ガラスの面白さを、伝えたい。
胎内に移転した「アトリエ三春」
ものづくり
2026.05.09
胎内市にあるガラス工房、「アトリエ三春」。扉を開けると、赤や青、緑などカラフルな作品が出迎えてくれます。この工房で日々作品をつくっている照井さんは「多くの人にガラスのことを知ってほしい」と、一般の方に向けた制作体験も行っています。照井さんに、ご自身のことや工房のこと、制作体験のことなど、お話を聞いてきました。
照井 清子
Seiko Terui(アトリエ三春)
1955年北海道出身。高校卒業後、東京の美術専門学校へ進学。その後、群馬のガラス工場に就職しデザインを行う。結婚を機に新潟へ移住し、印刷会社での勤務を経て、秋葉区でガラス工房「アトリエ三春」を立ち上げる。昨年、胎内市に工房を移転す。
ガラスの作品を作り続けて30年。
胎内に工房を移転するまで。
――照井さんは長く、ガラスを使った作品づくりをされています。その道のはじまりは、群馬のガラス工場だったそうですね。
照井さん:この仕事をはじめて、30年くらい経ったと思います。群馬のガラス工場では、制作ではなくデザインの仕事をしていました。専門学校では、リビングアートというものを学んでいたので、働きはじめたときはまだガラスのことをあまりよく知らなかったんです。デザインの仕事をしながらガラスの作品がどんなふうにつくられているのか、職人さんの仕事を見て学ばせてもらいました。
――その後、新潟に移住してガラス工房を立ち上げました。
照井さん:最初は「吹きガラス三春」という屋号で新発田に工房を立ち上げました。その頃は吹きガラスを使った作品もつくっていたんです。そんな中で、今私が使っている「フュージング」というアメリカで生まれた技法でも制作をはじめたんです。
――「フュージング」はじめて聞きました。これはいったい、どんな技法なのでしょうか。
照井さん:板の状態になったガラスを組み合わせたものを、電気炉で溶かしてひとつの作品にします。吹きガラスは何人かで作業する必要があるのですが、これはひとりで作業ができて、自分に合っていると感じました。最初は独学ではじめた「フュージング」もお仕事をいただけるようになったので、「アトリエ三春」を秋葉区に立ち上げることにしたんです。
――そして昨年、胎内市に工房を移転されました。
照井さん:「アトリエ三春」をはじめたとき、年齢的にもその場所を最後の工房にしようと考えていたんです。だから、秋葉区の工房を出ることになったとき、「もうここで終わりにしてもいいかな」って正直思っていました。でも、ご縁があって胎内のこの場所をご紹介いただいたとき、その方から「もう少し、続けてほしい」と応援していただいて。それで工房を移すことを決意しました。
――ところで、「アトリエ三春」という名前にはどんな意味があるのでしょう。
照井さん:いろんな方によく聞かれるんですが、実は私の名前ではなく(笑)、私が生まれ育った函館が関係しています。函館は季節がものすごくはっきりしていて、暖かくなるといろんな花が一気に咲くんです。春に咲く梅や、桃、桜の3つもいっせいに咲くので、それを表した「三春」という言葉を使っています。


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立体感と、華やかさ。
作品を作る中で、大切にしていること。
――照井さんの作品は、カラフルなものが多くて、見ているだけで元気になります。
照井さん:もともと、色のついたガラスを使っているので、組み合わせ次第でいろんな表現ができるんです。同じ技法を使った作家さんの作品でも、雰囲気がまったく違う作品に仕上がるのは「フュージング」の面白いところかもしれません。この技法は、ガラスの色と形を組み合わせて模様を作っていくので、準備がとても大事になるんです。どの位置に、どの形を配置するかをあらかじめ考えて、どんなパーツが必要かを逆算していくので、電気炉に入れる前の作業が意外と大変なんですよ。
――狙った模様を作るには、細かな調整が必要なんですね。照井さんの作るガラス工芸には、どんな特徴があるのでしょうか。
照井さん:私の作品は、立体感のあるものが多いと思います。お箸置きやお皿のような平面の作品は、色のついたガラスの上に透明なガラスをのせるので、色が少し落ち着くんです。それに対して立体感のある作品は、透明のガラスをのせないので、ガラスそのものの色をダイレクトに出すことができるんですよ。ぽこっとした手触りも楽しめますし、華やかな印象の作品に仕上がっていると思います。
――その立体感を出すのも、電気炉の温度やガラスの厚さの調整が必要になってくるのでは。
照井さん:元は平面の作品のためのガラスなので、電気炉に入れた後どうなるかも考えながら、パーツを作るようにしています。電気炉の温度によっても作品の形を変えることができて、温度を上げて焼くと、外側にカーブがかかるんです。
――焼くときの温度でも表現が変わるんですね。照井さんが作品をつくるとき、大切にしていることを教えてください。
照井さん:色のついたガラスを使っているので、カラフルで華やかなものを作りたいなと思っています。お皿なんかは、シンプルなほうがお料理が映えるっていう考え方もありますが、お皿が華やかであってもお料理が映えると思いますし、どんなお皿にも活かし方は必ずあると思うんです。妥協しないで、自分がつくりたいものをつくるようにしているので、過去にはびっくりするほど華やかなお皿ができたこともありました。それが、この黒いお皿なんです。
――黒のお皿に金や青、ピンクなど色んな色の装飾が施されていますね。宝石みたいです。
照井さん:お客様が海外へ行くときのお土産として、「とにかく華やかなものを」というオーダーで作らせてもらったお皿なんです。ご要望に応えるべく、金箔やプラチナも使って、華やかになるようにしました。これだけ華やかなお皿なので、シンプルなお惣菜をのせたらお料理が映えると思いますよ。
――これだけ華やかできれいなお皿、使わずに飾っておきたくなります。
照井さん:制作した側としては、ぜひ使ってもらえたら嬉しいんです。物にも命があるから、使っていれば必ずどこかで壊れたりすると思うんです。飾って楽しむだけではなく、形があるときにちゃんと使って欲しいんです。お皿であれば、洗えばきれいになって、飾ることも、もう一度使うこともできます。もったいないと思わずに、使ってもらえたら嬉しいですね。


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もっといろんな人に、
ガラスのものづくりを体験してほしい。
――こちらでは、作品の制作体験もできると聞きました。
照井さん:ガラスを使ったものづくりを楽しんでほしくて、体験をはじめました。どんな方でも体験していただけるものになっていると思います。以前は4歳の子にも体験してもらいました。お子さまでも、きちんと座って作業ができれば問題なく体験していただけますよ。
――ガラスというと、少し難しそうなイメージがあったのですが、そんなに難しくないんですね。
照井さん:どんな方にも楽しんでもらえるように、カットされたガラスを用意してあります。せっかく体験してもらっているのに、楽しくなかったというのでは悲しいですから。こちらで用意したパーツの中から、好きなものを選んで組み合わせて作品をつくっていただきます。
――パーツの形や色を選ぶ楽しさもありそうです。
照井さん:そうですね。そのパーツにしようか、迷いながら選ぶ時間も楽しんでもらえたら嬉しいです。体験を通して、私の作品がどうやってつくられていくのか、その過程を知ってもらいたいんです。ガラスを切る感覚や、焼く前と後で変わるガラスの形や質感を知って、ガラスのものづくりを面白いと感じてもらうきっかけになればと思っています。
――最後に、照井さんのこれからについて、教えてください。
照井さん:これからは、私の技法でつくるガラス作品をひとりでも多くの方に体験していただくっていう方向にシフトしていきたいんです。ものづくりの楽しさやガラスのことを知ってもらって、その中で、「ガラスの作品づくりに挑戦したい」っていう方がいらっしゃれば、私の知っているノウハウはお教えします。この技法が次の世代に残すことができるよう、まずはいろんな人に体験してもらいたいと思っています。


アトリエ三春
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