村上の「Café de Luciole」で楽しむ、ラブリーなシフォンケーキ。
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2020.10.17
旬のフルーツから地元の銘茶まで、絶妙な「しっとりふわふわ」加減で。
村上市の中心部から少し入った閑静な住宅街にひっそりと佇む「Café de Luciole」(カフェ・ド・ルシオール)は、シフォンケーキの美味しさが内外でジワジワと評判を呼んでいる隠れ家的なカフェです。その「しっとりふわふわ」加減は絶妙で、素材には旬のフルーツから地元の銘茶などまでとりいれ種類も豊富。またツボを押さえたラブリーな盛り付けやお店の内装も、カフェ好きの心をくすぐります。修業時代にはTVの某人気料理番組で「未来の巨匠」として紹介されたこともあるという店主の齋藤さんに、話を伺ってきました。


Café de Luciole
齋藤 亜友里 Ayuri Saito
1987年村上市生まれ。高校卒業後に進学で上京し、短大の家政学部を卒業後、調理師専門学校を経て老舗・丸の内ホテルに入社。同館のフランス料理店「ポム・ダダン」で修業し、総料理長の山口仁八郎氏に薫陶を受ける。2018年に地元で独立開業するため退職して帰郷し、自店「Café de Luciole」をオープンした。特技は4歳から18歳まで習っていたピアノ。
何でもシフォンケーキの味になる? 様々な素材に挑戦し、試行錯誤でレシピ化。
――シフォンケーキ、すごい種類があるんですね。
齋藤さん:そうですね。常時すべて取り揃えているわけではありませんが、今のところ30種類くらいレシピがあります。定番のプレーン、フルーツから、地元名産・村上茶の紅茶や抹茶、ヨモギを使った「笹団子シフォン」まで、様々です。人気なのは旬のフルーツを使ったものですね。
――フルーツだけでなく、何でもシフォンケーキの味の素材になるものなんですか?
齋藤さん:生地に入れればいい、といえばそうなんですが、やっぱりそれなりに味の立ったものでないとシフォンケーキに味が乗りにくいんです。例えばスイカとか、できないことはないんでしょうけど、ほとんどプレーン味になっちゃうと思います(笑)。味の曖昧なものは、煮詰めるなりしてかなり濃縮しないと難しいかもしれません。当然、シフォンケーキ自体との相性もあります。一度、コーンポタージュも試したことがあるんですが、コーンポタージュはコーンポタージュのままが美味しいや、という結論になりました(笑)。逆に定番の柑橘系はやっぱりなんでも相性抜群ですね。甘夏とかも。あと以前、桜の花びら漬けで作ってみたこともあったんですが、とても上手くいって美味しかったです。
――プロの方に聞くのも恐縮ですが、美味しく焼けるコツみたいなものはあるんですか?
齋藤さん:私もいろいろ失敗しています(苦笑)。新しい味を試すときなんか特に。レシピとして固めるまでは、試行錯誤の連続です。コツといえばまず、命ともいえるメレンゲをしっかり立てることですね。あと、しっとりふわふわにするには水分量が重要です。これは多すぎても少なすぎてもダメなので、その日の気温や湿度によっても微調整しています。何でもそうかもしれませんが、この辺はもう微妙な足し算引き算の世界です。
――なるほど。他にこだわりポイントはありますか?
齋藤さん:今は割と普通なことなのかもしれませんが、お子さんからお年寄りまで幅広く多くの方に安心して召し上がっていただきたいので、防腐剤や添加物は一切使用していません。また、先ほど述べた良いメレンゲを作るため、卵の新鮮さにはこだわっていて、知人の目利きの専門業者から仕入れています。

修業時代の試作品が高評価。太っ腹な会社で日々鍛錬。
――お店を開くまでの経緯を教えてください。独立まではフレンチのお店で修業されていたんですよね?
齋藤さん:もともと母親は私に自分と同じ栄養士の道に進んでほしかったようで、上京進学の条件が家政学科のある学校で栄養学を学ぶことだったんですが、私は子どもの頃からカフェをやるのが夢で。なので短大の家政学部を卒業した後、地元に帰ってきて就職してほしいという親の期待をよそに(笑)、そのまま東京で調理師専門学校に入ったんです。そこで洋食を本格的に学んで、就職も都内のホテルに。そこのフレンチレストランには結局9年ほどお世話になったんですけど、今につながることを本当にたくさん学ばせてもらいました。
――レストランで修業というと、すごく厳しいイメージがありますが……。
齋藤さん:確かに仕事は厳しかったですけど、意外と休みも取れたし、何より資格取得のための研修や勉強目的の他店での食事など、スキルアップにつながる経費は全て会社が出してくれたのはとてもありがたかったです。普通なら20代そこそこではまず縁のない有名な高級店の領収書でも、気前よく(笑)……とっても良い会社でした。
――今どき素晴らしいですね。当時はTVにも出演したとか。
齋藤さん:そうなんです。見本の料理を作るシェフのお店で修業中の若者を紹介するコーナーで、すごく恥ずかしかったんですけど、厨房に女性社員が私ひとりだけだったこともあって出ることになって。その回は人気アイドルがゲストだったためか、今でもネットで検索すると、海外?の動画サイトで見られるみたいなんですが(苦笑)
――なるほど、後でググってみます(笑)。シフォンケーキの腕を磨いたのもそのお店で?
齋藤さん:そうです。お店としてはスタッフをひとつの分野に特化させず様々なことをさせる方針で、私も通常のコースメニューからブライダル、ビュッフェ、ケータリングなど様々な経験をさせてもらっていたんです。ある日、料理長から私たち若手に「コースのデザートで出すシフォンケーキの試作品を出してほしい」って課題が出されまして。それで私も甘夏のシフォンケーキを作って提出したんですが、それがえらく好評をいただいて。料理長も褒めてくれて、自分はもしかしてこれ得意なのかもしれない、って。もちろんさっき話した通り、会社で様々なお店を食べ歩きさせてくれた成果でもあります。
――それが今やお店の大きな武器のひとつに。
齋藤さん:ありがたいことです。一見回り道のように思えることでも、結果的には全て現在の糧になっています。シェフの山口仁八郎さんは一緒に働いているときからずっと応援してくれて、オープン直後にわざわざお店を見に来てくれたり、現在も何かと気にかけてくれます。このお店の名付け親でもありますし。

新型コロナに負けず、地域を温かく照らす灯に。
――そういえば、「Luciole」ってどういう意味なんですか?
齋藤さん:フランス語で「蛍」という意味で、「のんびり」「ゆったり」といったニュアンスもあります。街を温かい灯でそっと照らすような存在になれれば、と。シェフが幾つか挙げてくれた候補の中から選びました。
――オープンからもうすぐ2年が経とうとしていますが、手応えはいかがですか。
齋藤さん:一時は近所の女子高生から「タピオカ屋さん」なんて呼ばれたりもしましたが(笑)、おかげさまで常連さんも増えてきて、ありがたい限りです。……ただ、やっぱり新型コロナはかなり痛いです。まだ2年目で、対前年比の成長を見ることができないのも残念です。その一方で、シフォンケーキをテイクアウトしていることの周知が進んだのは怪我の功名かもしれませんが。
――大通りに面していなかったり、住宅街にあったりすることもハンデになってはいませんか。
齋藤さん:お店を出すときも多くの方に言われたんですが、私はそれほど気にしませんでしたね。私もお客としてはそうであるように、カフェってもう今は通りがかりに偶然見つけて入るものというよりも、事前に探して目的地として行くものになっていると思うんですよね。このへんのような車社会では特に。むしろ落ち着いた隠れ家的な環境で、ゆったりのんびり寛いでいってもらえればと思います。
――本日はありがとうございました。


ランチプレート 1000yen
季節のキッシュプレート 1000yen
(デザート +200yen)
マウンテンシフォン 750yen
本日のシフォンケーキ 500yen
コーヒー 450yen
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