僕らの工場。#2 誠実な職人たちの靴工場「コージ製靴」

製造直売会が人気の靴工場「株式会社コージ製靴」。

新潟西区鳥原、高速バス乗り場「鳥原」から新幹線の高架橋に向けて歩くこと数百メートル。高架橋の下に今回ご紹介する「株式会社コージ製靴」の靴工場があります。こちらの会社、実は靴好きな人なら「知る人ぞ知る」ちょっと特殊な靴のメーカー。その理由は、工場なのに下請けやOEMを一切受けず、自社工場での年数回の販売会や全国の百貨店での催事でしか商品を買えないという希少性にあります。活動の方針について、職人さんの高度な技術について、幌村取締役工場長と内山営業マネージャーにお話をうかがいました。

 

株式会社コージ製靴

幌村勝 Masaru Horomura

取締役工場長。千葉本社に約15年前に入社後、「仕事は見て覚えろ」的な職人気質の現場で靴作りの多くの技術を習得。ある日突然、社長から「新潟の工場」を任せると言われ、新潟工場の工場長として現在に至る。

 

株式会社コージ製靴

内山春樹 Haruki Uchiyama

営業マネージャー。5年前に入社。靴職人として活動するほか、全国の百貨店などでの販売会の営業を兼務。お客様の声を拾いながら工場で制作する靴のデザインに反映させている。

 

 

年間約30万足のOEM工場から、突然の方針転換

千葉県に本社を構える「株式会社コージ製靴」は、日本で有数の本格革靴製造技術を提供する工場として平成元年に創業しました。当時はバリバリのOEM主体の革靴工場で、有名メーカー各社の革靴を月間30万足も製造。技術としても、日本の革靴工場としては希少な本格革靴製法「グッドイヤーウェルテッド製法」や「マッケイ製法」をはじめ、染め仕上げ、パティーヌ仕上げなどができる高度な腕を持つ職人さんを多く抱えていました。

 

しかし、その状況は海外との競争で一転します。製造単価の安い海外の工場に多くのメーカーが生産拠点を変更しはじめると、いくら技術力が高くても価格競争では歯が立ちません。安い請負仕事、上がらない従業員の賃金、職人たちの離職と、工場はピンチに立たされてしまいます。

 

そこで社長は一大決心をします。8年前のことでした。OEMをほとんどやめて、それと同等の高品質な靴を、良心的な価格で地域の住民に提供すること(製造直売会)をはじめたのです。

 

 

不安からはじまった製造直売会。心を動かしたのは、お客さんの感謝の言葉。

幌村工場長は当時を振り返ります。「正直、社長が決断したときに不安が大きかったのを覚えています。私たち職人は、あくまで職人としてしかやってこなかったので、人と接することへの不安がまずあったし、そもそもこんな工場に人が買いにくるのかな…と」

 

しかし、やると決めたからにはやれるだけやってみようと考え直した幌村さん。最初にやったことは近隣への折込チラシの配布でした。しかし何万部もチラシを刷ったのに、最初の結果は散々なもので、来場者はたったの数十人。「それでも、すごく嬉しかった」と幌村さんは言います。「どう接客すればよいかとかずいぶん悩みましたが、結局は、職人としてその知識やメンテナンス方法、お客さんの要望をその場で聞きいて丁寧に対処することでした。その場で染め上げなどのサービスを行ったり。そしたら、購入していただいたお客さんから『ありがとうございました』って言われたんです。なんだかそれがまた嬉しくて。普通のショップではこちらが『ありがとうございました』って言うべき立場なのに。」それからは、口コミでお客さんがお客さんを呼び、今では新潟県内に約15,000人、千葉にも約15,000人の会員を抱えます。

 

 

お客さんに喜んでもらうために技術を磨いている。それがスタイル。

ーー直売会では具体的にはどういったサービスをしているんですか?

幌村さん:基本的には既製品(コージ製靴のオリジナル商品)を販売しているんですが、例えば、この形の靴が気に入ったお客様がいたとして、でも色がもっと濃いものを希望しているとなったとき、別料金にはなりますが、少し待っていてもらえればその場で染め直しをしたりしています。その他にもビンテージ風の色合い(パティーヌ仕上げ)が出したいとかの要望にも対応しています。

 

ーーそれって、ほぼオーダーメイドに近いですよね。

幌村さん:一般的にはそうですね。染め上げた商品はオーダーメイドと言えると思います。なので、靴好きの人には本当に喜んでいただいて、もう他では買わないと毎回販売会に足を運んでくださるリピーターさんが非常に多いです。

 

ーーそうなってくると、お値段って高かったりしますよね?

幌村さん:(笑)むしろ破格だと思います。私たちのコンセプトが「高品質だけど良心的な価格で」というところからはじまったので、今でもそれはブレない部分です。例えば、市場価格でいえば「グッドイヤーウェルテッド製法」で作った靴なんかは当時OEMでやっていたメーカーさんの値付けでは5万円~って感じですが、ここで販売しているものは1万5千円~が相場になります。また、別途、染め上げ依頼もモノによりますけど数千円程度でできます。よく人から「技術の安売りをしている」と言われるのですが、私たちはそう思っていなくて。結局、お客様を喜ばせるために職人は技術を磨いているので、私たちからしたら簡単にできる「染め上げ」や手直しに付加価値をつけるのは違うと思うんですよね。お客様が喜ぶ姿をみて、やっていて良かったなと思えますし、このスタイルは変えずにやっていきたいと考えています。

 

 

お客さんの要望を直接聞いて、貪欲に技術を磨く。新しい靴を作る。

ーー内山さんは靴職人でありながら、営業マネージャーとして百貨店販売も手がけていらっしゃいますよね。

内山さん:私は入社して5年になります。革靴職人としても仕事をしていますが、主に担当しているのは百貨店などをまわっての販売会開催や取扱交渉ですね。

 

ーー工場での直売はやはりそういうお仕事とはちょっと違うものですか?

内山さん:そうですね、工場での直売会は、特に来場したお客様の声を大切にしています。お客様の要望…例えば「こんな形の靴が欲しい」といったリクエストを聞き取って商品に反映したりしています。私たちも気づかなかったアイディアや面白さがあるので、これはとても大切なことなんですよ。その声を商品に反映させ、また来場者様に喜んでもらう。そのサイクルは、すごくやり甲斐を感じますね。

 

ーーちなみに今後の新しい靴のアイディアとかあるのでしょうか。

内山さん:幌村工場長が染め仕上げの中でも特に難しい染色技術を習得したので、それを本格的に展開したいと考えています。この染色技術はビンテージ仕上げなどで使う「パティーヌ仕上げ」と同じなのですが、グラデーション表現や異色の組み合わせによる色出しが非常に難しく、この技術を持っている職人さんはかなり希少なんですよ。こういう新しい技術への取り組みはお客様の要望を表現するためにありますし、もちろん私たちの成長にもつながりますから。

 

染色前の革靴。通常の革靴はそのほとんどが色付きの革で作られているが、この工場で使われている素材はほとんどが色なしの革素材を使用。その理由は、染色技術に自身があることと、表現の幅が広がること。そのすべてはお客さんの要望に答えるためだ。

 

 

高度の技術の高級革靴を、市場価格の3分の1程度で提供。

革靴といえば、海外、特にヨーロッパやアメリカなどのブランドが有名です。カジュアルシューズと違って革靴には色々な製法があり、特に有名なのが職人の技術力が必要とされる「グッドイヤーウェルテッド製法」や「マッケイ製法」。高級革靴ブランドの中でもぐっと値段が高くなっているのがこの製法で作られた革靴たちです。この製法を本当の意味でマスターするのには通常最低でも5年以上の経験が必要とされるとか。しかし、株式会社コージ製靴さんはその「グッドイヤーウェルテッド製法」で作られた革靴が市場価格相場の3分の1程度の値段で直売しているのです。「なぜそんな価格で!?」その答えは、インタビューの通りです。それが、愛される理由でもあります。工場直売会は年に数回開催されています。靴が好きな方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。

 

 

株式会社コージ製靴 新潟工場

〒950‐1113 新潟県新潟市西区鳥原新田370-1

TEL 025-370-6910     FAX 025-370-6911

営業時間 9:00~17:00

株式会社コージ製靴HP


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