新潟市東区の山の下地域にオープンした「カフェまる。」は、代表の眞柄さんが長い間思い描いてきた夢を、ふたりのお友達と実現させたカフェです。3人はどのようにこのカフェを立ち上げ、どんな思いで営業しているのでしょうか。今回は眞柄さんからお話を聞いてきました。
カフェまる。
眞柄 貴子 Takako Magara
1961年新潟市中央区生まれ。証券会社や警備会社、新聞販売店に勤めた後、パソコンのスキルを身につけ「PCグレイシス」というパソコンサポートの会社を立ち上げる。2019年12月に山の下地域で「カフェまる。」オープン。地域ボランティアや役員などをいくつもこなし、地元愛は人一倍強い。
カフェまる。
井筒 佳子 Keiko Izutu
1950年大阪府生まれ。大阪の洋裁学校を卒業後、新潟で写真の現像や歯科助手をしていた。新聞配達をしているときに眞柄さんと出会い、一緒に料理教室へ通う。定年退職後は介護施設で調理の仕事をしていたが、眞柄さんに誘われて「カフェまる。」立ち上げに参加。おもに料理を担当。趣味はパッチワークや編み物など。
カフェまる。
清水 くみ子 Kumiko Shimizu
1955年富山県生まれ。京都の大学を卒業後、保険会社に勤めていたが結婚を機に新潟へやってきた。眞柄さんとは家族を通して知り合い、同じ料理教室に通うようになる。知的障がい者施設で作業のサポートをしていたが、眞柄さんの誘いに応じて「カフェまる。」に参加。主にお菓子作りを担当している。趣味はお菓子や小物を作ること。
——眞柄さんはカフェを始める前は別のお仕事をされていたんですよね?
眞柄さん:新聞配達をしていたときにショッキングなことがあって、それがきっかけでメンタルをやられちゃったの。そのとき通っていたお医者さんから、「自分が夢中になれることを見つけた方がいい」ってアドバイスされて、パソコンを勉強し始めたのよ。そしたら面白くなっちゃって、そのうち新聞配達をしながらお年寄りにパソコンを教えるようになってたのよね。専門用語を使わずに教えるからわかりやすいって評判になって、最初30人だった受講者が1年で300人に増えちゃった(笑)
——え、300人? すごいじゃないですか!
眞柄さん:もう起業するしかなくなっちゃったから、新聞配達の仕事を辞めて「PCグレイシス」っていうパソコンサポートの会社を立ち上げたの。テナントを借りて4人でやっていたんだけど、最後はお客様が3,000人にまでなったのよ。でも父の介護をしなければならなくなって、会社を解散して実家の2階で介護をしながら営業を続けてたのね。
——そこからどうしてカフェを始めることになったんですか?
眞柄さん:介護をしていた両親が亡くなって、主人も亡くなって、そうしたら「自分のやりたいことをやってみよう」って思い始めたの。それで若い頃からの夢だったカフェをやろうと思って、本やインターネットでカフェの起業について勉強したのよ。メニューや制服の準備とか、店舗の準備とか、お金がどれくらい掛かるかとかね。
——なるほど、カフェは眞柄さんの夢だったんですね。井筒さんや清水さんは眞柄さんが誘ったんですか?
眞柄さん:ふたりとも同じ料理教室に通っていたお友達だったのよ。井筒さんとはジョギング中に偶然再会したの。ある本に「カフェは立ち仕事だから体力をつけた方がいい」って書いてあったから、私、毎朝ジョギングをしてたのよ。そしたらウォーキングをしていた井筒さんにバッタリ出会って、そのときに一緒にカフェをやろうって誘って連絡先を交換したの。
——連絡して会ったわけじゃなくって、偶然再会したんですね!
眞柄さん:そうなの。清水さんともスーパーで買い物してたら偶然再会したの。ふたりとも私の誘いに乗ってくれて、ひとりで見ていた夢が3人で見る夢になったのよね。それからは勉強のためのカフェめぐりや、お皿や冷蔵庫選び、コーヒーの勉強も全部3人でやってきたのよね。週に1回会議を開いて、メニューを考えたり、次に視察するカフェを選んだりもしていたわね。
——オープンのときはどんな様子だったんですか?
眞柄さん:パソコンサポートのときのお客様や地域の方々から、置く場所がないほどたくさんのお花をいただいたの。カウンターがお花で埋まってお客様の座る場所がなくなっちゃった(笑)。人生でこんなにお花をもらう機会なんてないから、カフェが成功しなくてもその経験だけでも満足だって思ったわ(笑)
——すごいですね! じゃあ順風満帆って感じのスタートでしたね。
眞柄さん:でも飲食業なんて初めてのド素人だったから、3人ともお客様が来るだけでもドキドキして(笑)。グラタンとハンバーグを間違えたり、ホットとアイスを間違えたり、オーダーの聞き違えもたくさんあったけど、ここまではお客様に育ててもらってきたって感じ。お客様の要望に耳を傾けて、できる限り応えながらお店づくりに生かしてきたんだよね。
——お客さんってどんな人が多いんですか?
眞柄さん:年配のお客様とかひとり暮らしの方とかが多いかな。私は山の下地域コミュニティのボランティアや役員をやってきたんだけど、この辺には地域の人たちが気軽に立ち寄れるコミュニティスペースがないと思ってたのよ。それで自分たちがやるカフェが、地域のお茶の間みたいになってくれたらいいなって思ったの。
——そういう工夫をしているんですか?
眞柄さん:たとえば店舗の建物は、床にたくさんの鉄骨が使われて強化されていたり、壁も角が直角じゃなくてカーブしていたり、減災設計になっているの。料理も毎日食べて飽きないような家庭料理の延長になっているのよ。ハンバーグもグラタンも家庭で食べるような、おふくろの味を目指してるのよね。なにより、おばさん3人でやっているから年配の人も気軽に入りやすいじゃない(笑)
——今後やってみたいことってあるんですか?
眞柄さん:「これからカフェをやりたい」っていう人たちにアドバイスできるくらいカフェを成功させたい。若い人とか主婦とかの起業したい人たちに、カフェを始めるための手続きやノウハウを教えてあげられたらいいよね。あとはこれからも3人で仲良くカフェを続けていきたい。足腰が弱って、みんな座ったまま仕事してるかもしれないけど(笑)
以前は取材がきて写真撮影があると、みんな隠れていたそうですが、今では取材慣れしてポーズまですっかり決まっています(笑)。そんな愛らしい奥様3人組が息の合ったコンビネーションで営業している「カフェまる。」。気を使わない雰囲気は、山の下地域の人たちはもちろん、外食が苦手な人にもおすすめです。3人の奥様が笑顔で迎えてくれますよ。
カフェまる。
〒950-0054 新潟県新潟市東区秋葉1-2-8
025-311-7725
9:00-18:00
木曜休