約50種類のおつまみやお菓子、海藻類を扱っている新潟市の「ハレリー」。人気の商品は、北海道のメーカーが製造している「そふとあたりめ」と、東京の老舗から直接仕入れている豆菓子。いずれも新潟では「ハレリー」しか取り扱っていないのだそう。今回はイカのかぶりものがトレードマークの店主、宇留間さんにいろいろとお話を聞いてきました。
ハレリー
宇留間 義矢 Yoshiya Uruma
1976年新潟市生まれ。神奈川大学を卒業後、北海道本社の健康食品会社に就職。大阪、東京、仙台で働く。2010年に新潟に戻り、家業である「ハレリー新潟(当時)」で働きはじめる。2021年に店主となり、事業者名を「ハレリー」に変更。
——「ハレリー」さんって、いったいどんなことをされているんですか?
宇留間さん:おつまみやお菓子、海藻など、乾物の卸と小売をしています。両親が45年ほど前に創業し、当時は個包装した三陸産の海藻類を車に大量に積んで、親父がコツコツと学校や会社に売りに歩いていました。いわゆる行商ですね。最盛期は株式会社で東北に拠点がいくつもあったと聞いています。今は行商の業界全体が衰退していることもあり、事業はずいぶんと縮小しましたが、おつまみとお菓子で30種類、他の商品も合わせるとぜんぶで50種類ほどの商品を扱っています。
——いろいろな商品があるんですね。店頭でも買えるんですか?
宇留間さん:はい、店舗販売もしています。あとは出店するイベントでもお買い求めいただけますし、オンラインストアも展開しています。行商の名残で、今でも売りにまわっている場所もあります。
——どんなポイントで商品を選んでいるんでしょう?
宇留間さん:味が美味しいのは絶対で、あとは大手スーパーやコンビニなどに並ばない珍しい商品を選びます。看板商品の「そふとあたりめ」は北海道の会社が製造していて、新潟で取り扱っているのは「ハレリー」だけです。いちばん人気があるのは「かれーぴー」で、私のおすすめは「たこぴー」です。豆菓子は東京の老舗が作っているもので、こちらも新潟ではうちだけが直接仕入れをしています。
——「ハレリー」という名前の由来も知りたいです。
宇留間さん:両親がキリスト教徒で、「ハレルヤ」という言葉をヒントに「ハレリー」と名付けたそうです。実は、若い頃から母親と折り合いが悪くて。私が事業を引き継いだら店名は変えようと思っていたんですけど、これまでがあって今がありますからね。両親がやってきたことを引き継ぐわけだし、「ハレリー」という名前を残しました。
——お母さんと折り合いがよくないということでしたが、よく継ごうと思われましたね。
宇留間さん:母が強引で、ひとりっ子ということもあり、しぶしぶ家に入ったんですよ。自分の意思で何でも決めたかったし、新しく取り組みたいこともありましたが、母とは商売の価値観が合わず衝突ばかりしていて実現できないアイデアも沢山ありました。
——じゃあ、しばらくは仕事が面白くなかった?
宇留間さん:仕事は嫌いではなかったんですけどねぇ……。長く県外に住んでいたこともあり、友達がほとんどいなくて人脈がなかったんです。そんなときに「新潟若手商人塾」という異業種交流会に誘われて、いろいろな人とご縁ができました。そもそも私は人見知りで、行商が苦手なんです。「売りに行け」と言われても、今までのルート以外に行く先が分からなくて。だけど「商人塾」でイベントを主催している人に出会って、「行商以外にも露出できる場所があるんだ」と思いました。イベントに出ると、また別のイベントにもお誘いいただくようになって、少しずつ行商以外でも販売できるようになりました。
——だんだんと宇留間さん流の売り方が確立していったんですね。
宇留間さん:確立できたのかなぁ。まだそう言えるほどの自信はないですが、でも「両親がやってきた仕事は自分がつくってきた仕事じゃない」と考えていたのが、イベントに出店するようになったり新しい卸先が増えたりするにつれ「自分の仕事」と思えるようになりました。自分が切り開いたって気持ちがあるから充実感があります。
——ところで、どうしても気になることが……。イカのかぶりものについても知りたいです。
宇留間さん:「商人塾」の先輩で、自らが広告塔になって仕事を獲得するマーケティングの達人がいるんです。その人から「宇留間さん、そろそろイカ被ったらどう?」と言われまして。私は飛び込み営業も、「いらっしゃいませ」と声をかけるのも苦手だから、お客さまから声をかけてもらえる仕掛けを作りたかったんです。それにはイカのかぶりものがもってこいだったんですね。イベントなどで1回見かけたら忘れないでしょうし、人見知りの私にとっては大事な相棒です。
——人見知りだったり、お母さんと衝突したり、いろんなご苦労があったと思います。そんな中で、どんなモチベーションで仕事をされてきたんでしょう?
宇留間さん:新潟から戻ってきた頃は生きるために仕事をしているようなもので、モチベーションやモットーはありませんでした。会社を辞めた2010年あたりから、コンビニのプライベートブランドが誕生して、安くて見栄えのするおつまみがたくさん出はじめたんです。価格競争には勝てないし、きっと「ハレリー」は潰れてしまうと思いました。値段以外で勝負するために、「ハレリー」の強みは何かと自問自答してきました。「ハレリー」の商品はすべて他の会社が作っているもので、自社製造をしているメーカーさんが羨ましくて、「ハレリー」にもオリジナル商品が欲しいとずっと思っていました。でも2019年、母の死をきっかけに事業を引き継ぎ、自身の責任で取り扱う商品の見直しをしていくことになって、「美味しい」以外のこだわりがそれぞれの商品にあることに気付くことができたんです。
——最後に今後の目標を教えてください。
宇留間さん:「ハレリー」というブランドをここにしかない唯一のものにしたいです。メーカー独自の調味液に浸すことで臭みを消し、柔らかく、食べやすくつくられた「そふとあたりめ」は小学生にも人気があります。食べ始めたら止まらない「かれーぴー」は、「食べるな危険」というフレーズで一番の人気商品になりました。他にも、たこわさを乾燥させたような「たこわさかまぼこ」やちっちゃいたこ焼きのように可愛い見た目で味はしっかりたこ焼きを再現している「たこぴー」など、個性豊かな完成度の高いおつまみ達を独自の切り口で楽しく世に広めていくことが自身の使命だと思っています。 イベントなどでイカを被った店長を見かけたら是非声をかけてくださいね。
ハレリー
新潟県新潟市中央区大島167-16
025-281-0081