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関係人口の層を厚く。都市部から人が通う村上市・高根「わぁら」の取り組み。

集落の日常をベースに。成功事例として今秋、全国表彰も。

県北北・村上市の中心部から朝日地区の奥へ車を30分ほど走らせると、山あいに「高根」という大きな集落が現れます。約160世帯500人ほどが暮らすこの集落は、限られた交通条件下にありながら、(いやだからこそ?)独自の地域おこし活動が盛んなことで知られています。その取り組みは地方の一集落の成功事例として全国的にも注目を集めていて、この秋には集落内の2団体が全国表彰を受けました。農林水産祭の最高賞・天皇杯を受けた「高根フロンティアクラブ」と、国交省・地域づくり表彰で全国地域づくり推進協議会会長賞を受けた「高根コミュニティラボわぁら」です。壮年代を中心に高原を開墾してイベントを開催したり企業のCSR活動を誘致したり、また旧校舎を活用して食堂を運営したりして、都市部から人を呼び込んでいる「フロンティアクラブ」に対し、今回紹介する「わぁら」は、主に40代以下の若いメンバーが、集落の日常をベースに、地域コミュニティの維持・発展や関係人口の充実などに取り組んでいます。活動日にお邪魔して、お話を聞いてきました。

 

 

一般社団法人・高根コミュニティラボわぁら

遠山 真治 Shinji Tohyama

高根コミュニティラボわぁら代表理事。1971年、村上市高根生まれ。元海上自衛隊員。2012年に家族の介護のため退役して帰郷し、家業の酒屋を営みつつ、地元の地域おこしグループ・高根フロンティアクラブでも活動。2016年のわぁら設立時には代表理事を引き受けた。猟師でもあり、今秋はクマの頻出でも忙しい。

 

一般社団法人・高根コミュニティラボわぁら

能登谷 愛貴 Aki Notoya

高根コミュニティラボわぁら事務局。1986年生まれ。神奈川県横浜市出身。学生時代から自然との共生・森での暮らしを志向し、2006年ころからNPO法人での活動を通じて高根に通い続け、2012年に移住。活動を共にし、先に移住していた埼玉県出身の夫・創さんと2016年、若手を中心にわぁらを設立した。昨秋には長男が誕生。

 

介護予防事業からゲストハウス運営、地域課題の調査まで。

――この度は全国表彰おめでとうございます。

遠山さん:ありがとうございます。若手たちによる地道な活動を高く評価してもらえて、大変ありがたいです。コロナ禍でなかなか思ったような活動ができない中、受賞は大きな励みになります。

 

――「わぁら」さんは、どんなことをしている団体なのですか?

能登谷さん:大きく言うと、「この地域の暮らしを未来へつなげていく活動」をしています。そのためには、この地域に暮らしている人はもとより、この地域に魅力を感じこの地域の営みに関わってくれる人も対象になります。取り組みとしては、地域コミュニティや滞在交流型ゲストハウスの運営、また高齢化率や棚田、空き家など地域課題に関する各種調査などですね。

 

――より具体的には?

遠山さん:地域コミュニティの運営としてはまず、村上市の介護予防事業を受託し、高齢者を中心に地域の方々が集う「いっぷくどころ」という事業をしています。

 

能登谷さん:このゲストハウス「瑞泉閣」は築90年の古民家をリノベして、来訪者が利用する宿泊・体験施設として運営しているほかに、活動拠点としても活用しています。ちなみにこちらの古民家は、かつてこの辺りの山を所有していた燕の実業家の方が別荘として建てたものだそうです。

 

 

――他にはどんな活動を?

能登谷さん:その時々の状況に応じて、いろいろやっています。夏休みには大学生が来て地元の子どもたちに勉強を教えたり、コロナで街場までの外出が憚られた時にはデリバリーのピザ屋さんをやったり……、地域ニーズの変化へ柔軟に対応できるようにしています。高根は街場から遠いこともあって、何でも自分たちでやってしまおうという意識が高い地域でもあります。私たちの活動も、その意識がベースになっているかもしれません。

 

――ちなみに今日は何を?

遠山さん:数年来よく来てくれる大学生の面々と、瑞泉閣の冬囲いをしています。大学生の方から、「この日に行きたいけど、何かやることはないか」って連絡をもらって。今はまだ大丈夫ですが、今後高齢化が進むにつれて、地元住民だけではこういった仕事が世帯単位でもどんどん難しくなっていきます。そんな中、つながりのある若い人がこうして手伝ってくれるのはとてもありがたいことです。

 

内と外のつながりを育む「たかねびと」の仕組み。

――最近始めたという「たかねびと」とは、どういったシステムなのですか?

能登谷さん:高根に住んでいない方でも、高根に関心を持ってくれていたり、応援してくれたり、今日来てくれている大学生のように、足を運んで関わってくれたりする方向けに、いくつかのメニューを用意して、より高根とのつながりを深めてもらおうというものです。「びと費」という年会費に応じて、瑞泉閣の宿泊割引券だったり、高根産の棚田米だったり、山菜採りや星空観察など体験ツアーの参加チケットだったりを提供します。また来訪やミッション体験、商品購入ごとにポイントを貯め、レベルを上げると、限定特典があったりもします。私たちにとっては、交流と定住の間、関係人口の充実につながる取り組みですね。

 

――最終的な目標は、来訪者を定住につなげることなのでしょうか。

能登谷さん:いえ、あまりに定住が目的化しちゃうのは違うなと。定住って一生の選択ですし、すごくハードルが高いものです。なので私たちとしては、イベントなどをきっかけに高根を好きになってくれた方が継続的につながりを持ってくれるような、関係人口の層をより厚くできれば、と考えています。ふらりと遊びに来れるような自由度の高さ、緩さを大切にしたいですね。

 

――なるほど。能登谷さんご自身も、最初は来訪者だったんですよね? 高根に来たきっかけってあるんですか?

能登谷さん:話すと長くなるんですが……(笑)。そもそもの始まりは高校1年のとき、全国の森や海、川の名人のもとを訪ねて話を聞く「聞き書き甲子園」という活動に一期生として参加したことですね。その活動で木の職人に話を聞き、自然との共生や森での暮らしに興味を持ったのがきっかけです。その後、その聞き書き甲子園のOBOGが中心となって「共存の森」という活動を始めるのですが、そこに私も参画しました。その活動の中で訪れたのが高根です。初めて来たのは確か2006年、まだ大学生でした。それからずっと何かにつけて通うようになって。ちなみに夫とは聞き書き甲子園の一期生同士で、共存の森でもいっしょに活動していて、夫の方が先に高根へ移住し、そこへ私も移り住んで……という形です。

 

――なるほど。こう言っちゃなんですが、ご家族に反対されたりとかは……?

能登谷さん:当初は猛反対でしたね。でも今では、私たちが送る高根の産品を心待ちにしてくれています(笑)

 

――遠山さんは、都市部から多くの人が自分の地元に来ることをどう捉えていますか。

遠山さん:とてもありがたいことだと思っています。ただ、私も帰ってきた当初は不思議でした。どうしてこんな田舎にわざわざ来たがる人がいるのか、って(笑)。私自身、若い頃はどちらかというと都会へ出たいタイプだったので。でも現実に、これだけ多くの方が高根に来てくれて、交流を持ち、高根のことを考え、行動してくれている。その心意気に地元の人間として応えるためにも、本来は代表なんて柄じゃないのですが、能登谷さんたちがわぁらを立ち上げる際、一肌脱ごうと決めました。

 

楽しいから何回も足を運び、次第に地域の一員に。コロナ禍でもつながりは深く。

――せっかくなので、今日来ている大学生にも聞いてみましょう。今日、どちらから? 何年生ですか?

今井大誠さん:新潟市から来ました。いま新潟大学の大学院で修士課程の1年目です。

 

 

――高根へ来たきっかけは?

今井さん:授業で来たのが最初です。学部1年生のときに「ボランティア開発論」っていう授業で。そのときは、この瑞泉閣の囲炉裏を掃除しました(笑)

 

――じゃあもう数年来なんですね。継続的に通う動機みたいなものは?

今井さん:やっぱり一番は楽しいからです。地元の方々もすぐに名前を覚えてくれて、打ち解けられたし。また、ここで他地域から来る学生と交流できることも刺激になっています。ここに来るようになってから、人当たりが良くなったというか、誰とでも話せるようになった気がします。それも良かったです。今では周囲の仲間と誘い合って来るようになっています。

 

――なるほど。今後は?

今井さん:これまで培ってきた高根の方々とのつながりを大切に、今後も交流を続けていきたいです。

 

遠山さん:何度も来てもらっていると、もうお客さんというよりは、地域社会の一員というか、地元の仲間というか、そういう感覚になりますね。「おぉ、今日も来てるのか。ウチでご飯でも食べてけ」みたいな。

 

――ところで、新型コロナの影響はいかがですか。

遠山さん:主に人が集まったり交流したりする活動をしている自分たちのような団体にとっては、本当に困ったものです。ただ、ウェブショップの開設やオンラインイベントの実施など、このような状況だからこそできることにも取り組んでいます。

 

能登谷さん:「たかねびと」も、よく来ていただいていた方から「そちらになかなか行けなくなったが、何か支援することはできないか」という声をいただいて、そういう仕組みを作ろうと考える私達の後押しになりました。

 

遠山さん:やっぱり、実際に来てもらっていっしょに何かをやるのが一番なんですけどね。今後も皆でアイデアを出し合いながら、高根に住む人と高根に来てくれる人がともに笑顔になれるよう、地域の暮らしを次世代に繋いでいけるよう、様々なことにチャレンジしていきたいと思います。

 

――そうですね。本日は作業中のお忙しい中、ありがとうございました。

 

 

 

高根コミュニティラボわぁら

〒958-0211

村上市高根679-1

TEL 0254-75-5066

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