Things

歴史あるパンを作り続ける加茂のパン屋さん「千代田ベーカリー」。

加茂市にある昭和32年創業の老舗パン屋さん「千代田ベーカリー」。市内に3店舗を展開していて、地元では知らない人がいないお店です。店内に並ぶたくさんのパンの中でも特に「コーヒーケーキ」「アーモンドチョコロール」は、昔から変わらない人気を誇るロングセラー。今回は「千代田ベーカリー 幸町本店」の轡田さんに、お店の歴史やパンづくりについてお話を聞いてきました。

 

 

千代田ベーカリー

轡田 昭彦 Akihiko Kutsuwada

1963年加茂市生まれ。高校卒業と同時に「千代田ベーカリー」に勤務。現在は部長として幸町本店を任されている。焼肉が好きで、ホルモンには特に目がない。

 

新潟から暖簾分けし、いまや加茂の名店に。

——「千代田ベーカリー」って新潟市にもありましたよね?

轡田さん:うちの初代社長が、新潟市の横七番町にあった「千代田ベーカリー」で修行をして、暖簾分けというかたちで加茂市に「千代田ベーカリー」を出したんですよ。今は5代目が経営しています。新潟市のお店は閉店してしまったので、今は加茂市にある3店舗だけになってしまいました。

 

——その3店舗はどちらにあるんでしょうか。

轡田さん:まずこの「幸町本店」があって、加茂駅前に「駅前店」、加茂市役所の近くに「ココラッテ店」があります。あと以前は「五番町店」があったんですけど、近所の火事のもらい火で店舗が全焼してしまったんです。今は「にいつフードセンター」の中でパンを販売しています。本店も川のそばで営業していたときは水害にあったことがあるんですよ。

 

——あらら……。長い歴史の中には大変なこともあったんですね。

轡田さん:私が印象に残っているのは、平成17年の新潟大停電ですね。停電で家電が使えなくて料理できないから、そのまま食べられるパンを買う人が店に殺到したんですよ。お店でもレジが使えなかったので、電卓で計算して対応しました。

 

パン職人として普段から気をつけていること。

——轡田さんはどうしてパン職人になろうと思ったんですか?

轡田さん:私の母が初代社長の妹で、私は甥にあたるんです。子どもの頃からお店に入り浸ってパン作りを見てきたので、いつの間にかパン職人に憧れるようになっていたんです。ときどき自分が作ったパンを焼いてもらったりして、うれしかったのを覚えています。高校を卒業すると同時に「千代田ベーカリー」で働き始めました。

 

——パン職人の修行はどうでしたか?

轡田さん:少しずつ覚えていったので、それほど大変ではなかったです。ただ失敗したことは何度かありましたね。たとえば、以前は食パンを1回に72本作っていたんですけど、だんだん作る本数が減って、1回に作る本数が36本になったんです。でも私が間違えて塩を以前の分量で入れてしまって……。食パンを全部破棄することになってしまったんです。

 

——もったいない……。パン作りでは分量って大切なんですよね?

轡田さん:そうですね。いつも同じ味になるよう、普段から測りものには気を使っています。でも湿度や水の温度が変わることで、パンの原料になる粉の状態も変わってくるんですよね。水の温度が高いときは氷水を使って冷やしたりしますが、逆に冷やし過ぎて今度は温度を戻したりして……なかなか大変なんですよ(笑)

 

コーヒーが入っていないパンなのに「コーヒーケーキ」?

——それでは「千代田ベーカリー」のおすすめパンを教えてください。

轡田さん:まずは「コーヒーケーキ」でしょうかね。40年以上も愛され続けているロングセラー商品です。「コーヒーによく合うパン」ということでこの名前がつきました。柔らかくて食感がバウンドケーキに近いから、パンだけど「ケーキ」っていう名前になっています(笑)。作り方も手間がかかっていて、茹で小豆を入れた棒状の生地を三つ編みにして、発酵させてから焼き上げるんです。そうすることで食感が変わってくるんですよ。

 

 

——てっきりコーヒーが入ったケーキだと思ってました(笑)

轡田さん:コーヒー味なのは「アーモンドチョコロール」の方ですね(笑)。このパンも歴史が古くて、私が保育園の頃の写真の中に写っているものがあったんですよ。コーヒークリームをはさんだコッペパンなんですが、品名の正しい由来が誰にもわからないんです(笑)。一説には、たまたま袋屋さんが持ってきた袋のサンプルに「アーモンドチョコロール」って名前が印刷されていて、その袋をそのまま使ったといわれています。

 

 

——めちゃめちゃゆるい由来ですね(笑)。でも50年以上も愛され続けているロングセラー商品なんですよね。

轡田さん:ありがたいことですよね。でもロングセラーの人気に頼っているばかりではダメだと思うので、時代に合わせたパンも作っていこうと思っています。最近では「マリトッツォ」や「フルーツサンド」にも力を入れています。

 

これからも「ふるさとの味を真心で」。

——轡田さんがパン職人としてやりがいを感じるのって、どんなときですか?

轡田さん:ときどき地元の小学生が工場見学に来てくれるんです。その後でいただいたお礼の手紙を読むと嬉しくなりますね。パンを食べた子ども達の反応を見ていると、こちらも勉強になるんです。あと中学生の職場体験にも対応していて、最近は求人募集をしてもなかなか人が集まらないので、そうした体験を通じてパン屋の仕事に興味を持ってくれる子どもが増えてくれると嬉しいですね。

 

——パン職人に憧れる子が増えるといいですね。これからも長く地域に親しまれるお店として続けていってくださいね。

轡田さん:ありがとうございます。「ふるさとの味を真心で」という当店のキャッチコピーの通り、昔から続く加茂のパン屋として、心をこめて味を守っていこうと思います。あと、それだけじゃなく、通販サイトを使いながら「千代田ベーカリー」のパンを全国にも広めていきたいですね。

 

 

取材前から不思議だった「コーヒーケーキ」や「アーモンドチョコロール」の謎。はっきりと商品名の由来を知っている人がいない、というのも、歴史あるロングセラー商品ならではですね。これからも加茂市を代表する老舗パンさんとして、長く愛され続けてほしいです。

 

 

千代田ベーカリー 幸町本店

新潟県加茂市幸町1-8-29

0256-52-9872

7:30-18:20

日曜休

 

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP