新潟市役所前に、30年以上も続いている「カフェ・ド・プライム」という喫茶店があります。外からは中の様子がよくわからなくて、ちょっと入りづらかったりもするんですが、中に入ってみると広くて綺麗なお店で落ち着けます。その「カフェ・ド・プライム」の代名詞になっているのが、「本格辛口チキンカレー」。どうして喫茶店なのにカレーが有名なんでしょう。今回はシャイなマスターに代わって、一緒にお店を切り盛りしている奥さんからお話を聞いてきました。
カフェ・ド・プライム
近藤 ノリ子 Noriko Kondou
1960年加茂市生まれ。暁星商業短期大学(現新潟中央短期大学)卒業後、新潟三越に就職。1988年にご主人が「カフェ・ド・プライム」をオープンし、その翌年からお店を手伝いはじめる。趣味は編み物やケーキ作り。
——今日はマスターに代わって奥さんからお話をお聞きします。よろしくお願いします。早速ですが、マスターはずっとこのお仕事を?
近藤さん:最初にお父さんと共同で喫茶店をはじめて以来、マスターはずっと喫茶店を経営してきたんですよ。以前は万代、駅前、西堀の3ヶ所で喫茶店をやっていたんですが、すべて賃貸の店舗でやっていたので、いつかは自分の持ち物件でお店をやりたいと思っていたんです。
——それでこの物件を購入されたんですね。
近藤さん:抽選に申し込んでみたら当たっちゃったんです(笑)。それで昭和63年に「カフェ・ド・プライム」をオープンしました。かなり借金もしたので心配でしたけど、まわりにある市役所や新潟大学付属病院などの皆様からご来店いただけて、常連のお客様がたくさんできたのはありがたかったですね。
——確かにとてもいい場所ですよね。奥さんは最初からお店を手伝っていたんですか?
近藤さん:いいえ、「カフェ・ド・プライム」がオープンして1年ほど経った頃に、勤めていた新潟三越を退職してお店の手伝いをはじめました。飲食業は経験がなかったので少し不安もありましたけど、百貨店で長年やってきた接客業が役に立ちましたね。ただ、自分が調理することになるとは思ってもいませんでしたけど(笑)
——奥さんも調理されるんですか?
近藤さん:そのために調理師免許も取ったんですよ。ただ、カレーだけはマスターがこだわりながら作っています(笑)
——喫茶店なのに「チキンカレー」がお店の顔になっていますよね。そもそも、どうしてメニューに加わったんですか?
近藤さん:マスターは東京まで行って、いろいろなお店のカレーを食べ歩いていたほどのカレー好きなんです。そんなマスターお気に入りのお店が閉店することになったので、そこのチキンカレーのレシピを受け継いで、自分なりに改良したのが「カフェ・ド・プライム」のメニューになっているチキンカレーなんですよ。少しでも美味しくしたいと、今でも改良を続けているんです。
——マスターの思い入れが強いメニューだったんですね。
近藤さん:以前は「ビーフカレー」もあったんですけど、「チキンカレー」一本に絞ったんです。それがかえって良かったみたいで、テレビや雑誌でカレー特集があるたびに取り上げていただけるようになりました。
——いろいろな種類があるよりも、特化したものがひとつあると印象に残りやすいんでしょうね。美味しいのはもちろんですが。
近藤さん:「チキンカレー」だけに絞ったかわりに、辛さを押さえた「マイルド」と辛さを強くした「激辛」があって、辛さによってお好みのカレーを3種類の中から選べるようにしています。ちなみに、さっき召し上がっていただいたのはノーマルな「チキンカレー」です。
——ノーマルだったんですね……。喫茶店のカレーにしては、けっこう辛かったです(笑)。でも美味しいのでどんどん食べちゃうんですよね。
近藤さん:ありがとうございます。7種類のスパイスを使っていて、他にも手羽中から出るダシのおかげで、しっかりとうま味やコクのあるカレーになっているんじゃないでしょうか。
——確かにこの辛さは印象に残りますね。そのせいか、コーヒーがより美味しく感じます(笑)
近藤さん:ランチの「チキンカレー」は、コーヒーや紅茶を無料でサービスしています。ランチメニュー以外のコーヒーはオーダーをいただくたびにサイフォンで淹れていますので、いつでも淹れたてを味わっていただけるんです。
——カレー以外にも気になることがいくつかあるんですよね。壁一面に飾られたお皿とか……。
近藤さん:あれはマスターのコレクションで、ロイヤルコペンハーゲンの「イヤープレート」です。1908年以来、毎年発売されているコレクターの多いお皿なんです。こちらにはドイツのマイセン磁器も飾ってあります。
——へ〜、錚々たるコレクションですね。あと灰皿がお店にあるのを、久しぶりに見た気がします(笑)
近藤さん:今は禁煙のお店がほとんどで、煙草を楽しみたい方が入れるお店がないんですよね。「職場で禁煙、お店でも禁煙」では煙草が好きな方がかわいそうだと思うんです。賛否あるとは思いますけど、煙草を吸えるお店があってもいいんじゃないかと思って、うちでは灰皿を置いています。
——煙草を吸いたい人にとっては天国ですね(笑)。ところで、30年以上この場所で喫茶店を続けてきたなかで、大変だったこともいろいろあったんじゃないですか?
近藤さん:まあねえ、バブルが崩壊して不景気になったり、新潟中央区役所ができて職員さんが異動したり、大手カフェチェーンがたくさん進出してきたり……いろいろあったけど、今のコロナ禍が一番大変かもしれないですね。お客様が本当に減ってしまいましたから。
——長くやっていると、それだけ大変なことも多いですね。
近藤さん:そんな大変なときでも、ずっと常連のお客様たちに支えられてきたんです。コロナ禍でお客様は減ってしまいましたけど、そんな中でも来てくださる常連の方もいらっしゃるので、そういうお客様には本当に感謝しています。ご両親に連れて来られていた子どもが、結婚して自分の子どもを連れて来てくれたり、市役所を定年退職した常連さんが久々に立ち寄ってくれたりすると、長くやってきてよかったと嬉しくなりますね。これからもお客様を大切にしながら、できるだけ長く続けていけたらいいなって思っています。
カフェ・ド・プライム
新潟市中央区医学町通2番町10-1 ダイアパレス医学町1F
025-224-6855
7:30-20:00(土曜9:00-19:30)
日曜休