2020年に開催される東京オリンピック。なかでも注目の競技が「BMXレーシング」。その出場候補選手が上越市にいるってご存じでしたか? 彼の名前は池田大暉さん。6歳からBMXに乗り、世界大会でも好成績を残すほどのアスリートです。大切なオリンピック選考レースを控えた池田さんに、今の熱い意気込みを聞いてきました。
池田 大暉 Daiki Ikeda
1993年上越市生まれ。アップルスポーツカレッジ卒業。6歳からBMXに乗り、10歳にして世界選手権ベスト16位。その後もマレーシアインターナショナル1位、茨城東日本選手権1位など好成績を残す。
――はじめにBMXについて教えてください。池田さんがされているBMXレースはどんな競技なんですか?
池田さん:BMXは、短距離レースやスタントといった自転車競技の一種です。複数のコブやバーム(コーナー)を配置した300~400mの専用コースを、4~8名のライダーで走って順位を競います。陸上の100m走と同じで、早くゴールした選手が勝ち。コースによってタイムは変わるけど、このコース(金谷山BMXコースにて取材)だと30秒ちょっとでゴールします。観るだけでもかなりのスピード感が楽しめると思いますよ。
――BMXというとハンドルをくるくる回したり、飛んだりするイメージがあります。どの種目でも同じ自転車を使っているんですか?
池田さん:それぞれの競技に使用される車体は同じだけど、種目によってパーツは異なりますね。例えば、くるくる回るスタントで使う車体にはペグという足場が付いているけど、レースの場合はありません。
――池田さんはどんなキッカケでBMXレースをはじめたんですか?
池田さん:6歳のとき、友達家族と一緒にBMX体験に参加しました。1時間200円でプロテクターと自転車を貸してくれて。それが楽しくて、BMXが遊びになったんです。子どもの頃は毎日のように金谷山BMXコースに来ていましたね。
――ここが遊び場だったんですね。
池田さん:小学校が近くにあって、放課後になると母が自転車を持って来てくれていました。毎日、日が暮れるまで練習。朝早くに忍び込んで朝練したことも。内緒ですよ(笑)
――自転車に乗れてもコースを走るのは難しいですよね。誰かに教えてもらっていたんですか?
池田さん:子どもの頃は父が教えてくれていました。はじめは一緒に乗っていたけど、県外のレースに出るようになったら、いつのまにか父より上手になってしまって(笑)。それからはトレーナーみたいにサポートしてくれる存在になりました。頭が良い人だからできなくても教えられるんでしょうね。今では応援の側になっちゃいましたけど。
――素敵なお父さんですね。この金谷山BMXコースでは、いろいろな人たちが練習しているんですか?
池田さん:小学生から中学生までの時期は賑わっていましたけど、高校生になると部活に入ってBMXをやめる人も多くなって、段々と減っていきました。今ではちびっ子たちと自分しかいないですね。
――せっかくBMXレースを楽しめる環境があるのにもったいないですね。
池田さん:そうなんですよね。だから金谷山BMXコースで大会があるときは自転車スクールを開いたり、ストライダー(ペダルやブレーキのない子供用自転車)から自転車へ進む子どものサポートをしたり、自分でもできる活動を続けています。この場所が遊び場だったから、やっぱり賑わっていてもらいたいですからね。
――いろいろな大会に出場されていると思いますが、普段は毎日練習ですか?
池田さん:基本的に練習かレースのどちらかです。あとはアルバイト。
――え? アルバイトですか??
池田さん:BMXレースに必要な車体、ユニフォームなどはスポンサーから支給してもらっています。でも遠征費などのサポートをしてくれるスポンサーはついていません。だから定期的にアルバイトをして、海外のレースに出場しています。
――そうなんですね。驚きました。今後の海外遠征の予定は?
池田さん: 12月9日からオーストラリアのバサーストとシェパートンに行きます。日本はオフシーズンになるので南半球へ。
――日本は冬でも、オーストラリアは夏ですもんね。それでは、オリンピックに向けたお話を聞かせてください。
池田さん:小さい頃の夢は「プロレーサーになってちびっ子たちにBMXレースを教えたい」でした。それが大人になるにつれて、自分の限界がどこなのかを追い求めるようになりました。世界でどこまで通用するのか、それを知ることができるのがオリンピックなんです。
――オリンピック選手に選ばれるには?
池田さん:2020年2月に、オーストラリアで行われるワールドカップがあり、そこで日本人最高成績を残せばオリンピック選手になれるんです。
――負けられない試合ですね! ちなみにオリンピックには何名が出場できるんですか?
池田さん:BMXレースのワールドカップは年10回も開催されています。そこで結果に応じた国別のポイントがあって、国によって3名、2名、1名と参加枠が異なります。日本は開催国枠として1名。だからどうしても勝たなければいけないんです。
――狭き門ですね…。自信はありますか?
池田さん:同い年で2016年のリオオリンピックに出場した選手がいます。昔は同じぐらいのタイムで争っていたので、この大会では勝たないと。もうやるしかないし、悔いは残したくないから、すべて出し切って2020年の東京オリンピックに出場したいと思います。
インタビューの最後に「メッセージはありますか?」とうかがうと、「『応援よろしくお願いします』とは言いません。応援してもらえる選手になれるように頑張ります!」と気合十分な答えが返ってきました。新潟からオリンピック選手が選出されることを祈って、2月のレース結果を待ちましょう。頑張れ池田大暉選手!
池田大暉