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「HATSUME」のエッセンシャルオイルで、自宅にいながら森林浴を。

食品科学の博士が開発・製造。県産樹木から芳香成分を抽出。

そろそろ梅雨も一段落し、本来であれば夏に向けて様々な野外レジャーに繰り出したいところですが、新型コロナの動向がまだ何ともいえない状況で二の足を踏み、ストレスを溜め込んでいる方も少なくないと思います。そんな中、自宅にいながらまるで森林浴をしたかのようにリフレッシュできるのが、「HATSUME」(はつめ)というブランドが展開する、県北産の樹木から香り成分を抽出した天然由来のエッセンシャルオイル。ほんの少量で、あたかも木漏れ日の中で木々のさえずりを聞いているかのように清々しい気分を味わえます。同ブランドの技術担当で開発者の富樫さんに話を聞いてきました。

 

 

HATSUME

富樫 万理 Mari Togashi

1974年兵庫県尼崎市生まれ。博士(水産科学)。光産業創成大学院大学(静岡県浜松市)准教授時代の2010年、学内ベンチャーで天然由来の香料を研究開発する「サクラ・ラボラトリー」を創業。結婚を機に夫の地元・村上市に移住し、2014年にデザイナーの金子敦子とともにメイドイン新潟にこだわった精油・雑貨ブランド「HATSUME(ハツメ)」を立ち上げ県北産樹木のエッセンシャルオイルを展開している。元々生物が好きで研究者の道に進んだだけに、母となった現在でも息子たちの虫取りや生き物の飼育には大いに協力するとか。

 

原始的?な手法で0.2%を抽出。森林サイクル循環の一翼も。

――本日はよろしくお願いします。早速ですがこのオイル、どうやって作っているんですか?

富樫さん:割と単純な手法ですよ。材料の木や葉を寸胴で蒸し、発生した水蒸気を冷却装置で冷やすと、水蒸気に溶け込んで出て来た芳香成分が水と油(精油)に分離されて得られます。そのうちの油の方が、香りが濃縮されたエッセンシャルオイル(精油)になります。

 

――意外とシンプルな原理なんですね。

富樫さん:そうですね。ただ、採れる量は非常に少ないです。樹木の場合、材料5kgを使って採れるオイルは10mlほど、0.2%に過ぎません。

 

――材料はどのように調達しているのですか?

富樫さん:地元の森林組合や林業をやっている方から、主に枝打ちで出る枝をいただきます。要らない部分なので、「取りに来てくれるんならいくらでも持っていって」と言われますね。喜んで取りに伺います(笑)。

 

――森林サイクルの循環にも貢献しているんですね。

富樫さん:微々たるものですけどね(苦笑)。ブランドとしては県産のモノづくりにこだわっていますが、この精油は特に県内でも森林資源が豊富な村上、関川、阿賀産のものを原料にしています。ラベルも、どこの木を使ったものなのか分かるようにデザインしています。

 

「副産物」の香りを商品化。学内ベンチャーから出会いを経て新潟ブランドへ。

――そもそも、どうして木の香りを商品化しようと思ったのでしょう?

富樫さん:ちょっと遡るのですが、私はもともと食品科学の研究者で、浜松の大学で准教授をしていました。そこでバイオエタノールの研究開発に携っていたとき、植物からエタノールを生成する際にいわば副産物として出る香り成分を別に活かせないかと考えたのが最初です。それで学内ベンチャーで「サクラ・ラボラトリー」を創業し、浜松ならではのミカンや天竜杉などの香りの商品化に向け動いていました。

 

――それがなぜ新潟に?

富樫さん:浜松の大学で知り合った夫の地元が村上だったんです。結婚とともにこちらへ移住し、出産と子育てで「サクラ・ラボラトリー」もいわば開店休業状態だったんですけど、せっかく培ってきた技術をこちらでも活かせればいいなとは思っていて。特に、村上は森林資源が豊富なので、ぜひそこで活かしたい、と。それで生活が少し落ち着いたら、NICO(にいがた産業創造機構)主催の起業道場プログラムに参加しました。そこでデザイナーの金子敦子さんと出会い、意気投合して共同ブランドの立ち上げに至ります。

 

――「HATSUME」という名称の由来は?

富樫さん:新潟弁で器用や利口を表す「はつめ」にあやかっています。自分たちもそうありたい、という願いを込めて。

 

メイドイン新潟を大切に。地元のユリで「アブソリュート」も開発中。

――ブランドでは富樫さんの手掛けるエッセンシャルオイルのほかに、どんな商品があるのですか?

富樫さん:ブランドのテーマは「大切に、したいもの。」で、メイドイン新潟にこだわっています。オイル以外では、県内各地の昔ながらの織物や工芸品を金子さんのデザインでアップデートした商品が多いですね。具体的には、上越市のバテンレースと小千谷縮によるミニポーチ、栃尾の手まりのヘアゴムやペンダント、虫除けにもなるクスノキのアロマブロック、十日町の絹織物を内側にあしらったがまぐちポーチ、亀田縞の手提げバッグなどです。

 

 

――オイルにはどんな種類が?

富樫さん:ラインナップは越後杉、檜、黒文字(クロモジ)、匂辛夷(ニオイコブシ)のほか、現在は月桂樹も開発中です。関川村産の黒文字を原料にしたものは、「第1回香り-1グランプリ」で優秀賞もいただきました。オイルそのもののほか、水に溶かしたスプレータイプも販売しています。

 

――オイルはどんなふうに使えばいいでしょう?

富樫さん:自由に使ってもらえればと思いますが、地元を離れた方にこの香りで故郷を思い出してもらえると嬉しいですね。また今般の新型コロナ禍で何かとストレスの多い中、森の香りでリフレッシュしてもらえればと思います。もちろん「新潟の香り」、「村上の香り」として、お土産や贈り物に使っていただいてもいいですし。

 

――今後ほかに原料として考えているものはありますか?

富樫さん:人づてで村上のユリ農家さんからお話をいただいて、現在はユリの香りを抽出しています。ユリをはじめお花は冒頭で挙げた水蒸気蒸留法による抽出ではダメで、花びらを油脂に漬けて香りを移す「アンフルラージュ」という手法で抽出します。そうやって抽出した香りをエタノールに移して凝縮させ、さらに温めてエタノールだけを蒸発させると、「アブソリュート」という高級な香料が出来上がります。香水でいうとラストノートを担う、非常に豊潤な香りになります。これを商品化しようと取り組んでいるところです。

 

――今回のコロナでダメージを受けている花農家さんへの手助けにもなりそうですね。本日はありがとうございました。

 

 

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