新潟大学がある五十嵐エリアには、リーズナブルに飲食できるお店がたくさんあります。今回紹介する「麺飯食堂 中華いがらし」もそのひとつ。定食スタイルの中華料理を気軽に味わうことができるお店なんです。今回はオーナーの五十嵐さんから、本場での修業経験や料理のこだわりについてお話を聞いてきました。
麺飯食堂 中華いがらし
五十嵐 潤 Jun Igarashi
1971年東京都生まれ。都内の調理師専門学校を卒業後、中華料理、韓国料理、日本料理などを経験。2005年に独立して下北沢でダイニングキッチンをオープンし、結婚を機に移住した新潟で2018年に「麺飯食堂 中華いがらし」をオープンする。若い頃はゴルフにスキー、マリンスポーツなど幅広く楽しんでいた。
——まずは五十嵐さんが中華料理をはじめたいきさつを教えてください。
五十嵐さん:親の勧めで都内の調理師専門学校へ入ったものの、本当は美容師になりたかったんですよ。だから調理師専門学校を卒業したら、改めて美容専門学校に入ろうと思っていました(笑)
——そうだったんですね(笑)
五十嵐さん:ところが調理師専門学校の担任から「俺の顔を立てて面接だけでも受けてくれ」と言われたので、顔を立てて中華料理店の面接を受けたら就職することになっちゃいまして……(笑)
——中華料理店で働いてみていかがでしたか?
五十嵐さん:とにかくやることがいっぱいあって、朝は8時に出勤して家に帰るのは夜中の1時〜2時でした。でも親方がみんなの面倒をよく見てくれて、ゴルフやバーベキューに連れて行ってくれたりしましたね。有名人も来るお店だったので、いろいろな人とのつながりもできました。
——面倒見のいい親方さんだったんですね。そのお店では長く働いていたんですか?
五十嵐さん:多くの料理人が働いていたので分業制だったんですけど、長く勤めている先輩ほど大事なポジションを任されているんです。僕もいろいろなポジションで勉強したかったんですけど、年功序列でなかなか上のポジションの仕事をさせてもらえませんでした。そこで思い切って店を辞めて、本場の中国や台湾で修業することにしたんです。
——いきなり本場で修業ですか。
五十嵐さん:どうせ勉強するんだったら本場で学びたいという気持ちが強かったんです。台湾、北京、上海で修業しましたが、給料がない上に生活費も自腹でした。言葉はわからなかったけど、調理場では何を言っているのか理解できるんですよ。
——いろいろと大変そう。それにしても、すごい行動力ですね。
五十嵐さん:韓国料理店で働いていたときは、気に入ったキムチの味をマスターしたくて、韓国にある料理店までたびたび通って教わったこともありました(笑)。和食の店で働いていたときも京都まで勉強に行きましたね。
——中華料理、韓国料理、日本料理……ずいぶん、いろいろな料理を勉強してきたんですね。
五十嵐さん:34歳のときに独立して、そのすべての料理を合わせたダイニングキッチンを下北沢にオープンしたんです。家賃が月100万円もする大きな店舗で営業していたんですが、家賃を含めた経費を賄うために無休で働き続けることになってしまいました。
——新潟にやって来たのはどうしてなんですか?
五十嵐さん:結婚を機に妻の実家がある新潟で暮らすことになったんです。東京では休みなくがむしゃらに働いていたので、もう少し落ち着いて飲食店を経営したいという思いもありました。
——店名の「五十嵐」は地名に由来しているんでしょうか?
五十嵐さん:それもありますけど、最初に働いた中華料理店の親方の名前を拝借しました。店舗の住所も五十嵐だったので、なんだか運命的なものを感じましたね。そもそも中華料理にはこだわっていなかったんですよ。でも物件を見に来たら厨房に中華料理用のフライヤーがあったので、中華料理の店をやることになったんです(笑)
——新潟で暮らしてみて感じたことはありましたか?
五十嵐さん:雪が積もったのを見たときは感動しました。雪かきも初めて経験したので新鮮に感じましたね。でも2回目からは嫌になってしまいました(笑)
——「麺飯食堂 中華いがらし」をどんなお店としてやっていこうと思いました?
五十嵐さん:新潟大学の学生街という立地を考えると、本格的な中華料理店は難しいだろうと思いました。そこで中華料理を定食のスタイルで、カジュアルに楽しんでいただける店としてやっていくことにしたんです。
——なるほど。メニューも見やすくてわかりやすいですよね。
五十嵐さん:家族連れや年配のお客様も多いので、写真を使って文字も大きく載せることで、誰にでもわかりやすいメニューにしているんです。中華料理店にしては品数が少ないと言われることもありますけど、ひとりで調理しているので品数を増やすと提供に時間がかかってしまって、お客様に迷惑をおかけしてしまうことになるんですよ。
——こちらのお店は席数も多いので、ひとりで調理するのは大変なんじゃないですか?
五十嵐さん:いろいろな人間が料理を作ると味がぶれちゃうんですよ。それに料理の味には責任を持ちたいので、自分ひとりで調理しているんです。
——では、調理をする上でこだわっていることはあるんでしょうか?
五十嵐さん:中華味噌や甜麺醤(テンメンジャン)、葱油など、できるだけ自家製の調味料や油をを使うことにこだわっています。仕込みの時間がいっぱいかかるので大変なんですけど、他店と同じ味にならないように差別化を図りたいんですよね。
——そんなお料理のなかで、人気メニューってあるんでしょうか?
五十嵐さん:油淋鶏(ユーリンチー)がダントツ人気ですね。今はお休みしていますけど、10月から再開する担々麺も人気があります。「油淋鶏が食べたいから『麺飯食堂 中華いがらし』へ行こう」と思ってもらえる店でありたいですね。
——なるほど。最後に、どんな思いでお店を続けていきたいか教えてください。
五十嵐さん:野球選手がみんな大谷翔平になれるわけじゃないように、料理にも才能が必要で、レベルは人それぞれで違うと思うんですよ。だから、自分のレベルのなかでできることを最大限に努力していきたいと思っています。
麺飯食堂 中華いがらし
新潟市西区五十嵐二の町8287-4
090-5808-4829
11:00-14:30/17:30-20:30
月曜休