New Eyes Niigata #06 ビューラ
New Eyes Niigata
2026.03.25
目に映るもの、出会う人、そして日々の生活……海外から新潟にやってきた人たちは、今、この街でどんなことを思い、感じているのでしょう。新シリーズ『New Eyes Niigata』では、海外出身の皆さんが歩んできたこれまでの人生の物語を振り返りながら、彼らが「新潟」という新しい環境で見つけた、小さな発見や気づきをお伝えしていきます。
第6回目は、スイス出身のビューラさんです。1997年に来日し、神戸や大阪での活動を経て、2003年より長岡造形大学で映像やアニメーションを学生に教えています。ビューラさんは雪を資源と捉え、雪遊びプロジェクトやスキー大会を仕掛けるなど、地域の雪国ならではのポテンシャルを引き出しています。「変化のない生き方はもったいない」と語る彼の、雪国での豊かなライフスタイルについて、お話をうかがってきました。

企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu
「言葉が通じない」からこそ面白い。視覚で伝えるコミュニケーション
――まずは、ビューラさんの出身地であるスイスがどんな国なのか教えてください。
ビューラさん:まずひとつの特徴として、スイスには、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つの公用語があります。地域によって話される言葉は違いますが、国内の公共テレビ局には各言語のチャンネルが設置されているんですよ。スーパーで売っている食品のパッケージや、お金、パスポートも4ヶ国語で書かれています。他にも、自然が美しく魅力的な四季があったり、豊かな人が多かったりするところも特徴ですね。残念ながら私はお金持ちではないんですけど(笑)

ビューラさん:そんな環境なので、子どもの頃から自然と多言語が身に付きます。私は公用語のうち3つの言語と英語、そして日本へやってきてから日本語も話せるようになりました。
――すごいですね。それだけいろんな言語が話せるなんて。ところでビューラさんはどうして日本へ?
ビューラさん:ずっと同じところにいるのは退屈ですし、変化のない生き方は自分に合わないと思ったんです。中央ヨーロッパの言語は教科書を使えば十分に理解できる自信がありました。だから、教科書を使わずに「まったく新しい言葉」の環境に飛び込んでみたいと思ったんです。それに、私の専門分野は映像や視覚を通じたコミュニケーションデザインです。言葉が通じない場所だからこそ、視覚的なアプローチで、どうコミュニケーションをとるか。そこを探求するのが面白いと思ったんですよね。
――あえて「言葉の壁」がある環境を選んだんですね。実際に日本語に触れてみていかがでしたか?
ビューラさん:難しすぎます(笑)。漢字はもちろんですが、日本語は音節が少ない分、同じ発音の言葉が多いですね。日本人は会話の文脈から漢字を想像して意味を汲み取りますが、私にはその背景がないから、かなり苦労しています。あと、「ち」と「し」、「ぢ」と「じ」の音が私には同じに聞こえてしまって、発音で混乱してしまうときもあります。
――来日してからは、どのような経歴を歩んでこられたんですか?
ビューラさん:最初は神戸芸術工科大学で2年間、映像関連の研究をしました。その後は大阪の会社で映像担当として、カメラと編集、ウェブデザインの仕事をしていました。そして2003年に、教員として長岡造形大学へやって来たんです。
――長岡造形大学では、学生たちにどんなことを教えていらっしゃるんですか?
ビューラさん:主に映像の科目を担当して、映画やドキュメンタリー、専門分野としてアニメーション……、あらゆる映像ジャンルの技術と表現を教えています。私はストーリー性のあるものが好きで、世界各地の絵本やコミックからも多くのインスピレーションを受けているんですよ。
――研究室にはたくさんの絵本や漫画がありますね。
ビューラさん:世界観やキャラクター、文字のデザイン、言葉遣いが作品によってまったく違っていて、表現方法の引き出しになるんです。リアルな日常会話が載っているから、語学の勉強にもなりますね。

ビューラさん:ただ、日本語にはいろんなレベルの尊敬語がありますよね。スイスにいた頃に勉強していたんですが、日本へ来たら、みんなの言葉遣いが習ったものと全然違っていて(笑)。外国語のカジュアルな言い回しを学ぶなら、やっぱり漫画作品を読むことをおすすめします。
雪はネガティブなものじゃない。四季の変化を楽しむ、さまざまな雪遊びプロジェクト。
――長岡での生活も長くなりましたが、ビューラさんから見た長岡の魅力ってなんでしょう?
ビューラさん:やはり、この大学ですね。もともと15歳の頃からアートの教育に携わりたいという夢があったので、日々学生とコミュニケーションを取りながら映像表現を探求できる今の環境は、とても幸せです。あとは、「雪国」であることですね。
――雪がお好きなんですか?
ビューラさん:大好きです。子どもの頃から、雪が降ると嬉しい気持ちになるんです。小学生の頃は、雪が降ると家の近くでソリやスキーをしたり、雪だるまやかまくらを作ったりして、家族でよくアウトドアを楽しんでいました。故郷に琵琶湖くらい大きな湖があるんですが、私が生まれた年には、車が通れるくらいカチカチに凍ったこともあったんですよ。

――僕は雪が積もりはじめると、「雪かきが大変だ…」とネガティブになってしまいます(笑)
ビューラさん:そうそう。長岡へ来て驚いたのは、みんな雪が降ると「嫌だな」と思っていることでした。私は、雪をただの天候ではなく「資源」だと考えているんです。毎年必ず降るものなら、ネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに生かした方がいいじゃないですか。
――「雪が資源」というのは、とても素敵な考え方ですね。
ビューラさん:だから、もっとたくさんの人たちに雪の魅力を知ってほしいと思って、学生たちと一緒に「雪遊びプロジェクト」を立ち上げました。子どもたちが雪の中で体を動かせるように、迷路や宝探し、ソリやオリジナルのゲームといったいろんな企画を実施しています。他にも、「雪を咲かせる」というテーマで、写真や映像作品のパフォーマンスもしているんですよ。

――最近は、スキーの大会もはじめられたとか?
ビューラさん:はい、3年前から新しいプロジェクトとしてはじめました。大学に隣接する河川敷を使っているんですが、最初は自分の子どもや友人を連れてスキーをして遊んでいたんです。そこからだんだん輪が広がっていって、スノーモービルを使ってクロスカントリースキーのトラックまで製作しました。今では日本代表選手を招いて、スキーオリエンテーリングの大会を開くほどになったんですよ。

――ビューラさんの「雪を好きになってほしい」という気持ちがたくさんの人たちに広がっているんですね。実際にプロジェクトをやってみて、いかがですか?
ビューラさん:まずは私自身が、こうして長岡で思いきり雪遊びができていることにとても満足しています。でもやっぱり、雪が降ってイライラしたり、マイナス思考になったりするより、地元の人たちにもっと楽しんでほしいですね。

ビューラさん:私が日本へ来た理由と同じで、ルーティン化された変化のない生活はもったいないと思うんです。長岡には、四季の変化がちゃんと感じられる素晴らしい環境があります。せっかくなら、その変化をポジティブに捉えて、思いきり楽しんだ方が人生は豊かになると思っています。

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