古町通と西堀通をつなぐ路地を入ったところにたたずんでいる一軒の古民家。「armonia」と書かれた看板を見ると、お店であることがわかりますが、パッと見では何のお店か判然としません。じつはここ、イタリアンレストランなんです。和の雰囲気に満ちた古民家の中で、いったいどんな料理を楽しめるのでしょうか。オーナーシェフの真保さんにお話を聞いてきました。
古民家イタリアン armonia
真保 元成 Motonari Shinbo
1983年三条市生まれ。新潟調理師専門学校卒業後、東京のイタリアンレストランをはじめ、さまざまな店で修行。2009年より神奈川でイタリアンレストランを経営。2017年に新潟に戻り古町で「古民家イタリアンarmonia」をオープン。趣味はサーフィン、スノーボード、スケートボードなどとてもアクティブ。
——今日はよろしくお願いします。とってもいい感じのお店ですが、古民家をそのまま使っているんですね。
真保さん:はい。もともと古民家の落ち着いた雰囲気が好きなんです。神奈川県でイタリアンレストランをやっていたとき、まわりに古民家レストランがたくさんあって、つぎは田舎で古民家を使ったレストランをやりたいと思っていました。新潟に帰ってから古町にある古民家を何軒も見て、一番最後に紹介された物件がここだったんです。一目惚れして即決しました(笑)
——一目惚れする気持ちもわかります。もとはどういった建物だったんでしょうか?
真保さん:100〜110年前の大正時代に建てられた建物で、別荘として使われていたようです。そのせいか、生活感を感じさせない作りになってるんですよ。お風呂も台所もなかったですからね。実は新潟市の指定文化財予定になっている建物なんです。
——え、すごいじゃないですか。そんな建物をお店として使うことができるんですか?
真保さん:ええ。登録される前であれば大丈夫なんです。ただ、指定文化財予定の建物なので、改装の際はいろいろ指示があって大変でした。当時の貴重な材料を使ってあるガラス、格子窓、欄間などは残さなければならず、手を加えることができないんですね。でも、さすがに別荘の建物だけあってお金をかけて作られているので、建材にもいいものを使っていて、しっかりした建物でした。
——こちらのお店では、どんな料理を提供しているんですか?
真保さん:ひとことでいうなら、和のエッセンスを取り入れたイタリア料理ですね。古民家で提供する料理ですし、新潟の食材を生かすためにも和のエッセンスが合うんです。たとえば、当店の人気メニュー「armoniaサラダ」は新鮮な新潟産野菜に豆腐のディップをつけて食べてもらいます。
——新潟の食材にはかなりこだわっているんですね。
真保さん:もちろんです。新潟産食材のレベルの高さが、新潟でお店をやろうと思ったきっかけになったので。無農薬野菜をはじめとしたオーガニック食材は仕入れ先にもこだわっていて、野菜は農家、魚は漁師、肉は農場から直接仕入れています。生産者の顔が見える食材の方が安心して使うことができますからね。
——調理についての心がけのようなものはありますか?
真保さん:シンプルに調理することにこだわってます。もちろん新潟産食材の持ち味を生かしたいという思いもありますが、シンプルな料理ほど料理人の腕が問われると思うんです。なので調理自体はシンプルなんですが、ただ、そこに必ずひとつアクセントをつけることにしています。たとえば、イタリアンでは使わないスパイスを使ったりして、どこか心に引っかかるものがあるよう工夫しています。
——こちらのお店にはどんなお客さんが訪れますか?
真保さん:いろいろな人が来ますよ。サラリーマン、OL、若者…。あと、建物を見学するために建築関係のお客さんも来ますね(笑)。「おばあちゃん家にいるみたいで落ち着く」ってよく言われるので、ゆったりリラックスしながら過ごしてほしいです。自分の家みたいにゴロゴロしていく人もいますよ(笑)
——くつろげそうな雰囲気ですもんね。ところで、箸やフォークとかはいいものを使ってますよね?
真保さん:わかりますか?ナイフやフォークは株式会社サクライ、箸はマルナオ株式会社のものを使っています。私の出身地が三条市ですので、燕三条製品をPRしたいという気持ちもあって使ってるんですよね。そのほかにも、丸三安田瓦工業株式会社の箸置き、UTOPIAで作った制服、阿部仏壇製作所製のテーブルなど、新潟県内でがんばっている職人さんの製品を使ってるんです。
——いろいろと強いこだわりがあるんですね。ところで「新潟“食”実験レストラン」というコンセプトを掲げてますよね?
真保さん:はい。新潟の“食”という分野において、飲食店という形だけにとらわれることなく、いろいろなことをやってみたいという気持ちで「“食”実験レストラン」と掲げています。たとえば、企業とコラボした商品開発に携わってみたり、レストランバスに協力したりしてるんです。
——レストランバスって何ですか?
真保さん:バスの中で食事しながら、新潟市内のいろんなところを巡るツアー企画です。訪問地も新潟の食にまつわる場所になっていて、農家で野菜の収穫体験をしてもらったりするんですよ。新潟では初めての試みなんです。私はそのバスの中で調理を担当しています。
——真保さんはなぜイタリアンの道に進んだんですか?
真保さん:新潟調理師専門学校にいたころ、フランス料理の勉強をするためにフランスへ留学したんです。でも、フランス料理が自分に合わないと思うようになったんです。バターを使った料理が苦手なんですね。そこで、ナポリとかの南イタリア料理の方に進むことにしました。そちらの料理では、あまりバターを使わないんです。専門学校卒業後は東京の南イタリア料理店で3年ほど修行し、イタリアでも修行しました。
——新潟市でお店を開いたのは、どんないきさつがあったんですか?
真保さん:神奈川県でイタリアンレストランをやっているときに、もっと田舎の方でお店をやってみたいと思いはじめたんです。とくに西日本への憧れがあって、半年くらいかけてお店を開く場所を探して全国あちこちを回りました。そのときに、全国の食材もいろいろ見てきて、あらためて新潟産食材のレベルの高さに気づいたんです。でも、新潟産食材のよさを他県の人はあまり知らないんですね。東京では新潟産といえば米と酒くらいしか知らない。だから、新潟産食材を使ったお店をやり、県外へもアピールしていけたらと思って、新潟に戻って店をオープンすることにしたんです。
——今後どのように新潟産食材のよさを全国に伝えていきたいと思っていますか?
真保さん:キッチンカーを持っていますので、いろんなところを回りながら料理を提供して、新潟産食材を発信していけたらなと思ってます。それから、食の分野でもっといろんなことに挑戦していけたらいいですね。
全国をまわって新潟産食材のすばらしさに気づき、新潟に戻って古民家レストランをはじめた真保さん。そこで提供される料理は和とイタリアンが融合した、美しい料理の数々(インスタ映えまちがいなし!)。古民家の雰囲気ともマッチして素敵な時間を過ごすことができます。