食べられる花「エディブルフラワー」を栽培する脇坂園芸。
ものづくり
2019.07.24
「え、あの花も!?」おなじみの花を食べちゃうエディブルフラワー。
花は見て楽しむもの。でも、見るだけじゃなく食べる花も世の中にはあります。例えば「かきのもと」。それから、お刺身についてくる桜や菜の花なんかも実はしっかり食べられるんです。取材をしてみると、マリーゴールド、ベゴニア、ナデシコ、ダリア、パンジーなどなど…エディブルフラワーには「え、あれって食べれるの!?」って驚いてしまうおなじみの花がたくさんありました。今回はエディブルフラワーを阿賀野市で栽培し、全国に出荷している「株式会社脇坂園芸」の脇坂さんに、いろいろと話をお聞きしました。

株式会社 脇坂園芸
脇坂裕一 Yuichi Wakisaka
1962年阿賀野市生まれ。「日本エディブルフラワー協会」理事。高校卒業と共に神奈川県の生産農家で花の勉強をする。2年後新潟に戻り、翌年より実家の農園で観賞用花の栽培を始め、2014年からはエディブルフラワーに取り組む。趣味は音楽鑑賞で、ジャズ、クラシック、ニューミュージックなどジャンルを問わず聴く。
食卓を華やかに変身させる花の魔法。
——今日はよろしくお願いします。早速ですが、エディブルフラワーについて教えてください。
脇坂さん:はい。一番のいいところはなんといっても、見た目がきれいでおいしそうっていうことですよね。エディブルフラワーは食卓や料理の雰囲気を、華やかに変えてくれます。とくに女性は「視覚で食べる」といわれるほど見た目で味を感じます。きれいなものを見ると、ホルモンが分泌されるという説もあるそうです。栄養価でいうと、花はほうれん草より高いのですが、いっぺんにたくさん食べるもんじゃないですからねぇ(笑)。
——花を食べる習慣はいつ頃からあったんでしょうか?
脇坂さん:古くは石器時代から食べられていたようで、遺跡から花の種が発見されたりしています。新潟で食べられている「かきのもと」と呼ばれる食用菊などは、奈良時代に中国から伝わってきたということです。でも、ヨーロッパ、東南アジアなどでは日本以上に花を食べてきた歴史があるんですよ。生活にとって花は密接な関係があるものだったんでしょうね。ちなみに1990年に大阪で開催された「大阪花博」こと「国際花と緑の博覧会」の中で、日本にもエディブルフラワーが紹介されました。ただ、食べられる花の種類が少ないということや、栽培に日数がかかりすぎるという理由で、普及はむずかしかったみたいですね。
——代表的なエディブルフラワーやおすすめを教えてください。
脇坂さん:代表的なものはマリーゴールド、ベゴニア、ペンタスなどです。季節限定のものでは、春の桜、秋のキンモクセイもありますね。おすすめはペンタス。星型のかわいい花でお菓子やサラダ、何にでも使えて人気があります。JALファーストクラスの料理にも使われたりしているんです。ナスタチュームのように、葉酸がたくさん含まれている花もあります。葉酸は栄養価が高く、妊婦さんが摂取するといい栄養素だといわれてるんですよ。
——食べる以外に、花はどのように使われますか?
脇坂さん:マリーゴールド、ビオラなどを乾燥させて紅茶に入れると、花の香りを楽しむことができますよね。あと、バラの花びらをお風呂に入れると、香りや色を楽しみながら入浴することができ、リッチな気分を味わえます。

食べる花への目覚め。きっかけは東日本大震災で感じた無力感。
——脇坂さんはいつ頃から花の栽培をしているんでしょうか?
脇坂さん:実家は兼業農家で田んぼをやっていたんです。私は園芸に興味があったので、高校卒業後すぐに花を栽培している神奈川県の生産農園に就職しました。2年ほど勉強したあと20歳の時に新潟へ戻ってきて、その翌年から本格的に鑑賞用花の栽培を始めたんですよ。
——最初は鑑賞用の花だけ作っていたんですね。では、食用のエディブルフラワーを作り始めたきっかけは何だったんですか?
脇坂さん:平成23年に東日本大震災が起こって、東京農業大学で復興支援隊が結成されたんです。私も声をかけていただき、ボランティアに参加したんです。ところが鑑賞用の花を作っていた私は、米や野菜を作っている農家とちがって、生きるために必要な生活物資を被災地に提供することができない。その無力感から悩んでしまい、園芸農家をやめることも考えました。でも、ボランティアに参加していた若者から「被災者に生活物資が行き渡ったあとは、心の癒しが求められるようになる。花は絶対に必要になる。」と言葉をかけられて勇気付けられました。そして、見て癒されるだけの花ではなく、食べることのできる花を作ればいいんじゃないかと思ったんです。
——それでエディブルフラワーの栽培を始めたわけですね。
脇坂さん:栽培だけじゃなくて、他にもいろいろやりました(笑)。全国各地のエディブルフラワーに対する市場調査、国から補助を受けるための申請、商談会への参加。あと全国にエディブルフラワーのネットワークを作るため、「日本エディブルフラワー協会」を立ち上げたんです。
——「日本エディブルフラワー協会」ってどういう組織なんですか?
脇坂さん:北海道から沖縄まで、全国のエディブルフラワー生産者13名が会員になってます。エディブルフラワーの普及活動、会員間での情報交換のほか、お互いに連携してエディブルフラワーのやり取りなども行っています。お客さんからエディブルフラワーの注文があったのに、数が足りなかったり、指定された種類が自分の農園にはなかったりすることがあります。そんな時に、数が足りない分を回してもらったり、自分の農園では作っていない種類を仕入れたりできるわけです。大変心強いですね。

食べられる花を育てるのもひと苦労?
——エディブルフラワーって、どんな風に栽培されているんでしょうか?
脇坂さん:種をまいたあと3〜4ヶ月間、ビニールハウスの中で農薬を使わずに栽培をします。花が咲いたら色や形を分別しながらていねいに手摘みし、その中からさらに新鮮できれいな花を選びます。選んだ花に虫がついていないか一輪一輪検品し、パック詰めしたあと冷蔵庫で鮮度保持するんです。季節によって変わりますが、年間で35種類くらいを栽培してますね。
——エディブルフラワーの栽培で大変なことはありますか?
脇坂さん:全部大変なんですが、一番大変なのは虫です。食用の花は観賞用とちがって農薬を一切使うことができないので、虫がつきやすいんですよ。ですから収穫時の点検には細心の注意を払っています。また、夏の暑い時期や冬の寒い時期など、お客さんのニーズに応えられるように、常に花の咲いている状態を管理をするのも大変ですね。
——無農薬栽培は手間がかかりそうですね。
脇坂さん:そうですね。そこで、阿賀野市内の企業50社などが参加している異業種団体「阿賀野ドリームプロジェクト」の協力を受けて、廃校になった大和小学校を使った植物工場での栽培を平成28年から始めたんです。これによって虫や天候で栽培が左右されることは少なくなりました。
——安定した供給がしやすくなったんですね。栽培の際に心がけていることはあるんですか?
脇坂さん:エディブルフラワーの詰め合わせパックを作る時に花が同じ色で片寄らないよう、いろんな色の花を栽培するように気をつけています。あと、開花時期がそろうように種類を選んで栽培するようにしています。

「99%無理」といわれた末にオープンしたアンテナショップ。
——「エディブルガーデン ソエル」はどのようにオープンしたんですか?
脇坂さん:平成26年7月にオープンしました。眺めのいいこの場所に人が集まるようなスペースを作りたくて、8年かけて田んぼを埋めて建物を作ったんです。ところが、農地法にひっかかりまして、埋めて建物を作った土地は農業以外の目的で使えない土地ということがわかったんです。役所では、農業以外の土地利用は「99%無理です。」といわれたんだけど、残り1%に掛けて悪戦苦闘した結果、条件付きで農業以外の利用を認めてもらったんですよ。その条件というのが「飲食店はできない」というものだったので、計画していたカフェができなくなっちゃったんです(笑)。

——それは大変でしたね。結局建物をどのように活用することにしたんですか?
脇坂さん:エディブルフラワーを使ったクッキーやフラワーティーなどの加工品を販売する、アンテナショップとして営業しています。でも、あんまり営利的な気持ちはないので、公民館や多目的スペースのような空間になってくれたらいいかなと思っているんです。今、店舗の裏にインスタ映えするようなテラスを作っているところなので、カップルなど多くの人に来てほしいですね。
——エディブルフラワーの加工品でおすすめのものを教えてください。
脇坂さん:まず「フラワーソルト」。村上市の笹川流れにある「ミネラル工房」で作られた海水塩「白いダイヤ」に、ドライエディブルフラワーが入ったおしゃれな塩です。おむすびや天ぷらなどに使うと見た目もきれいでおいしく食べられます。もうひとつは「いろどりクッキー」。ドライエディブルフラワーとコシヒカリの米粉を使ったクッキーで、見た目もかわいいのでティータイムが楽しくなりますよ。

特別な日にはエディブルフラワーでお祝いを。
——今後どのようにエディブルフラワーに取り組んでいきますか?
脇坂さん:花は生のままだと日持ちしなくて、どうしても流通に限界が出てきますので、ドライにして販路を拡大していきたいと思っています。それから「日本エディブルフラワー協会」のみんなで力を合わせ、海外に打って出たいという気持ちもありますね。
——エディブルフラワーをどのように楽しんでほしいですか?
脇坂さん:特別な記念日なんかに、エディブルフラワーを使って、豪華にお祝いしてほしいですね。華やかな見た目は、プレゼントやサプライズメニューにぴったりだと思います。

東日本大震災のときの経験から、「食べるための花」エディブルフラワーの栽培を始めた脇坂さん。全国に会員が広がる「日本エディブルフラワー協会」、アンテナショップ「エディブルガーデン ソエル」を立ち上げ、その普及にも力を入れています。阿賀野市を中心とした飲食店では、すでにお目にかかる機会が増えているエディブルフラワー。みなさんもぜひ特別なお祝いの席で、料理やデザートに使ってみてはいかがでしょうか?
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