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麺も出汁もこだわり抜いてつくる「どんどらさん」のうどん。

ラーメンやそばに比べて、新潟にはうどんの専門店が少ない気がします。そんななかで10年続いてきた人気うどん店が北区にある「どんどらさん」です。定休日の店内で仕込みをしている店主の井村さんを訪ねて、うどんに魅せられたきっかけやこだわりについてお話を聞いてきました。

 

 

どんどらさん

井村 雄一郎 Yuichiro Imura

1977年新潟市東区生まれ。飲食業や鳶職を経験した後、2006年に独立して「酒盛倶楽部カンナ」をオープン。27歳のときに讃岐うどんの美味しさを知り、その後香川のうどん専門学校や独学で勉強を重ねる。2015年に東堀でうどん専門店「どんどらさん」をオープン。2018年には北区へ移転する。趣味はサーフィン。

 

香川で食べた肉うどんの美味しさに感動。

——井村さんはサーフィンが趣味とのことですが、いつ頃から続けているんですか?

井村さん:21歳のときにサーフィンを覚えたんですけど、新潟はいい波が来ないので太平洋側の福島に移住して、飲食店で働きながらサーフィンを楽しんでいました。

 

——サーフィンのために福島で暮らしていたんですか……。すごい情熱ですね。

井村さん:27歳のときには仲間とふたりで、2週間のサーフィン&グルメツアーに出たんですよ(笑)。暖かい季節だったので夜は野宿していたんですけど、風邪をひいてしまいまして……。「富士急ハイランド」でジェットコースターの「FUJIYAMA(フジヤマ)」に乗ったらダウンしてしまい、そのまま帰ることになってしまったんです。

 

——それは残念でしたね。そのツアーでは、どんなグルメを楽しんだんでしょう?

井村さん:名古屋の味噌カツや浜名湖のうなぎ、明石のタコなんかを味わいました。どれも美味しかったけど、香川で食べた讃岐うどんには感動しましたね。肉うどんを食べたら麺に肉汁が染み込んで、それまで食べたことのない美味しさでした。

 

 

——それが「どんどらさん」のルーツなんですね。

井村さん:そうですね。その後は独立して新潟で居酒屋「酒盛倶楽部カンナ」を経営していたんですが、かつて食べた肉うどんの味がどうしても忘れられず、36歳のときにふたたび香川へドライブしたんです。

 

——10年ぶりに本場へうどんを食べにまた行ったわけですね。

井村さん:ところが、10年前に食べたような感動を得られなかったんですよ。どうしても以前の味が忘れられなかったので、それならば自分でうどんをつくろうと決心して、香川のうどん専門学校に入学しました。

 

——井村さんは夢中になると真っ直ぐ突き進むタイプなんですね(笑)

井村さん:そうかもしれません(笑)。専門学校ではうどんづくりの基礎を勉強したんですけど、結局は独学で研究しているので、うどんの一般常識とはかけ離れたつくり方をしているんですよ。

 

——独学の研究というと?

井村さん:昆布の出汁はどんなふうに取ればいいのか知りたくて、海に潜って昆布をじっと観察していました。参考になることは得られませんでしたけどね(笑)。美味しい麺についても追求していったら、菌や微生物までたどり着いてしまうんです。いろいろ研究して完成するまで3年かかりましたね。

 

とことんこだわってつくる、麺や出汁。

——「どんどらさん」ってなかなかインパクトのある店名ですけど、どういう意味があるんですか?

井村さん:香川の方言で「かみなりさま」という意味なんですよ。ただ、今では使っている人も少ない言葉みたいですね。電話がかかってくると「どんどらさんさんでしょうか?」なんて聞かれますけど、「さん」はつけなくて大丈夫です(笑)

 

——以前は東堀通と本町通の間で営業していましたよね。

井村さん:2018年に移転してきたんですよ。私は以前鳶や大工をやっていたことがあるので、知り合いの大工さんと一緒に図面も見ずに改装しました(笑)。カウンターの天井壁なんかは廃材をパズルみたいに組み合わせてつくったんです。改装費をそうとう節約できたんじゃないかな。

 

 

——それはすごい。では、うどんのこだわりについて教えてください。

井村さん:4種類の粉をブレンドして、もちもちつるつるを追求しました。温度や湿度によって粉の状態が変わってくるので、最近のように気温差が激しいと調整が難しいんですよ。夏場はどうしても冷蔵庫を使うこともありますけど、できるだけ使わず空気に触れさせることが大切なんです。春や秋のように穏やかな季節は美味しい麺ができますね。

 

 

——まるで生きものみたいですね。

井村さん:その通りです。出汁には昆布、鰹節、鯖節、いりこを使います。飲んだ後に香りが追っかけてくるような、力強さのある出汁を狙ってつくりました。季節によって出汁のつくり方も変えていて、夏は塩を多めにして冬は甘めにつくっているんですよ。哺乳類の体にそのときどきで必要なものを考えてつくるようにしています。

 

 

——そういったこだわりでつくる、おすすめのうどんを教えてください。

井村さん:これからの寒い季節は「鍋焼きうどん」や「牛すき鍋うどん」がおすすめです。「牛すき鍋うどん」は、僕が香川で食べて感動した肉うどんに近い味なんですよ。それから毎週木曜は「まかない定食」を提供しています。常連さんにも飽きられないよう、普段のメニューにはないものに挑戦していますが、人気があって行列することもあるんです。

 

 

——そんなに人気があるんですか? ちなみに、どんなメニューが食べられるんでしょう?

井村さん:なかでも人気があるのは自家製ラーメンですね。お客様から次はいつ提供するのか問い合わせをいただくことも多いです。内容は当店のインスタグラムでお知らせしています。

 

——まさかのラーメン(笑)。今後はどんなふうに営業していこうと思っていますか?

井村さん:お客様に喜んでもらうことだけ考えて続けていきたいですね。うどんは自分の作品みたいなものなので、お客様が喜んでくれると嬉しいんですよ。特に子どもが喜んでくれると嬉しくて、その言葉が耳にこびり付きます(笑)。それからオープン以来ずっと一緒にやってきてくれたスタッフにも感謝しています。

 

 

 

どんどらさん

新潟市北区木崎1754-3

025-250-6607

11:00-17:00/17:30-20:00(日曜のみ夜営業あり)

水曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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