阿賀野市のいいものにこだわった和食、古町「あがの割烹 千原六助」。
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2023.01.27
器や調味料、食材に阿賀野市のものを取り入れている和食店「あがの割烹 千原六助(ちはらろくすけ)」。日本橋の老舗と新潟の人気料理店で経験を積んだ、阿賀野市出身のご主人が営むお店です。今回は店主の早川さんに、修業時代のことやお店のこだわりなどいろいろとお話を聞いてきました。

あがの割烹 千原六助
早川 健人 Kento Hayakawa
1984年阿賀野市(旧水原町)生まれ。武蔵野調理師専門学校を卒業後、老舗割烹「日本橋とよだ」で6年間修業。新橋の居酒屋で働いた後、25歳のときに新潟に戻る。「よね蔵グループ」と「株式会社天朝閣」で経験を積み、2019年に東堀通で「あがの割烹 千原六助」をオープン。3児のパパ。

日本橋の老舗でスタートした、料理人の道。
——早川さんは昔から料理人になりたかったんですか?
早川さん:手先を動かすのが好きだったので、高校生の頃は美容師か大工になりたいと思っていました。でも父親が「料理バンザイ」という番組が好きで、料理を仕事にしたら父に認めてもらえるんじゃないかという期待もあって、料理人になろうと思ったんです。と言っても実家は農家なんですけどね(笑)。両親からは「高校を卒業したら家を出て都を見てこい」と言われていたので、池袋にある調理の専門学校に進学しました。
——当時の早川さんはどんな学生さんだったんでしょうか。
早川さん:「大勢の学生の中でトップにいたい」という気持ちがあって、誰よりも早く就職を決めました。いくつかの求人の中から気になるお店に仲間と食べ歩きに行って、親方がカッコよくて雰囲気のいいお店に決めたんです。学生が緊張しながら食事していると、お店側もすぐに分かるんですね。「働かせてもらいたい」と伝えて即採用してもらいました。

——最初のお勤め先はどんなお店だったんでしょう?
早川さん:150年以上続く「日本橋とよだ」という和食店です。学生時代からアルバイトをしていたんですけど、4月に僕が正社員となった途端に職場のみんなの目の色が変わって厳しくなったんです。言葉遣いがしっかりしていなくて、先輩から口を聞いてもらえなくなったこともありました。そんな経験も今の忍耐力につながっているように思います。
——なかなか厳しそうですね……。
早川さん:最初は親方のカバン持ちと洗い物が僕の仕事だったんです。食洗機なんかなくてぜんぶ手洗いだから、電車でつり革を掴んだら荒れた指から血が出てきたこともありました。でもまだ若かったから妙に自信があったんですよね。「俺の方が先輩よりもできるから、いろいろ任されて当然だ」という思いがあって、それを親方に直談判したこともありました。そしたら「腕はあるかもしれないけど、お前にはまだ経験がない」と言われて。その言葉に納得して腹をくくってから、親方に認めてもらえたように思います。それからの6年間で、調理場のひと通りの仕事を経験させてもらいました。
——じゃあ、「日本橋とよだ」さんでの経験が今の軸になっている?
早川さん:今うちでやっている王道の和食はそこで教えてもらいました。コロナ禍を乗り越えられたのも「日本橋とよだ」のおかげだと思っています。「日本橋三越」のデパ地下でお惣菜やお弁当を販売していたので、その経験から「千原六助」でもハイクラスのお弁当をテイクアウトメニューとして提供することができましたから。
——「日本橋とよだ」さんのあとはどうされたんでしょう?
早川さん:新潟に戻る前に和食だけじゃなくて別業態も経験したいと思いまして、新橋の居酒屋で働きました。でもそこで完全に鼻を折られましたね。それまでのスキルがまったく通用しなかったんです。注文を受けてから作る「バイ・オーダー」についていけなかった。悔しい思いもしましたけど、別のジャンルで経験を積んできた人たちがいる現場で学ぶことも多かったですね。「お客さまを喜ばせる」って意識が高まりました。

経験を積んでもなお精進したい。古町でお店を開いた理由とは。
——新潟に戻って来られたのは?
早川さん:25歳のときです。東京の包丁屋さんからの紹介で「よね蔵グループ」で7年間働かせてもらいました。「海鮮家 葱ぼうず」「越佐の旬と美酒 海老の髭」などでステップを踏ませてもらって、料理長も任せてもらいました。独立したい気持ちが強かったんですけど、そのときはまだ「自分の力はいったいどの程度なんだろうか」と壁にぶち当たっていましたね。
——日本橋と新潟の人気店で経験を積まれても、複雑な思いをお持ちだったんですね。
早川さん:それから一旦初心に戻ろうと思って、スワンレイクビールや五十嵐邸ガーデンなどを運営する「株式会社天朝閣」にお世話になったんです。少子高齢化で冠婚葬祭の案件が少なくなる中で新たに居酒屋部門を拡充しようと動き出していて、僕は都内への出店などを任されていました。「株式会社天朝閣」で働いているうちに、地元である阿賀野市の魅力を改めて知ることができたんです。町のこと、食材のこと、たくさんの発見がありました。

——ご自身のお店をはじめられたきっかけは?
早川さん:親父が亡くなって、「長男である僕が家庭も母屋も土地もすべて守らなくちゃいけない」と感じたときに「起業するしかない」って思ったんです。それで物件探しに動き出したら、「よね蔵グループ」の総料理長を経験された方から「移転をする都合で物件が空くから、腕試しに古町で店をやってみたらどうか」と言ってもらったんです。それで東堀通で「千原六助」をはじめることができました。
——阿賀野市でお店を開くことは考えなかったんですか?
早川さん:もちろん考えましたけど、阿賀野市にたくさんあるいいものを新潟市で紹介したいと思ったんですよ。それに素敵なお店がたくさんある古町で営業したいという気持ちもありました。これまでのように揉まれてないと僕自身が精進しないと思ったので。
——古町を気に入っていらっしゃるんですね。
早川さん:経営者の方も多くいらっしゃるから、分からないことは教えてもらえるんです。この町での生き方とか、人生勉強をさせてもらえるのが古町だと思っています。

食事を楽しみに来るお客さんが多い「千原六助」。
——「千原六助」のことについても教えてください。お店で使うものは阿賀野のものにこだわっているんですよね?
早川さん:阿賀野の器や調味料を使っています。すべて阿賀野の食材で揃えるわけにはいかないですが、なるべく県内の素材を選ぶようにしています。
——おすすめのメニューは?
早川さん:自分で合わせた出汁と旬の素材で炊く「蒸し釜戸ご飯」ですね。お米のコンクールで金賞を取った笹神産の「やまびこ米コシヒカリ」を使っていて、お客さまのほとんどが注文される一品です。
——それは美味しそうですね。
早川さん:おかげさまで満席になることも多くて、夜の8時半以降ならご案内できるとお伝えすることもあるんですけど、そうするとだいたい断られるんですよ。そんなことが続いて「うちは飲み屋じゃなくて、ご飯屋さんなんだな」って、最近気が付きました。「食事がメインでついでにお酒もある」って感じのお店なんでしょうね。
——今日はお昼過ぎにお邪魔していますが、いつもこれくらいの時間から仕込みをされているんですか?
早川さん:午前中は仕入れ、昼過ぎには仕込みをはじめます。当店のいちばんのこだわりは、できる限りのものを手作りすることなんです。8割、9割を手作りしているから、この時間から準備しないと間に合わないんですよ。仕入れによってメニューを変えていて、夕方にその日の献立を印刷しています。それほどたくさんのメニューがあるわけではないですが、どれもおすすめできるものばかりです。

——朝は仕入れ、昼過ぎから仕込みと丸一日料理漬けなんですね。
早川さん:「自分にとって料理って何なんだろう」ってたまに考えますね。大変ですけど、この仕事しかしてこなかったので比較する職種がないんです。ファストフードでもなんでも、食べたいものを食べると至福のひとときを過ごせますよね。だから料理人は「人に笑顔を届ける仕事」だと思っていますよ。
——さて、これからの目標を教えてください。
早川さん:う〜ん。お店の目標は思いつかないけど、僕自身の目標は「自慢できるパパになること」です。この仕事をしているとなかなか子どもと一緒に夕飯を食べられませんから。その分、「子どもに愛されるパパでありたい」って気持ちがありますね。
——もうひとつ気になったことがあります。店内のBGMにヒップホップが流れているのはどうして?
早川さん:最近格闘技の中でも総合格闘技が盛り上がっていますよね。うちの店も、肉も魚も野菜もある「総合料理」って思っているんですよ。それに僕は自分のことをアスリートだと思っているから、アスリートが入場時に気分を高めるファイトソングと同じように、仕込みのときはヒップホップを流して6時のオープンに向けて気持ちを高めています。

あがの割烹 千原六助
新潟市中央区東堀通9-1407-3プロジェクト第一ビル 1F
<TEL> 025-378-6224
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