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豊かな食卓づくりをお手伝い。「ここのやさい」が届ける野菜の定期便。

  • 食べる | 2023.10.30

野菜の定期配達サービスを提供する「株式会社ここのやさい」。週に1度、地元で採れた新鮮な野菜を自宅まで届けてくれます。扱っているのは規格外の野菜なので、形のよくないものや傷のついたものがほとんどですが、その分お手頃な価格で美味しい地元野菜を食べられるんです。今回は代表の伊藤さんが「ここのやさい」を立ち上げるまでの経緯や、活動を通じて届けたいことについて聞いてきました。

 

 

株式会社ここのやさい

伊藤 春陽 Haruhi Ito

1992年新潟市生まれ。「株式会社ここのやさい」代表取締役社長。県内の大学で地理を学び、大学院を修了後、市役所に勤務。数年勤めたのち、農業法人に入る。2022年10月に開業し「株式会社ここのやさい」を立ち上げる。「Negicco」の大ファン。

 

地元で採れた新鮮な野菜が届く、野菜の定期便。

――伊藤さんがお取引している農家さんのところに行くというので、ついてきちゃいました。

伊藤さん:「かんもりファーム」の神田さんは「ここのやさい」の立ち上げ当初から協力してくださっていて、ビジネスパートナーのような存在なんです。神田さんは南浜で砂地を生かした農業をしているので、そのことについて話が聞きたくてお邪魔しました。

 

 

――では、伊藤さんに「ここのやさい」のことについていろいろと伺おうと思います。どういうサービスをされているんでしょうか。

伊藤さん:一般家庭向けの野菜セットの定期便と、飲食店向けの野菜の卸売というふたつのサービスをやっています。家庭向けも飲食店向けも基本的に内容は一緒で、折れたキュウリとか傷がついたネギとか、規格外の野菜を取り扱っています。今のところは新潟市内が配達エリアです。

 

――野菜のサブスクですね。じゃあお取引されている農家さんも新潟市内の方が多いんでしょうか。

伊藤さん:市内が多いんですけど、聖籠と阿賀野市からも仕入れています。聖籠は今の季節だと梨。阿賀野市からは野菜の他にお米も仕入れています。

 

――お米も扱っているんですね。

伊藤さん:定期配達を利用されている会員さん向けに、課金アイテムみたいな感じで注文してもらっていて、野菜セットと一緒にお届けしています。お米って重たいから買うのが大変じゃないですか。最近は「Bakery MAA」さんのパンの販売もはじめて、すごく人気なんですよ。

 

身体の不調をきっかけに、野菜中心の食生活へ。

――「株式会社ここのやさい」を開業されたのはいつなんでしょうか。

伊藤さん:昨年9月末に法人登記しました。お店さんと取引するなら法人の方が社会的信用があるって商工会に言われたのもあって。野菜の定期配達サービスをはじめたのは今年の4月ですね。

 

――野菜や農業に興味を持つようになったのには、何かきっかけがあったんでしょうか。

伊藤さん:大学院に行っていた頃に、1年で8キロ太ったんですよ。その原因が運動不足とストレスでした。私、ストレスでめっちゃ食べちゃうタイプで。就職して市役所に入ってからも、ずっとデスクワークなので痩せる余地がないんですよ。肩が凝りすぎて頭が割れそうに痛くなって、それがしんどくてジムに行きはじめました。

 

――耐えられないほどの不調が出るようになってしまったんですね……。

伊藤さん:ジムに行くと、最初に体組成計で身体のデータをとるんです。そのときに体脂肪率が31パーセントくらいあって。「身体の3分の1が脂肪でできているんだ……なんとかしないと」と思って、食事を見直していろいろ試しましたね。

 

――例えばどんな食事を試したんですか?

伊藤さん:鶏むね肉、ブロッコリー、オートミール、大豆ミート……。職場にもサバ缶を持って行って、他の人に「これから飲みはじめるんか」って言われたり(笑)。そうやっていろいろ試した中で、野菜中心の食事がいちばん続けやすかったんです。野菜って脂質を増やさずに味を変えられるからよくって。私はなんでも味噌汁に入れていましたね。それを続けていたら体重が落ちていきました。

 

 

――意識して野菜をたくさん食べると、それだけ身体が変わるんですね。

伊藤さん:でも仕事終わりにスーパーへ買い物に行っても何も欲しいものがないし、お惣菜だと量は足りないしカロリーは高いし。それで、忙しい人でも仕事が終わったら家に野菜が届いているように、置き配で野菜の定期配達をしようと考えました。「生の野菜がもうちょっと手軽に買えるようになったらいいな」って思いもあって。実際に今のお客さんはひとり暮らしの女性とか、小さい子どもがいる方とかが多いですね。

 

――自身の困った体験が「ここのやさい」の立ち上げにつながっているわけですね。やりたいことが決まってから、どう行動をおこしたんでしょうか。

伊藤さん:市役所を辞めて、農家さんのところで働きはじめました。農家さんと共通に話せる知識や話題が欲しかったのと、自分が実際にやってみないと相手にされないだろうと思って転職したんです。

 

 

――規格外の野菜を扱おうと決めたのはどうしてなんでしょう?

伊藤さん:身体と生活を変えるには野菜をいっぱい食べないといけませんけど、規格外のものなら安く手に入りますから。定期便で1度に届けている量は、1日に必要とされている野菜の量350グラムの7日分なんですよ。

 

――へ〜、届いた野菜を食べていれば必要な量が摂れるわけですね。農家さんから野菜を引き取るときに気をつけていることはありますか?

伊藤さん:すぐに傷みそうなものとか、カビが生える可能性のあるものは買わないようにしています。折れているものとか傷がついているものは食べられるので買っています。

 

――委託販売ではなくて買い取りなんですね。

伊藤さん:自分が農業をやっていたとき、直売所は委託販売なので、野菜を持っていっても売れないと廃棄されていたんですよ。そのぶんの手間がゼロになっちゃうので、それはしんどいなって。買い取りならロスもないですから。

 

生活のきつさから解放されて、心のゆとりを持てるようになってほしい。

――伊藤さんはサービスを利用するお客さんにどんなことを届けたくて、日々活動されているんでしょうか。

伊藤さん:みんなそうだと思うんですけど「自分のビジネスによって幸せになってほしい」と思っていて、サブスクについては「野菜中心の生活によって、心身ともに健康になってほしい」と思ってやっています。身体は食べたものからしか作られないので、食べ物で身体が変わるって実感して欲しいし、買い物の大変さとか生活のきつさから少しでも解放されて、心のゆとりを持てるようになってほしい。それでできた時間で自分自身をいたわってもらえたらいいなって。

 

――ご自身が生活のきつさを知っているからこそ、同じような人の気持ちがよく分かるわけですよね。

伊藤さん:「生活きつ〜」って思いましたもん。「こんなに頑張って働いているのに、なんで家に帰ってからご飯を作らなきゃいけないの! もう無理! 寝たい!」みたいな(笑)

 

――仕事終わりにスーパーに行って、重い荷物を持って帰って、それから食事を作りはじめる……。その手間がなくなることで救われる人は多いと思います。

伊藤さん:最初は自分で作ったものを自分で食べる「自炊」の考えがあって、「料理をもっと気楽に考えようよ」って思っていたんです。でもサービスを利用してくれている方の中には、家族や他の人のために食事を作っている方が多くって、「『自炊』じゃなくて『食卓づくり』だな」と気付きました。それなら野菜だけじゃなくてお米やパンのような主食があれば食卓づくりがもっと楽になるだろうし、野菜と一緒に食べると美味しいって知ってもらえたら、無理なく続けられるだろうし。豊かな食卓づくりのお手伝いがしたいですね。

 

 

――最後に、これからチャレンジしていきたいことを教えてください。

伊藤さん:野菜を食べることのハードルをもうちょっと下げられるといいですね。野菜が手軽に食べられるような情報を出し続けて、食べる人が増えたら嬉しいです。あとは海外向けに日本のものを売りたいと思っています。友達がノルウェーの田舎に住んでいるんですけど、日本のものがぜんぜん買えないみたいなんです。それで阿賀野市のお米を送ったら「うますぎてびっくりした」と言っていて(笑)。海外に住む日本人の方が、日本の四季を感じるものを食べられるようにしたいです。

 

 

 

株式会社ここのやさい

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