スタイリストがフラワーアーティストとしてオープンした「Atelier Life」。
カルチャー
2023.02.02
昨年、新潟市南区に「Atelier Life(アトリエ ライフ)」というドライフラワーのお店がオープンしました。フラワーアーティストとして活動する店主の川瀬さんは、いくつものヘアサロンを経営するスタイリストさんでもあるんです。スタイリストとしてどんな経験を積んできたのか、なぜフラワーアーティストをはじめることになったのか。いろいろなお話を聞いてきました。


Atelier Life
川瀬 明美 Akemi Kawase
1977年新潟市南区生まれ。新潟市の美容専門学校を卒業。地元の美容室での修業を経て、ロンドンにある「ヴィダルサスーンスクール」に1年間留学し、そのまま現地のヘアサロン「LA KUTT ZONE(ラ・カットゾーン)」で2年間修業する。一度帰国して新潟のお店で働いた後、再度ロンドンへ渡り「ヴィダルサスーンスクール」でアドバンスコースを取得。帰国後の2004年に独立し「la kutt zone(ラ・カットゾーン)」をオープン。2022年には「Atelier Life」をオープンし、フラワーアーティストとしての活動をはじめる。インテリアコーディネーターの顔も持つ。猫とパスタが好き。
ロンドンのヘアサロンで学んだ「ネバーギブアップ」精神。
——同じ敷地内に「Atelier Life」と「kutt zone Life(カットゾーン ライフ)」のふたつのお店が建っているんですね。
川瀬さん:私はもともとスタイリストをやっていて、「kutt zone Life」は私のプライベートサロンなんですよ。他にも「la kutt zone」「kutt zone fleur(カットゾーン フルール)」というふたつのヘアサロンを経営しています。
——川瀬さんがスタイリストを目指されたのはどうしてなんですか?
川瀬さん:私の母はお洒落が好きだったので、私も小さい頃からよく美容室に連れて行ってもらっていたんです。小学校低学年のときに美容室デビューをして、ストレートパーマをかけたりしていたので、当時から美容師への憧れがあったんだと思います。
——小学校の低学年でストパー……。美容の英才教育みたいですね(笑)
川瀬さん:刷り込まれていたのかもしれませんね(笑)。新潟市内の美容専門学校を卒業してからは、都会への憧れもあって東京のヘアサロンで働きたかったんですけど、お金がなかったので諦めて地元のお店で働いていたんです。でもますます都会への憧れが募って、21歳のときロンドンへ留学しました。
——東京を飛び越えて、いきなりロンドンですか!
川瀬さん:そうなんです(笑)。ロンドンにある「ヴィダルサスーンスクール」のディプロマコースで美容知識、カット技術、語学を1年間学びました。

——じゃあ、川瀬さんは英語ができるんですね。
川瀬さん:まったくできませんでしたが、私が入学したのは通訳のいる日本人クラスだったので、授業は問題なく受けられたんです。ただプライベートでは誰とも会話できなかったので、3〜4ヶ月は孤独なままホームシックを抱えて過ごしました。それでも1年間イギリスで過ごすうちに、自然と英語のヒアリング能力は身につきました。
——留学期間が終わった後はどうされたんですか?
川瀬さん:そのままロンドンにある「LA KUTT ZONE」というへアサロンで、スタイリストとして2年間修業をしました。英語が話せないことでコミュニケーションがうまく取れず、イギリス人スタッフやお客様から差別されたり怒られたりすることもありましたが、イタリア人のオーナーからはとても可愛がっていただいたんです。
——それは何か理由があったんですか?
川瀬さん:現地のスタッフはお金のために働いていたんですけど、私は勉強のために働いていたので、他のスタッフがやらないことも進んでやっていたんです。オーナーはそんな私を見て「君が英語を話せなくて困ったことは一度もない。言葉なんて関係ない。大切なのはハートだよ」と言ってくれて、食事に連れて行ったり、もらったチップを分けたりしてくれました。
——とても素敵なオーナーだったんですね。
川瀬さん:やりたいことがあるのなら、諦めずに続けていればいつかは叶うという「ネバー・ギブアップ」の精神を教えてもらいました。私も彼のようにスタッフを大切にするお店をやりたいと思うようになって、2004年に「la kutt zone」をオープンしました。許可をいただいて、リスペクトしている彼のお店と同じ「LA KUTT ZONE」を店名に使わせてもらいました。

ヘアサロンをオープンして、早々に迎えた大ピンチ。
——オープンされてからお店は順調だったんでしょうか。
川瀬さん:大変でしたね(笑)。オープンしてすぐに中越地震が起こったんです。その影響なのかお客様が減ってしまって、1日に1件どころかゼロの日まである始末でした。スタッフも雇っていたし借金もあったので、かなりの危機感を持っていたんです。
——いきなり大ピンチだったんですね……。
川瀬さん:そんなときに役立ったのが、ロンドンで培った「ネバー・ギブアップ」の精神でした。お金をかけられないので手書きでチラシを作って、かなりの広範囲にわたって飛び込み営業やポスティングをして回ったんです。お店が暇だったおかげで、時間だけはたっぷりあったものですから……(笑)
——そうしたPRをしてみて反響はありましたか?
川瀬さん:飛び込み営業やポスティングのおかげでちらほらお客様が来てくれるようになりました。でももっと効果的だったのは、飲食店をはじめとした様々なお店にチラシを置いていただいたことでした。300軒くらいのお店にお願いして置いていただけたと思います。まだSNSもない時代だったし、そういう方法で宣伝しているところも少なかったんじゃないでしょうか。

——300軒のお店にお願いするってすごい行動力ですね。
川瀬さん:せっかく置いてもらえるスペースが確保できたわけだから、そのスペースがなくならないようにチラシを補充し続けました。置いてもらったお店や日付を記入する「チラシノート」まで作っていたんですよ(笑)
——その頑張りのおかげで、2号店までオープンすることができたんですね。こちらの「kutt zone Life」というサロンは、どういう経緯ではじめることになったんですか?
川瀬さん:自分の子どもを鍵っ子にしたくなかったんです。学校から帰ったら迎えてあげたかったので、家を新築した際にプライベートサロンを併設しました。しばらくはドライフラワーを作る作業場も兼ねていたんですけど、やはりヘアサロンとは分けた方がいいと思って、昨年7月に「Atelier Life」を新たにオープンしたんです。

フラワーアーティストへの、新たなチャレンジ。
——そもそもどうしてフラワーアーティストの仕事まではじめられることになったんですか?
川瀬さん:昔からものを作ることが好きで、サロンをオープンしたときに贈っていただいた祝い花なんかもドライフラワーにして自宅やサロンに飾っていたんです。それを見たお客様から頼まれて、ドライフラワーを作るようになったんですよ。
——そうだったんですね。
川瀬さん:もうひとつの理由としては、私が経営するヘアサロンで働いているスタッフたちに、新しいことへ挑戦する姿を見せたいという気持ちもありました。とにかく今は自分に自信のない子が多いので、「資格を持っていなくても、頑張り続ければ夢は叶う」というところを見せたかったんです。それと同時に自分自身のチャレンジでもありました。

——まさに「ネバー・ギブアップ」の精神ですね。ドライフラワーやフラワーアートについては、どこかで勉強されたんですか?
川瀬さん:本やネットで独学したくらいなんです。だから本職の方から見れば知識や技術はまだまだかもしれませんが、むしろアート感覚で自由に作らせていただいています。
——作るときにこだわっていることってあるんですか?
川瀬さん:まず素材本来のかたちを生かすように作っています。その上でお花だけが浮かないように気をつけながら、飾りたい店舗や生活スペースを生かすようにしているんです。そのために飾りたい場所の写真を見せていただいたり、イメージを詳しくヒアリングしたりしてから考えていますね。

——顔やスタイルを引き立てるように髪をデザインする、そのスタイリストとしての経験が生かされている気がしますね。作品はオーダーを受けて作ることが多いんでしょうか。
川瀬さん:はい。美容室からディスプレイのオーダーをいただいたり、美容ディーラーから祝花のオーダーをいただくことが多いですね。その他にも、「新潟伊勢丹」さんや「カーブドッチワイナリー」さんにもドライフラワーを卸させていただいています。どちらも人のご縁によって実現したんですけど、本当にありがたいと思っています。
——これからはどんなふうに活動していきたいですか?
川瀬さん:コロナ禍で見送っていたんですけど、近々ロンドンのフラワースクールでフラワーアートの勉強をしてもっとスキルを引き上げ、皆様の生活を彩ることのできる作品を作っていきたいですね。

Atelier Life
新潟市南区大通黄金3-4-18
10:00-17:00(木日曜のみ営業)
月〜水曜・金土曜休
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