新発田市にある「お食事処クローバー」では、他では見たことのない「マヨネーズラーメン」「レモンラーメン」といったユニークなラーメンが楽しめます。店主の岩村さんから、お店をはじめたいきさつやメニューの秘密についてお話を聞いてきました。
お食事処クローバー
岩村 正従 Masatsugu Iwamura
1949年新発田市(旧紫雲寺町)生まれ。埼玉県の企業や東京都のレストランで働いた後、1972年に新発田市で「キッチンハウス クローバー」をオープン。現在は「お食事処 クローバー」に名前を変えて営業している。山登りが好きで、以前は飯豊連峰によく登っていた。
——「お食事処クローバー」さんは、オープンされてからどのくらい経つんですか?
岩村さん:おかげさまでちょうど50年経ちました。オープン当初は「キッチンハウス クローバー」っていう名前で、洋食をメインにしたお店だったんです。
——じゃあ、岩村さんはそもそもは洋食のシェフだったんですか?
岩村さん:最初は埼玉でサラリーマンをやっていたんですけど、会社勤めが合わないと思ったので自分で商売をやってみようと決心したんです。そこで東京都内にある何軒かのレストランで洋食の修業をはじめて、その間に節約して貯めたお金をもとに故郷の新発田で独立することにしました。料理の腕、お金、人のつて、すべてないなかで、あったのは若さだけでした(笑)
——でも、どうして洋食からラーメンにメインが変わっていったんでしょう?
岩村さん:開店して間もなく、お孫さんを連れたおばあちゃんがお店に来たんです。お孫さんはメニューのなかからカレーを選んだんですけど、おばあちゃんが「カレーだったら家でも食べられる」と言って帰ってしまったんですよ(笑)。それを見ていた他のお客様から「新発田で洋食をやってもダメだから、ラーメンをやった方がいいよ」とアドバイスをいただいて、その言葉に納得したんですよね。
——50年前の新発田では、洋食店よりラーメン店のほうが親しみやすかったんでしょうか。
岩村さん:そうかもしれません。とにかく生き残るために、ラーメン以外にも何でもやりましたよ。丼物は今でもやっているけど、うどんやそばもやってましたからね。出前も頑張っていました。お客様に留守番を頼んで出前に出かけたり、バイクで一度に6個の岡持ちを運んだりしていましたから(笑)
——出前の注文がけっこう多かったんですか?
岩村さん:うちは学校への出前が多かったんです。当時の飲食店って、学生がタバコを吸いに来ることも多かったんだけど、うちの店ではお断りしていたんですよ。それが学校の先生に評価していただけて、ずいぶん可愛がってもらいましたね。
——そういうこともあるんですね。当時から頑張ってこられたおかげで、50年も続いてきたんでしょうね。
岩村さん:まわりを見ても、頑張ってきたお店が残っているような気がします。
——「トマトらーめん」は、イタリアンみたいなラーメンですね。はじめて食べる感覚です(笑)
岩村さん:それは女房が「トマトを使ったラーメンを作れないか」と提案してきたので、試しに作ってみたら一発でできちゃったんです(笑)。洋食をやっていた経験が生かせたのかもしれないですね。
——新しいラーメンって、だいたい一発でできるものなんですか?
岩村さん:「トマトらーめん」みたいに一発でできることは稀で、ほとんどは苦労の末に完成しているんです。「マヨネーズラーメン」なんて相当時間がかかりました。いつも子どもたちにも試食してもらって試行錯誤しています。でもせっかく完成しても、お客様が引いちゃってなかなか食べてくれないことも多いんです(笑)。私が美味しいと思っている「酒粕麺」は、あんまり注文していただけないんですよね。
——どうしてそんな苦労をしてまで変わったラーメンに挑戦されているんですか?
岩村さん:ラーメン店はたくさんありますから、差別化や飽きられないための工夫として他店とは違ったラーメンを提供するようにしているんです。私は中華料理やラーメンの修業経験がないから、かえって自由にいろいろな挑戦ができるのかもしれませんね。
——調理をする際にこだわっていることってあるんでしょうか。
岩村さん:味見を欠かさないことですね。仕込みは遅くても朝4時半からはじめて、調理場に来たらまずスープやタレの味をチェックします。タレやチャーシューの仕込みがあるときは夜中の2時からはじめることもありますね。チャーシューはうま味が逃げないようにしっかりと下味をつけて、2日がかりで作っています。でもラーメンにチャーシューを乗せるとスープが冷めてしまうので、チャーシューメンは冷めにくい鉄鍋で提供するようにしているんです。
——そのこだわりで50年も続けてきたんですね。長く続けていると、常連のお客さんも多そうですね。
岩村さん:おかげさまでオープン当初から通ってくれているお客様もいます。当時学生だった人がお孫さんを連れてきたりね。常連のお客様とは遠慮がない間柄なので、お互いに言いたいことを言い合っています。はじめてのお客様が入りにくいんじゃないかって思われますけど、全然そんなことないんですよ(笑)
——これからはどんなことを目標に続けていきたいですか?
岩村さん:私も70過ぎですので、やれるところまで続けていきたいですね。
お食事処クローバー
新発田市新富町2-7-3
0254-24-4570
11:00-18:30(L.O. 18:00)
火曜休