ノッティング織の魅力を阿賀野市から発信する「結-ITO KICHI-」。
ものづくり
2024.07.16
岡山県に伝わる「倉敷ノッティング」という民芸品があります。それにインスパイアされ、「ノッティング織」の技法を使った椅子敷きを作っているのが「結-ITO KICHI-」の田村さんです。アトリエにもなっているご自宅にお邪魔し、「ノッティング織」を覚えるまでの苦労や魅力を聞いてきました。


結-ITO KICHI-
田村 千恵 Chie Tamura
1984年阿賀野市(旧笹神村)生まれ。東京の専門学校を卒業後、新潟に戻ってホテルや商社、メーカーで働き、2019年より「結-ITO KICHI-」として織物作家としての活動をはじめる。織物に限らずいろいろなものづくりに興味を持っている。
一枚の写真がきっかけで、ノッティング織をはじめる。
——田村さんが作っている「ノッティング織」って、どういうものなんですか?
田村さん:元は岡山県倉敷市に伝わる「倉敷ノッティング」という民芸品なんです。織り機を使って木綿やウールを結んでいき、毛足が長い40cm四方の敷物を織り上げます。椅子にぴったり合う大きさでクッション性のある厚さなので、椅子敷きとして長く愛されてきました。オールシーズン使える上に丈夫で長持ちするんですよ。
——へぇ〜。どうしてそのノッティング織をはじめたんでしょうか?
田村さん:たまたまインターネットで見つけた写真がきっかけでした。それは小さな織り機に作りかけの織物がかかっている写真で、調べてみたら「倉敷ノッティング」という民芸品だとわかったんです。それまでいろんなハンドメイドをやってきたので、だいたいのものは作れる自信があったんですけど、これを見たときは自分には作れないと感じたんですよ。だから、どうしても作れるようになりたいって思いました。

——これまでもハンドメイドでいろんなものを作ってきたんですね。
田村さん:小学生の頃、茶の間で編み物をしていたおばあちゃんの影響で、編み物をはじめたのがきっかけでした。おばあちゃんは編み物の道具は貸してくれたんですけど、編み方までは教えてくれなかったので、おばあちゃんが編んでいるのを横目で見ながら覚えたんです。
——まるで職人の世界ですね(笑)
田村さん:でも最後の糸始末だけはわからなかったので、編みかけの編み物が未完成のまま放置されていました(笑)。それからというもの、いろいろなハンドメイドを楽しんできましたけど、集中してコツコツ作るビーズや刺繍、マクラメ編みのような細かい作業が好きでしたね。作ることが好きなので完成品はお友達にプレゼントしていました。喜んでもらえるのが嬉しかったんですよね。

——ところでノッティング織の作り方はどこで勉強したんですか?
田村さん:岡山に住み込みで勉強させてもらえる学校があるんですけど、仕事や家庭があるので入学を断念したんです。でも、どうしても諦めることができなかったので、ノッティング織の作品を購入して研究したり、織り機を自作したりして独学で覚えようとしました。
——すごい執念ですね。でも、ひとりで勉強するのは限界があるんじゃないでしょうか……。
田村さん:そんなときに、ノッティング織に取り組んでいる作家さんとInstagramを通して知り合うことができて。いろいろなアドバイスをいただいたり道具を譲っていただいたりしたおかげで、なんとか人に喜んでいただけるクオリティの作品が作れるようになったんです。私にとってはノッティング織の師匠と言ってもいい存在ですね。本当に感謝しています。

イベントやSNSを通じて、ノッティング織の魅力を伝えたい。
——田村さんの作品は、どんなところで手に入れることができるんですか?
田村さん:最初はフリマアプリを使って作品を販売していたんですけど、なかなか手芸品として評価してもらえないことに違和感を感じたので、今はイベント出店やInstagramでの販売をメインにしています。
——イベントのように、実物を見てもらえたほうが魅力が伝わりそうですね。
田村さん:作品を販売したいとか知名度を上げたいとかではなく、ノッティング織の素晴らしさや価値を多くの人に知ってもらいたいんです。自分の好きなものを共有する人を増やしたいというか……。

——イベントに出店した際の反響はいかがですか?
田村さん:イベントに織り機を持参して織るところをデモンストレーションしているので、興味を持ってくれる人は多いですね。ボタンをクリックするだけのフリマアプリとは違って、お客様と顔を合わせてお話しできるのが大きな魅力だと思います。
——作家さんの思いも伝えやすいんでしょうね。
田村さん:Instagramでは作品の紹介だけじゃなくて、子どもと喧嘩したことや仕事で疲れたことなんかの日常的な投稿もしているんですよ。それを見ていることで親近感を覚えて、イベントまで買いに来てくれる人も多くて、初出店のイベントで「あなたが作ったものだから欲しいと思った」と言ってもらったときは涙が出ました。

——作品のクオリティだけではなく、人柄も付加価値になるんですね。ちなみに、今まではどんなイベントに出店してきたんですか?
田村さん:新潟市産業振興センターで開催された「手しごとマーケット」や東京ビッグサイトで開催された「デザインフェスタ」に出店しました。大阪の百貨店から「匠の手しごとフェア」という催事にお声がけいただいたときは、引き受ける自信がなかったので断ろうと思ったんです。でも、断ってしまったら死ぬときに後悔しそうだったのでお引き受けしました(笑)。おかげさまでいい経験をさせていただき、出店して良かったと思っています。
——百貨店からのオファーなんてすごいじゃないですか。
田村さん:もっと県外のイベントに参加したいという気持ちはあるんですけど、織り機を持参するのが大変なので断念しているんです。発送するにしても分解しなければなりませんし、壊れたらどうしようとヒヤヒヤしなければならないので……。

——ノッティング織の魅力って、どんなところでしょうか?
田村さん:糸が束になって、それが敷物に姿を変えるんですけど、機械を使わず自分の手で生み出せることが自分でも信じられないんですよ。ハンドメイドを超えて手工芸の域に達していると思います。難しいんですけど、その分完成した作品への愛着は大きいですね。こんなに没頭できるものは初めてです。
——なるほど。では、これからやってみたいことがあったら教えてください。
田村さん:お客様からワークショップを開いてほしいという声が多く寄せられているんですけど、私は会社員のかたわら作家活動をしているので対応することが難しいんです。でも、いつか実現できたらいいなとは思っていますね。そして、多くの人に「ノッティング織」の素晴らしさが伝わればいいなと思っています。

結-ITO KICHI-
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