「KIMONOTIES®」が提案する、
着物のかっこいい、新しいかたち。

ものづくり

2026.05.04

text by Ayaka Honma

以前燕市の「創明工芸」さんを取材した際、「『engimono』の着物を使ってネクタイを作っている人がいる」というお話を聞き、調べてみると「KIMONOTIES®」にたどり着きました。今回は、見附市内で開かれている個展にお邪魔して、「KIMONOTIES®」を手がける佳代子さんのことや、作品のことなど、いろいろお話を聞いてきました。

Interview

ウォー アリジ 佳代子

Kayoko Ariji Warr

1979年見附市出身。20歳のときに渡米し、その後結婚、出産。子どもの成長をきっかけにファッションと縫製を学び、服飾の仕事に携わる。アメリカにいた頃から着物の魅力に気づき、着物をリメイクして洋服の制作をはじめる。日本に帰国後、「KIMONOTIES®」の制作、作品の販売や個展の開催など精力的に活動している。

日本を離れたからこそわかった、
着物の良さ、美しさ。

――今日はよろしくお願いします。さっそくですが、佳代子さんのこれまでのことを教えてください。

佳代子さん:私はハリウッド映画が大好きで、中学校の頃からアメリカに憧れがあったんです。高校生のとき、まわりのみんなに「私アメリカに行くから」って言っていたくらいでした。それで20歳のときにアメリカに留学して、8ヶ月後には今の旦那さんと結婚していましたね。

 

――すごい行動力。それだけアメリカに行きたかったんですね。

佳代子さん:勢いだけで生きていたなって、自分でも思います(笑)。出産してから、子どもが小学生に上がったタイミングで、ファッションと洋裁が学べる学校に入ったんです。実は私、高校生のとき、被服科に通っていたんですよ。見附でニットの会社を経営していた祖父や祖母の影響が大きかったかもしれません。その頃は、自分がこういう道に進むとは思っていなかったんですけど、大人になって興味が湧いて、アメリカでも学校に通うことにしました。

 

――その後は、ずっと服に関わるお仕事を?

佳代子さん:ウェディングドレスを仕立てる会社に勤めたり、服のお直しをする会社に務めたりしました。ドレスの会社では、お客さんのアイデアやリクエストをもとに、オートクチュールのドレスを仕立てる機会があって。お客さんの思い描くかたちを、私とデザイナーさんで一緒に作り上げていくっていうのがすごく楽しかったですね。でもコロナ禍に入って、ドレスを作るお仕事が一旦ストップしてしまって。そのときに、以前から好きだった着物をリメイクして洋服を作りはじめました。

 

――そもそも、佳代子さんが着物を好きになったきっかけは何だったのでしょう?

佳代子さん:家族で日本に帰ったとき、母のタンスにしまってあった着物を見つけたんです。母の子どもの着物と嫁入りのときの訪問着があって。私自身も着てみたいと思ったし、子どもの七五三の記念にと思ってアメリカに持って帰ったんです。実際に着てみたら、着物の美しさをすごく感じましたね。今思えば、アメリカに行ったから、着物の美しさに気づけたのかもしれません。自分でも着物が着れるようになりたくて、カリフォルニアで着付け師の免許を取りました。

 

――アメリカから日本に戻られたのは最近ですか?

佳代子さん:コロナ禍で外出することすらも自由にできなくなって、着物を着る機会がすごく減ったんです。そのときに、少しでも簡単に着物が着れたらいいな、と思ってリメイクして洋服を作りはじめました。そんな中、旦那さんの仕事が完全にリモートで働けるようになって。日本語を勉強していた子どもにとってもいいタイミングだったので、日本への移住を決意しました。

 

――日本に帰ってからも、着物をリメイクして服を作られていたんですか?

佳代子さん:それが、全然していなかったんですよ。「そういうのは今はいいかな」と思ってコーヒー屋さんでお仕事をしていました。でも、そこで働いていたときに、今までやってきたことをオーナーに話していたら、「またやってみなよ」って背中を押してくれて。それがきっかけで、また着物で洋服を作ってみようと思ったんです。

 

着物の襦袢から作られたブラウス。
今回の展示に使われているタペストリーは喪服から作られたものなんだとか。

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「KIMONOTIES®」の作品たちは、
自分の背中を押してくれる存在。

――佳代子さんがそれまで作られていたのは洋服でした。ネクタイを作ることになったのには、どんな経緯があったのでしょう。

佳代子さん:日本に帰って2年が経ったとき、アメリカの友人から「着物でネクタイを作りたいから、作り方を教えてほしい」って言われたんです。私も作ったことがなかったんですけど、ずっと着物をリメイクしてきたプライドもあったから、断らずにまず自分で作ってみたんです。出来上がったネクタイを見て、衝撃を受けましたね。ネクタイにするだけで、こんなに美しく、かっこよくなるんだって。それからは、洋服を作るのをやめて、ネクタイ作りに没頭しました。

 

――着物の生地で作るネクタイって、スタンダードなものとはどんな違いがあるのでしょうか。

佳代子さん:着物って、模様ごとに明確な意味がありますよね。扇の柄は末広がり、のように。そういう日本人の知恵が生地に詰まっているのがすごく素敵だと思って、着物の模様がいちばん美しく見えるように、ネクタイの幅は8センチほどで作っています。ネクタイを締めるだけでもちょっと気合が入りますけど、着物の生地で作ったネクタイには、さらに生地に込められた意味もプラスされているので、身につける人の背中を押してくれる存在になるんじゃないかなって思っています。

 

――今日佳代子さんがつけていらっしゃるネクタイも、着物の生地で作られていますね。華やかでとっても素敵です。

佳代子さん:このネクタイは、振袖の生地で作ったんです。可愛らしくて大きな模様が入った生地を、あえてメンズアイテムのネクタイにすると、すごく目を惹く、華やかな印象になりますよね。今日は個展の初日なので、頑張っていこうっていう思いも込めて、帯を締めるように、このネクタイをしめてきました。

 

――今回お邪魔している個展は、「KIMONOTIES®」にとって2度目の個展になります。

佳代子さん:昨年開いたはじめての個展では、まずは私のことを知ってもらえるような作品構成にしていました。今回は、ネクタイを主役にした展示にしたかったので、洋服もネクタイと合わせることを前提にして作りました。ここに展示されているネクタイ以外の作品は、着物の「カケラ」を使ったものなんですよ。

 

――個展のタイトルも「カケラ」でしたね。着物の「カケラ」とは、いったいどういうことなのでしょう。

佳代子さん:ネクタイを作るときに余った生地を、「カケラ」と表現してみました。洋服だけじゃなくて、ネクタイ風のネックレスやスカーフとしてもネクタイとしても使える「クラヴァット」というものを新しく作りました。ネクタイにはできない「カケラ」であっても、首元を飾るアクセサリーとして表現できたらいいなと思ったんです。

 

「創明工芸」で再生された着物を使った「クラヴァット」。

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日本だけではなく、海外にも。
着物の素晴らしさを知ってほしい。

――佳代子さんの作品に使われている着物の多くは、寄付されたものだそうです。

佳代子さん:6割くらいは寄付していただいたものだと思います。今回の展示にも、刈谷コメさんという女性の着物のネクタイを展示しています。ネクタイと一緒に、着物にある背景も知って欲しくて、今回は刈谷さんに着物のことやご自身のことも聞いて、それも展示しました。

 

――展示からも着物文化のよさをあらためて感じることができます。

佳代子さん:着物をそのまま着るとなると、どうしてもハードルが高くなってしまうけれど、ネクタイだったら、性別も国籍も関係なく身につけられると思うんです。作品を通して、着物や日本の文化の美しさを国内外の方に知ってもらえるきっかけが作れたら嬉しいですね。

 

――海外で「KIMONOTIES®」を見れる日はそう遠くないかもしれません。

佳代子さん:海外での展示会は本当に実現させたいなと思っています。海外に向けてSNSで発信したり、アメリカに行くたびに、いろんな人に見せたりはしているんですけど、まだ展示会は開いたことがないので。

 

――最後に、佳代子さんがこれからやってみたいことを教えてください。

佳代子さん:今回の展示では書の先生とコラボしたネクタイを作ったんです。これからも、いろんなジャンルのアーティストさんとコラボした作品も作っていきたいと思いました。やりたいと思うことは失敗を恐れずやってみて、進化していけるように頑張ります!

 

 

Kayoko Ariji Warr

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