作品を観る、だけじゃない。
「秋山孝ポスター美術館 長岡」
カルチャー
2026.04.29
長岡市の宮内エリアにちょっと変わった美術館があります。宮内出身のグラフィックデザイナー・秋山孝さんの作品を展示する「秋山孝ポスター美術館 長岡(APM)」は、たくさんの人に美術館を楽しんでもらおうと様々なイベントを企画しています。運営しているのは、長岡のまちづくりを行っている「ミライ発酵本舗」。今回は神林さんと立野さんに美術館のこと、ここでの楽しみ方など、お話を聞いてきました。
神林 美夏
Mika Kambayashi(秋山孝ポスター美術館 長岡)
写真左/1985年長岡市出身。金融機関で働いた後、2023年に「ミライ発酵本舗」に入社。現在は「秋山孝ポスター美術館」をメインに担当。嵐が好き。
立野 可耶
立野 可耶 Kaya Tateno(秋山孝ポスター美術館 長岡)
写真右/1993年長岡市出身。京都の美術大学を卒業後、Uターンして南魚沼で観光関係の仕事に携わる。2020年に「ミライ発酵本舗」に入社し、現在は「秋山孝ポスター美術館」をメインに担当。学芸員の資格をもっている。
アート×まちづくり。
銀行だった建物が、美術館になるまで。
――こちらは秋山孝さんの作品を観ることができる美術館です。秋山さんって、どんな方なのでしょう。
神林さん:この美術館がある宮内に生まれて、グラフィックデザイナーとして活躍された方です。関東を中心に展開している「アンファン」というメガネ屋さんのキャラクターや、新潟県では、「環境にやさしい買い物運動」の一環として作られたキャラクターを見たことがある人が多いかもしれません。
立野さん:海外でも広く活躍された方でもあります。特に、自然保護や戦争反対を訴えたポスターは海外からの評価も高く、金賞を受賞した作品もあります。
――そんな秋山さんの作品を集めた美術館は、どのようにして作られたのでしょう。
神林さん:ここはもともと、「長岡商業銀行」があった建物でした。このエリアは商業の街といいますか、いろんなお店が立ち並ぶ商店街だったんです。その後は他の銀行との合併や移転を経て、地元の商店の倉庫として使われていたんですが、そのお店が閉まったあとは、誰にも使われないままになっていました。
立野さん:この建物は空襲や2度の地震も経験した歴史があるので、残してほしいっていう声も多くて。そんなときに、宮内出身の秋山先生の美術館にすることになりました。先生も承諾してくださったので、2009年に「秋山孝ポスター美術館 長岡」が誕生しました。ただ、その後コロナ禍で一度休館することになったんです。休館中に、秋山先生が逝去されて……。
――その後、美術館はどうなったのでしょう。
神林さん:生前から先生がこの美術館を長岡市に寄贈したいとおっしゃっていたようで、先生の奥さまのご協力もあり、長岡市に美術館が寄贈されました。その後「ミライ発酵本舗」が市から委託を受けて、この美術館の管理・運営を行うことになり、2023年に再オープンしました。
――おふたりが「ミライ発酵本舗」で働きはじめたきっかけは?
神林さん:私は元々、長岡の金融機関で働いていました。お金の面から地域の暮らしを支えるお仕事にやりがいはあったんです。でも、「お金」とは違う角度からも、地域の方と関わりたいと思って、「ミライ発酵本舗」で働くことにしました。
立野さん:私は美術大学に通って、作品を人に観てもらうためのプロデュースを学んでいました。その中で、アートとまちづくりについて学んだので、まちづくりに関わる仕事を探していたときに「ミライ発酵本舗」を見つけました。大学のときに学芸員の資格をとっていたのもあって、再オープンを機に「秋山孝ポスター美術館 長岡」をメインに担当することになりました。


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パッと目を惹く、色鮮やかな世界観。
ふたりに聞いた、作品のこと。
――こちらで観られる秋山さんの作品は、どのくらいあるのでしょう。
神林さん:私たちが管理しているポスター作品はおよそ500種類ほどです。こちらで展示されていない作品は、宮内駅前にあるAPMの蔵に保管しています。展示する作品は、開館当初から美術館の運営に関わっている「たかだ みつみ」さんにアドバイスをいただきながら選んでいます。
立野さん:今は、美術館が開館した2009年から2011年前半までの作品を集めた『秋山孝ポスター回顧展2』を開催中です。会館当初の作品をもう一度皆さんに見てもらおうと昨年開催した『秋山孝ポスター回顧展1』の続編になっています。
――おふたりからみて、秋山さんの作品はどんな作品ですか?
神林さん:パッと目を惹くような作品が多いと思っています。秋山先生のポスターは、言葉よりはイラストから読み取る作品が多いので、ひと目見て興味を持つ作品が多いですし、イラストをじっくり見ると、作品の背景や意味が読み取れていくのがすごく面白いと思っています。
立野さん:秋山先生のポスターは、シンプルなんですけど色が鮮やかなので、他のポスターと並べたときにひときわ目を惹くように計算されているんだろうなって思います。ビビッドカラーを使った作品が多いので、観ているだけでも元気になりますよね。
――環境問題や社会問題も、明るい色使いで表現しているのも印象的です。
立野さん:秋山先生は、エコロジーや教育、社会の課題をテーマにした作品を多く残していて、今回の展示の中には、中越地震をきっかけに制作がはじまった「地震ポスタープロジェクト」の作品があります。先生はデザイナーとして、イラストレーションで地震の記憶を残したいと思って、このプロジェクトをはじめたそうです。こういったテーマの作品でも、親しみやすさのある作品になっているので、課題について考える余白が残されていると思いますよ。
――秋山さんの遺志を引き継いだ活動も行っているんだとか。
神林さん:秋山先生が作品を展示することの他にも、研究と教育を大事にされていたんです。それを私たちも大切にできたらなと思って、過去には地元の小学校6年生が学校内にある美術館で開催した企画展に、秋山先生のポスターを展示していただきました。今後も学校と関わりを持てたらいいな、と思っています。


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地域の人に、気軽に来てほしい。
美術館が目指す、これからの姿。
――おふたりはこれから、「秋山孝ポスター美術館 長岡」をどんなふうにしていきたいと考えているのでしょう。
神林さん:地元の方が目的もなくふらっと気軽に来てもらえるような場所にしていきたいな、と思っています。私自身、この美術館に関わる前、なんとなく気になっていたけど行ったことはなかったんです。今も建物の前を通りかかって、外から覗いていくみたいな方が多くて。そんな方たちにも気軽に来てほしくて、地域のアーティストさんを呼んで企画展やイベントを開催しているんです。
――過去のイベントでは、美術館で飲食を交えたイベントも開催されたんだとか。
神林さん:生前、秋山先生がここで皆さんを招いてパーティーを開催していたそうなんです。私たちも「APMの夜」と題して、夜の美術館でお酒を楽しみながら絵を描くワークショップを開いたり、企画展のトークイベントで、地元の酒蔵さんのお酒を出したりしましたね。
立野さん:普段は併設されているカフェのメニューを楽しんでいただけますよ。今月の25日から新しいクリームソーダも販売をはじめました。展示室でも飲食ができるので作品と一緒に写真を撮ったり、おしゃべりをしたりして楽しんでもらえたらと思っています。
――作品を観る以外の楽しみ方がたくさんあると、美術館に対するハードルも下がりますね。
神林さん:他にも長岡のペットショップである「松田ペット」さんの看板を展示したり、「加治聖哉」さんの干支をモチーフにした作品を毎年展示したりと、私たちの「やってみたら楽しいよね」っていうものを企画してイベントを開催しています。「何か面白いこと」をやっているなって思って、美術館に来てもらえたら嬉しいですね。
立野さん:この美術館は、話しながら作品を観ても、作品を撮影してもOKなんです。作品を観て「かわいい」と思ってもらうだけでも立派な鑑賞ですし、秋山先生のメッセージについて考えるきっかけになってくれたら十分だなって思います。「ちょっとクリームソーダを飲みに来た」くらいの感覚で、気軽にいらしてくださいね。


秋山孝ポスター美術館
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