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「割烹勇吉」の地元に愛される伝統の味と、これからのチャレンジ。

新潟市西区木場で創業100年以上の歴史をもつ「割烹勇吉」。6代目の若板長が作る日本料理は、地元の人に愛される親しみやすい和膳になっているとか。併設されている「惣菜や勇吉」では、普段、割烹料理で出されている座敷料理もお惣菜として販売。今回は6代目板長の佑介さんに、日本料理への想いや今後の展開などについて、いろいろお話を聞いてきました。

 

割烹勇吉

佐藤 佑介 Yusuke Sato

1985年新潟市生まれ。6代目板長。新潟調理師専門学校卒業後、古町にある老舗割烹料理店で5年間修行。趣味はバドミントン、子どもと遊ぶこと。

 

茶屋から割烹料理屋になり、代々継承されている料理の技術。

――「割烹勇吉」さんは、ずいぶん歴史があると聞きました。

佐藤さん:もう130年といってもいいかもしれません。江戸末期から明治末期にかけて北前船の往来が盛んだった頃、勇吉のある木場の隣町の大野町は「新潟の奥座敷」といわれて、酒場や芸妓さんも多く宿場町として栄えたそうです。茶屋から料理屋に変革した三代目「佐藤勇吉」はその頃の先代です。

 

――割烹料理店の役割というのが、若い世代にはわからない人もいると思いますが、どういったときに利用されるものなのでしょうか。

佐藤さん:冠婚葬祭や会社の忘新年会・歓送迎会、個人の会食などですね。最近では米寿や新生児の百日お祝い(お食い初め)、誕生日会など家族の節目の行事での依頼も多くなってきました。お客さんの求められていることも時代によって変化があるのかなと感じています。

 

――料理のお味も、代々受け継がれているんですか?

佐藤さん:たとえば玉子焼きは、ほんのちょっとの匙加減の変化はありますが、基本的にはずっと変わらない味を大切にしています。ただやはり世代が変わると甘いしょっぱいの感覚も変わってくるんです。昔は甘くて濃い方が日持ちもするし振る舞うには好まれていましたが、今は割と薄味のものが好まれる傾向にありますね。うちは地域密着ということもあり、お客様の感想も大切にしながら味を作っていく感じです。

 

 

――佑介さんは小さい頃からお家を継ぐつもりだったんですか?

佐藤さん:漠然と料理の道に進むつもりはありましたが、家を継ぐつもりはまったくありませんでした。商業高校を卒業して、調理師専門学校に1年通い、その後は古町にある老舗割烹料理店で5年間修業しました。縁があって父親と同じ修行先になったのですが、それでも家を継ぐためというわけではなかったんです。ただ、そこで働かせてもらっている中で日本料理の魅力に気づき始めるんですね。ひとつの料理を作るにたくさんの工程があって、それをすべて経てやっと出来上がるということを身をもって知るわけです。1年経つごとに日本料理の深さを知るようになって、どんどんのめり込んでいきました。

 

家業を継ぎ、続けていくことの重要性に気がつく。

――家業である日本料理の魅力に気づくわけですね。

佐藤さん:修行が終わる直前になると、実家のお店を継ぐ重さというか、育ったところで仕事をする大事さを感じはじめるようになりました。年々そういう気持ちはあったんですけど、直前で決意が強くなっていった感じですね。割烹勇吉があるのは、代々受け継いでくれた先代がまずいて、三代目の時代の流れを読み取る力と変革するチャレンジ精神が基礎になり、これまでそれを維持し続けてきたんです。その歴史を思うと「自分が伝え続けなくては」という気持ちになりました。

 

――日本料理と他の料理の違いってどんなとこがあるんですか?

佐藤さん:日本料理はひとつのお皿にすごくたくさん品物がのっていますね。例えば胡麻豆腐にしても筍、椎茸、お麩がのっていたり、そこに餡を掛けたりします。あとはお椀の蓋をちょっと重ねて座敷に出したり、ひとつの品物でも付け合わせの野菜とか料理が多くつきます。しかも筍ひとつとっても、まず剥いて、灰汁をとって、出汁で煮ます。椎茸もまた別で切って、別の出汁で煮て、それを添えるんです。メインだけでなく付け合わせも多くの工程を踏んでやっと一品の料理として仕上がるんですね。

 

――修行中に苦労したことはどんなことでしたか?

佐藤さん:もうすべてでしたね。大根のかつらむきとか教えてもらうんですけど、最初はまったくできないわけです。昼休みなんて休憩もせずに1ヵ月近く練習をしてやっと板さんにこれだったら使えるなって言ってもらえます。そんな感じでひとつひとつ使ってもらえるまでにすごく時間もかかりましたし怒られましたね。くじけそうになるタイミングもたくさんありましたけど、同期も頑張っていたのでお互い高めながらできました。

 

割烹勇吉ならではの味を追求した

――厳しい修業を経て勇吉に戻って来られたわけですね。勇吉ではまずどんなことから始められたんですか?

佐藤さん:僕が習ってきた味と割烹勇吉での味っていうのは違うんですね。それは地域に合わせた味であったり、守ってきた味ではあるんですけど、時代の変化でも味を変えていかなければいけないと思っていたのでそこをすり合わせていく作業からでした。僕が作って、親父に確認してもらいながら、最終的にはこういう味でいこうみたいな工程を何度も繰り返して決めていきました。

 

――役割分担はあったんですか?

佐藤さん:最初の半年から一年くらいは割烹勇吉のやり方を勉強しなおすような期間でした。だんだん、親父が刺身の担当になって、僕が切りものとか煮方の味付けを担当していきました。

 

――煮方の立場になってから、大事にしていたことはどんなとこですか?

佐藤さん:お客さんの声はよく聞くようにしました。自信はあったんですけど、やっぱり「今までとちょっと違うね」っていう声なんかを聞くこともあって、何が悪かったんだろうっていうアンテナは常に張って考えるようにしていました。

 

――お客さんの声がダイレクトに聞ける環境だったんですね。

佐藤さん:併設してある惣菜屋もやっていて、お客様がお買い物している中での会話で「この前のどうでした?」みたいなフランクな感じでコミュニケーションはとれる環境でしたね。

 

――じゃあ、昔から「惣菜や勇吉」も併設していたんですね。

佐藤さん:もともとは大手スーパーのフランチャイズとして運営していたんです。3~4年前くらいからは独自で運営するようになりました。今は自分たちですべて仕入れをしたり取り引きしたりしています。フランチャイズのときに比べると、総菜はありものよりも割烹の料理が増えてきています。

 

割烹料理がそのまま食べられる「惣菜や勇吉」

――割烹料理をお惣菜としても販売しているということですか?

佐藤さん:昔は冠婚葬祭とかで忙しい時期は、割烹は割烹で料理を作って、総菜は地元のおじいちゃんおばあちゃんの食卓みたいな感じで揚げ物とかが多かったんです。でも裾野を広げたい気持ちもあったので、今では割烹料理も含めたいろんなお惣菜を出すようになっています。

 

――すごい贅沢なお惣菜ですね。

佐藤さん:胡麻豆腐、茄子の揚げびたし、揚げ出し豆腐など出汁から違うものを使って提供させてもらっています。郷土料理のかきあえなます、焼き魚、刺身、玉子焼きなんかもお座敷で出しているものをそのままお惣菜として販売しています。

 

 

――方向転換したのはなにか狙いがあったんですか?

佐藤さん:新型コロナが転換期となりましたね。昔は惣菜は小売業、割烹は飲食業としてまったく別物として運営をしていました。割烹って結局来て座敷にあがってもらわないと食べてもらえる機会がないんです。でも惣菜であれば気軽に買っていただいて食べてもらえるので、割烹料理でお惣菜として出せそうなものをメニューに加えて出していけばいいんじゃないかって発想です。

 

――なるほど、ここでもコロナ禍の影響があったんですね。

佐藤さん:こんな状況になる前までは今まで通りのことを一生懸命やっていたんです。お客さんの声を大切にしながら、座敷にあがってもらって、料理を出すっていう。コロナ禍になってからは、もっと自分たちから発信していくっていうことが求められるようになったと思います。僕は料理を作ることしかできないですけど、妻がお客さんとの接点をたくさん作りながらプロデュースしてくれています。

 

――具体的にはどんなことを?

佐藤さん:昔ながらの受身の経営では、どんどん経営難になっていってしまいます。何もしなくても注文がきていた時代を経験していると、どうしてもそれをずっと続けてしまうんです。なので裏方から見直しつつ改善していきました。地域の方たちを大切にしながら、もっと広いエリアから来てもらえるような仕組みづくりをここ6~7年くらい続けています。最初は地元の新聞広告から始めて、SNSとかも発信するようになりました。今はご年配の方でもSNSを見ている方たくさんいるので、反響も良いですね。今は週に1回~2回、土日を基本にして、座敷料理のお惣菜をたくさん出す日というのを作っています。日替わりで平日もお惣菜のメニューを決めて出しているんですけど、土日は種類も量も多く出すようにしています。季節に1回は月替わりのメニューで座敷料理のお弁当も作っています。新しいこと始めるのはやっぱり体力を使いますけど、せっかくある技術をもっとたくさんの人に知ってもらいたいので頑張ってやっています。

 

 

――お弁当について詳しく教えてください。

佐藤さん:例えば3月だと「ちらし寿司と季節の煮物」という二段重弁当を3月1日から1ヵ月販売して、4月は4月でまた別のメニューで1ヵ月販売する予定です。その季節の素材を使いながら勇吉の味を楽しんでもらえればと思っています。

 

――これからの目標は?

佐藤さん:こんな時代だからこそもっとチャレンジをしていきたいですね。現在やっている座敷料理のお惣菜や会席弁当の販売もそうですが、今、オーロラサーモンや新潟県産のブランド豚を使った「勇吉ブレンドの味噌で漬けた真空パック商品」の発売もすすめています。割烹勇吉として素材にも味にもこだわりを持って、より多くの人が気軽に自宅でもお座敷料理を楽しんでもらえるように頑張っていきたいですね。

 

 

「割烹勇吉」のお座敷料理の惣菜販売、会席弁当などの情報はInstagramで確認することができます。「自宅でもこだわりの日本料理を楽しみたい」という方は是非チェックしてみてください。

 

 

割烹勇吉

新潟市西区木場2382-1

025-377-2303

9:30-18:00(土曜日のみ10:00-18:00) ※惣菜大売出日10時開店

定休日:1月1日・2日、月曜日、臨時休業あり

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