した国産素材を使っています。
——例えばどんな素材を使っているんでしょうか?
小林さん:蕎麦粉は長野県産や北海道産を100%使い、つなぎには青森県産の布海苔を使っています。出汁をとる鰹節は高知県産や鹿児島県枕崎産、昆布は北海道利尻産を使っているんです。素材の生産地には直接足を運んで、自分で確かめるようにしています。
——他にもこだわっていることがあったら教えてください。
小林さん:店舗内外観のイメージやサービスも含めて、美味しく召し上がっていただくための雰囲気づくりでしょうか。特にマニュアルに頼らない、心を込めたサービスを心掛けるようにしています。

——なるほど。
小林さん:当店のへぎそばを喜んで食べていただけることが、何よりも幸せですし、感動することも多いんです。その感動をさらにどう実現していくのかを考えながら営業しています。「もの」を売るのではなく「思い」を売ることが、お店づくりなのだと思うんですよ。自分のお店に愛情があれば、いつでもピカピカになっているはずです。
——今後はどんなことに取り組んでいきたいと思っていますか?
小林さん:十日町から生まれたへぎそばを広く知っていただき、お届けしていきたいですね。まずはへぎそばを通じて地域貢献していきたいと考えています。そこで準備しているのが、子ども達やシニアの皆さんに向けた「そばづくり教室」なんです。来年あたりからスタートしたいと思っています。また海外でそば打ちの実演を交えながらへぎそばを紹介していきたいですね。台湾の物産展でおこなってみたところ、非常に喜んでいただけました。
——次世代や海外の人達にもへぎそばの魅力が伝わるといいですね。
小林さん:売り上げに流されることなく、へぎそば専門店として暖簾を守りながら、風格ある店を目指していきたいですね。

越後十日町 小嶋屋 和亭
十日町市下島寅乙407-1
025-757-1513
11:30-17:00/11:30-17:00
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