天気のいい朝に美味しいパンを食べると、いつもよりちょっといい日を過ごせる気がします。今回は柏崎市にある「natural bakery しましま柏崎」さんにやってきました。実はこちら、「アオキ住建」という建築資材をメインに扱う会社がつくったパン屋さんなんです。「アオキ住建」の青木さんと、「natural bakery しましま柏崎」の渾川さんに、お店をつくったきっかけや、パンづくりに対するこだわりなど、いろいろ聞いてきました。
natural bakery しましま柏崎
青木 一憲 Kazunori Aoki
(写真左)1978年柏崎市出身。「株式会社アオキ住建」代表取締役。「アオキ住建」に入社後、建材事業部や営業部などで経験を積む。2018年に「natural bakery しましま上越」を、翌年には「natural bakery しましま柏崎」をオープンする。
natural bakery しましま柏崎
渾川 大輔 Daisuke Nigorikawa
(写真右)1999年上越市出身。「natural bakery しましま柏崎」店長。高校生のころからパン屋さんで働き、卒業後はパン屋さんに就職し、経験を積む。5年前から「natural bakery しましま柏崎」で働きはじめる。
――このお店は「アオキ住建」さんが運営されているパン屋さんなんですね。どうして、建築資材の会社がパン屋さんを?
青木さん:目的はふたつあります。ひとつは、家を建ててからもお付き合いを続けていくため。もうひとつは、食文化を通じて「アオキ住建」が地域に根ざしていくためです。家を建てようと考えている世代よりも下の世代から、この会社のことを知ってもらいたかったんです。
――ラーメン屋さんとか、カフェという選択肢もあったなか、なぜパンを選んだのでしょう。
青木さん:とことん素材にこだわりたかったんです。「アオキ住建」は壁や床をつくるときに使う建材を扱っていて、私たちの扱う建材は赤ちゃんや子どもにも優しい天然素材で仕上げています。そのこだわりを、いちばん身近に感じていただけるのはパンじゃないかな、と思ったんです。
――なるほど、日々の食卓にパンは欠かせませんからね。それにしても、新たに飲食の事業をはじめるのは大変だったのではないでしょうか……。
青木さん:そうですね、今振り返るとふたつの苦労がありました。まず、お客さまに美味しいと思ってもらえるようなパンを、発案者の私がつくれるようになることです。最初に自分でやってみることが大事だと思って、一週間、岡山のパン屋さんに行ってパンの作り方を教えてもらいました。
――岡山まで! フットワークの軽さに驚きます。
青木さん:その甲斐あって、普段は料理できない私でも、5日間で無添加生地の美味しいパンがつくれるようになったんです。普段からパンをつくっている人と一緒にやれば、もっと良いものがつくれると思うことができましたね。
――自分でやってみたからこそ、得られたものがあったんですね。もうひとつの苦労は何だったのでしょうか。
青木さん:一定のクオリティのパンを、誰でもつくれるようになることですね。パン職人さんはご自身の勘と経験から、発酵の具合や焼き加減を決めていることが多いと、岡山にいるときに思ったんです。でも、「natural bakery しましま」では、誰がつくっても一定のクオリティを保てるようなパンづくりをしたくて。その方法を考えるのに苦労しましたね。
――その結果、どんな方法にたどり着いたんでしょう。
青木さん:パンを作る過程をすべて数字で管理することにしました。何センチ膨らめば十分発酵できていて、何分焼けばちょうどいいのか、みたいに。これは建築の考え方が大きく影響していますね。建築の再現性を、パンにも活かそうと思ったわけです。もちろん、職人さんの勘と経験は尊敬していますが、誰でもつくれるようにするには、この方法がよかったんです。
渾川さん:数字で管理しているおかげで、新しく入ってくるスタッフに教えやすいんです。僕自身、このお店で働きはじめたときも、とてもわかりやすいと感じましたね。
――渾川さんは、このお店の店長さんなんですね。ここで働きたいと思った理由を教えてください。
渾川さん:もともとずっとパン屋さんで働いていたんです。学校には通わず、独学でパンを学んでいました。あるとき「natural bakery しましま」の求人やHPを見たときに、自然素材を使うこと、身体に優しいパンをつくっていることに共感したんです。それでこのお店で働くことにしました。
――「natural bakery しましま」の、「しましま」の由来を教えてください。
青木さん:名前にも建築が関わっています。建築は規則正しく、きれいにつくり上げていくんです。例えば、床は法則に従って床材を規則正しく並べていきます。その規則正しさをボーダーと見立てたんです。そこから、お子さまからご年配の方まで愛着を持っていただけるよう、ひらがなで「しましま」という名前にしました。
――お店のロゴのパンダも、ボーダーが入っていますね。
青木さん:「『しましま』のパン」から、「しましまのパンダ」になりました。ちょっとしたダジャレを入れてみたんです(笑)
――可愛らしいです(笑)。このお店はどんなコンセプトでつくったのでしょうか。
青木さん:「natural bakery しましま」は上越と柏崎にお店があるのですが、ここ、柏崎は「アオキ住建」の6番目の倉庫をフルリノベーションしたお店になります。地面はコンクリートをむき出しにして、秘密基地みたいな雰囲気でお店をつくりました。店内は、女性の方にも入ってもらいやすいように、木材を使って温かみを感じられるようにしています。
――こちらでは、どんなパンが楽しめるのでしょうか。
渾川さん:国産の小麦とバターを使った、身体に優しい無添加生地のパンをご用意しています。毎日40種類ほどのパンが並びますね。1ヶ月ごとや曜日ごとにラインナップを変えているので、毎日来ても楽しんでいただけると思います。
――曜日ごとで違うパンが楽しめるんですね。これだけ数のあるメニュー、どうやって考えているんですか?
渾川さん:ここのメニューはスタッフみんなで考えていますね。マニュアルをつくって、誰でもメニュー開発ができるようにしています。店頭に並ぶ商品の中には、僕が考えた商品もありますが、パートさんが考えた商品もあるんです。
――みんなができる、というのはパンづくりの考え方と同じなんですね。
渾川さん:自分の考えた商品をお客さまが買ってくださるのを見ると、考えた本人がいちばん嬉しいと思うんです。ただつくるだけじゃなくて、お客さまの反応が目の前で観れて、さらにお客さまに応援してもらえるのって、すごくやりがいにつながると思うんですよ。
青木さん:メニューの開発もそうですけど、イベントの企画もみんなで考えたりしているんですよ。過去には「メガ盛り」や、地域の子どもたちにあったら嬉しいパンのアイデアを考えてもらう企画もやりました。
――このお店を、みんなでつくっているんですね。数あるメニューの中で、渾川さんのオススメのパンを教えてください。
渾川さん:一番人気の「あん塩バターロール」です。はじっこはカリっと、中はバターがじゅわっと広がるのがたまらないですね。あんこは柏崎のものを使用していて、甘すぎずさっぱりしているんです。何度も試作を繰り返した自信作です。
――これから「natural bakery しましま柏崎」をどんなお店にしていきたいですか?
渾川さん:代表(青木さん)のフットワークの軽さを見習って、新しい挑戦をしていきたいですね。パンはもちろん、スイーツやドリンクも新しいものをつくっていって、毎日来ても楽しんでもらえるようなお店にしていきたいです。ちょっと大きいことを言うと、この地域の方と一緒に成長できるお店になったらいいなとも思いますね。
――地域といっしょに成長できるお店、素敵です。おふたりのこれからの目標を教えてください。
渾川さん:このご時世でも、スタッフが物心ともに豊かに働ける環境をつくりたいんです。スタッフが働きやすい環境を整えることと、お客さまに喜んでもらえる商品をつくり続けることを両立していきたくて、代表と一緒に頑張っています。
青木さん:具体的には設備投資をしていこう、という話をしていますね。メニュー開発やイベントの企画は創意工夫を凝らしているのに対して、ずっと同じ機械でつくり続けていることに気づいたんです。新しい機械に替えたら、品質を保ちながらスタッフの負担を減らすことができて、スタッフが働きやすい環境になっていくと思うんです。
――会社の代表である青木さんと、実際に現場で働いている渾川さんが一緒になって、お店をつくっているんですね。
青木さん:私にできるのはお店の理念を伝えることと、お金の工面くらいかなと思っていて。現場の目線からアイデアを出してもらえれば、自分事にもなるし、気持ちの入り方も違ってくると思うんです。これからも、働いているみんなに一緒に考えてもらって、お店をつくっていきたいですね。
natural bakery しましま柏崎
柏崎市松美1-12-25
11:00-16:00
水曜定休