手に持てば、気分が上がる鞄を。
海辺のまちの鞄屋さん、「ほんくら」。
ものづくり
2026.02.02
ふと、SNSのタイムラインに流れてきた、丸みのあるクラシカルな鞄。思わず一目惚れしサイトをのぞいてみると、胎内市でつくられた鞄だったのです。「ほんくら」という名前で鞄を制作している本間さんに、鞄づくりをはじめたきっかけや、ものづくりへの向き合い方など、いろいろお話を聞いてきました。
右/本間 和豊
Kazutoyo Honma(ほんくら)
1967年胎内市出身。高校卒業後、東京の専門学校でアニメーションを学ぶ。その後、印刷関係の仕事に長く携わる傍ら、趣味として革を使った小物の制作をはじめる。2023年より地元の胎内市で暮らしはじめ、「ほんくら」として鞄や革小物の制作・販売を行う。趣味はバイクで「モトジムカーナ」というバイクの競技を楽しんでいるそう。
左/本間 佳子
Yoshiko Honma(ほんくら)
1968年埼玉県出身。高校卒業後、和豊さんと同じ専門学校に入学しアニメーションを学ぶ。卒業後は会社員として受付や事務など多くの職を経験。その傍ら、紐編みやマクラメなどで作品をつくり、フリマイベントなどで販売。2023年より和豊さんとともに「ほんくら」として活動をはじめる。ものづくりが大好きで、自宅の一部をリフォームをしてしまうほど。
ものづくりが好きな夫婦が、
胎内で鞄づくりをはじめるまで。
――おふたりは高校を卒業後、同じ専門学校でアニメーションを学ばれたんですね。
和豊さん:もともとアニメが好きで、何かアニメに関わる仕事がしたかったんです。でも当時、新潟にはアニメを学べる専門学校がなくて。それで上京することを決めました。でも勉強はしたものの、卒業後は東京で印刷関係の仕事を長くやっていました。ゲームセンターで仕事をしていたこともありましたね。
佳子さん:私も同じ専門学校に入ってアニメのことを勉強しました。そこで旦那さんとは出会いましたね。卒業後は、アニメの会社に入ったり、全然違う会社で受付や事務などいろんな仕事を経験しました。24の歳のときに結婚して子どもが生まれてからは、子育てに専念していました。
――ものづくりはその当時からはじめていたんだとか。
佳子さん:もともと、ものづくりが好きだったのもあって、趣味で紐編みの小物をよくつくっていました。2011年くらいから、フリマイベントで作品の販売をはじめていたと思います。
和豊さん:僕が革小物をつくりはじめたのは、2009年くらいだったと思います。新しい財布がほしかったんだけど、財布の値段にびっくりして。「じゃあ、自分でつくってみようかな」と思ったのがきっかけです。その頃にはもうインターネットでいろんな情報を知ることができたので、調べながらつくってましたね。
――ということは、独学で革小物をつくり始めたんですね。
和豊さん:僕は、ネットを見て人のつくり方を見てやってみるのは、独学ではないと思っているんですけどね(笑)。その後も仕事をしながら、革小物をつくって、たまに奥さんと一緒にフリマに出て販売もしていました。
――その後、2023年に胎内市で暮らしはじめた、と。
和豊さん:それまでもお盆とお正月は実家のある胎内に帰ってきてはいたんですけど、3年前くらいに子どもがひとり立ちをして。ちょうどその頃、奥さんの母親が施設に入ることになったんです。当時住んでいた埼玉の家を空けるわけにもいかないし、どうしよっかなって……。
佳子さん:そしたら子どもが埼玉の家に住んでくれることになったんです。それで旦那さんと一緒に胎内で暮らしはじめました。
――ナイスタイミング、というべきでしょうか。「ほんくら」をはじめたのには、どんな経緯があったのでしょう。
和豊さん:こっちに戻ってきたときには、もうあと数年で定年を迎える年齢になっていて。仕事を探しては見たけどしっくりこなかったんです。奥さんともいろいろ相談して、鞄をつくってなんとかやっていこうか、という話になったんです。そこから「ほんくら」としての活動をスタートさせました。

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巾着から、鞄に。
同じクオリティで、つくり続ける。
――和豊さんは財布から革小物の制作をはじめたんですよね。そこから、鞄をつくりはじめたのは?
和豊さん:財布をつくるための革を買うとき、B級の革がたくさん入った福袋のようなものを買ったんです。その中には、財布には使わないような柔らかい革も入っていて。「これをどうしようか……」と悩んでいたところ、奥さんから巾着袋のつくり方を教えてもらったんです。
――最初はシンプルな袋物からはじめたんですね。
和豊さん:巾着をつくってみて、平面から立体になるのがすごく面白かったんです。他の鞄をつくってみようといろいろ調べていたときにダレスバッグという、口金式の鞄を見つけました。そのかたちに一目惚れしちゃって、僕の性格上、「欲しい」よりも「つくりたい」気持ちが勝っちゃって(笑)。そこから「ダレスバッグ」のつくり方を調べて、制作をはじめました。今はダレスバッグのほかに、サッチェルバッグもつくっています。
――このバッグをイチからつくるのは、一筋縄ではいかなかったのでは。
和豊さん:いい時代になったな、と思うんですが、インターネットを見れば大体情報があって、8割はなんとかなったんです。もちろん、最初は上手くいかなくて苦労したこともあったんですけど、諦めが悪くて(笑)。「できるようになるまでやればいいじゃん」って、試行錯誤を繰り返していましたね。今はもうできないけど、鞄をつくりはじめた頃は「時間がないなら、寝なきゃいいじゃん」ってノリでしたね(笑)
――つくられた鞄の中には、革に特徴的なグラデーションがあるものもあります。
和豊さん:もとはナチュラルカラーの無地の革を染めてグラデーションをつくったものを使って鞄にしたものですね。特別なことをやっている、というよりは「こう染めたらかっこよくなるかも」って試してみたのがきっかけでしたね。僕のお気に入りは、ぼかし染めをした赤い鞄です。
――同じ模様がひとつもない、唯一無二な鞄ってロマンを感じます。
和豊さん:あえてB級品の革を使っているのも、結果的にこの鞄が一点ものになっている要素のひとつかもしれませんね。B級品の革を使うことで、値段を安くできるのもありますが、もう一度同じ素材でつくれる保証がないことが鞄に価値を持たせてくれているのかなって思っています。
――おふたりが制作の中で大切にしていることは?
佳子さん:私は革を切った端っこの「コバ」というところの処理をしているんですけど、この処理を丁寧にすることを心がけていますね。革が切られて、繊維が立った側面を艶が出るまで磨くので、簡単ではないんですけど、綺麗にできたときはものすごく嬉しいです。
和豊さん:僕は、最初から最後まで同じクオリティでつくり続けること、ですね。革小物をつくりはじめたときは、最初は「頑張ろう」って意気込むけど、途中でつまずくとだんだんモチベーションが下がって、最後は勢いで終わらせてしまう、みたいなことがあって。お客さまからお金をもらうようになってからは、ミスなく同じクオリティでつくり終えることをとても大事にしています。この気持ちになってから、品物がよくなっていったなって自分でも感じています。


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鞄を持つところを想像して、
「いいな」と思ってもらいたい。
――新潟で鞄づくりをしてみて、いかがですか?
和豊さん:正直、不便は不便なんですけど(笑)、この時代だからUターンして鞄づくりができていると感じています。基本手作業で制作していますけど、そんなアナログなものもインターネットがあるおかげで、オンラインで販売できているわけですし。場所を問わずに活動できるようになって、いい時代になってくれたなって。
――関東に長く住まわれていた本間さんだからこそ、見えたことかもしれません。「ほんくら」として、これからの目標を教えてください。
和豊さん:とにかく継続すること。経済的な面も含めて、鞄をつくり続けていける努力はしていきたいと思っています。その中でインターネットでもリアルでも、もっといろんな人に知ってもらえるようにしていきたいですね。
佳子さん:鞄は日光にも湿気にも弱いので、今までイベントで販売することは多くなかったんですが、これからはその機会をもう少し増やせたらいいなって思っています。
――おふたりからどんな鞄がつくられるか、これから楽しみです!
和豊さん:この鞄を持って出かけたら気分が上がってもらえるような、そんな鞄を目指してこれからもつくっていこうと思っています。オンラインで鞄を見て、自分が持っているところを想像して「いいな」って思ってもらえたら嬉しいですね。


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