現役スタイリストが営む古着屋「et cetera.tokyo」。
カルチャー
2019.09.26
一歩抜け出したファッションを目指すなら。さぁ、扉を開けてみよう。
古着屋と聞くと、安くて、可愛らしく、雰囲気のある洋服が並んでいるポップなショップを想像する人が多い。しかし、本当に価値があり、現行で発売されている洋服のベースとなったモデルや、時代背景を映し出しているモノが並んでいるのが真の古着屋です。例えば、戦前から生産されていたといわれる「Levi’s デニムジャケット506xx」とか。そんなアイテムがフランクに並べられた「et cetera.tokyo(エトセトラ・トーキョー」。現役スタイリストとしても活躍するオーナーの新井さんに、ファッションに対する熱い想いをうかがいました。

et cetera.tokyo
新井ケンタ Kenta Arai
1993年新潟生まれ。東京のファッション専門学校へ進学。在学中に古着専門WebStoreを立ち上げ。フリーランスでスタイリストとしても活躍。2018年上越市に「et cetera.tokyo」、2019年新潟市に「piiiiece」をオープン。
姉が買ってくれたプリントTshirtは、1970年代のビンテージ。
――めちゃくちゃおしゃれな格好をされていますね。どんなキッカケでファッションにハマったんですか?
新井さん:ファッションを好きになったのは小学生の頃です。5歳上の姉が古着にハマっていて、自分にも1着買ってくれて。それがめちゃくちゃかっこよく、以降、お小遣いやお年玉をすべて洋服につぎ込むようになりました(笑)
――優しいお姉ちゃんですね。羨ましいです。ちなみに、どんな洋服を買ってくれたんですか?
新井さん:アメコミのようなタッチのイラストが染み込みプリントされていた1970年代のTシャツです。今でも持っていますね…いや、友達の家にあるな。貸したままですね(笑)

――友達に貸したんですね(笑)
新井さん:そうなんですよ。確かBBQをしたときに…。まぁ、大切に持っています!そのTシャツがキッカケとなり、高校生ではバイトをして夜行バスで東京に行っては買い物をするなど、とにかく洋服を買っていましたね。古着はもちろん、「MAISON MARGIELA(メゾンマルジェラ)」など、セレクトショップでの買い物も。
――高校生で東京まで洋服を買いに行くなんて、相当なハマりようですね。
新井さん:ファッションそのものが好きになったので。それに、夜行バスって、上越から長岡を経由して、やっとこさ池袋のバスロータリーに着くんですよ。なんだかんだ6時間もかけて。その道中が楽しくて。行きは何を買うかを考え、帰りは「買っちゃった…」と、ちょっとだけ現実に引き戻されながらも、どうやって着るかを考えながらワクワクして。その感じも楽しくて仕方なかったんですよね。

在学中にはじめたWebStoreから繋がった、スタイリストへの道。
――高校を卒業してからは、やっぱり、ファッションの道を選んだんですか?
新井さん:そうですね。スタイリストになりたくて、東京のファッション専門学校へ行きました。
――当時はどのようなスタイリングやファッションを見本にしていましたか?
新井さん:スタイリストの白山春久さんですね。ずっと大好きで、とにかくスタイリングをマネしていました。ファンになると雑誌をめくっていても一目で彼のスタイリングだなってわかるようになり、「POPEY」「MEN’S NON-NO」などのファッションフォトを見まくっていました。あと、白山イズムを継承している髙橋ラムダさんのスタイリングも好きでしたね。
――雑誌を見ただけで、誰がスタイリングしたかが分かるなんて凄いですね。想像できない世界です。ちなみに新井さんが目指すスタイリングって、どんなですか?
新井さん:白いTシャツにデニム。これだけでいかにカッコイイ男に魅せられるか。それが自分の目指す究極のスタイリングだと思っています。

――ブラッド・ピットが出演していた「EDWN 503」のCM、なんだか浮かんできました(笑)。専門学生時代は、どんな生活を?
新井さん:アメリカ、タイなどへ古着の仕入れ(ごっこ)に行ったり、スタイリストのアシスタントもしていました。卒業間近に、友人と古着のWebStoreも立ち上げましたね。服を単品で掲載しても面白くないから友人にモデルを頼んだりもして。今、スタイリストの仕事ができているのは、このWebStoreがキッカケなんです。
――キッカケというと?
新井さん:WebStoreで掲載していたスタイリングを見たある音楽会社の方から「よかったらスタイリングをしてみませんか?」って、いきなりメールが来たんです。打ち合わせをしてみたらギャラもくれるというし、正直、無償だと思っていたので、スタイリストは楽しいし仕事になるんだと実感しました。そして、スタイリングも気に入ってもらえて、アイドルや同世代のアーティストの衣装など、いろいろな仕事に繋がったんです。

自分のカッコイイを追い求め。気が付いた第三者への影響。
――その後、スタイリストとしての仕事は順調に?
新井さん:その音楽会社からいろいろと仕事は広がっていきましたが、アーティストが売れていくにつれて大先輩のスタイリストが付いたりするんです。まともに飯は食べられるぐらいの仕事はもらえていましたが、なんか業界のリアルを感じてしまい…。
――売れるにつれて…なんかリアルな世界ですね。それがキッカケで古着屋をはじめたんですか?
新井さん:自分が思うカッコイイを追い求めてスタイリングしてきましたが、それって第三者に何の影響も与えていないんだなって感じたことも理由のひとつです。普通の人からしたら誰のスタイリングか分からないし、洋服だけ見ている場合だって大いにしてあります。だったら自分でショップを開いて、直接的に影響を与えられたらなって。
――確かにファッションスナップを見ても「このジャケットいいな」「どこのTシャツだろう?」って、表面しか見ていないかも…なんかグサッときますね。
新井さん:ただ、古着屋をはじめたといってもスタートは友人と、友人の友達しか入れない、かなり間口の狭いショップでした。身近な人たちにかっこよくなってもらいたいなって。そうやって1年ぐらい、スタイリストの仕事もしながら古着屋をしていたら、なんだか楽しくなっちゃって。最終的にはスタッフを雇って、誰でも買いに来れるノーマルスタイル落ち着きました。

好きなことをやりながら生きていける金があればいい。
――東京で古着屋をされていたのに、どうして上越にUターンしてショップを?
新井さん:正月に帰省していたときに、この物件が目に入ったんです。まだ上越で古着屋をやるなんて考えてもいなく、ただただ良い場所なのにもったいないなって。それから何かを考えるわけもなく。柏崎に昔からお世話になっている人がいて、東京へ戻る前に会いに行ったんです。その時にいわれた言葉が、ずっと頭にあって。
――なんて言葉をかけられたんですか?
新井さん:「何でそんなにお金に執着するの?」って。自分ではそんなつもりはまったくなく、友人にカッコイイスタイルを提供したいと思ってはじめた古着屋は、周りから見たらビジネスに走っているように見えるのかなと、考えさせられるキッカケになりました。それに「好きなことをしながら生きていける金さえあれば、それでいいじゃん」とも。
――自分が思い描いていた自分は、第三者から見たら違って見えていたんですね。感じ方はそれぞれですが、そんな言葉をかけてくれ、人生に問いかけてくれるって、ありがたいですね。
新井さん:正直、いつかは地元である上越に戻って来たいとも考えていましたし、いくらスタイリストといえど、30代、40代になってから上越で急に古着屋をはじめても大丈夫なのかって心配していた点もあったので、悩み、考え、やれる環境に身を置いているのであればやってみるしかないと。東京に戻って1ヶ月もしないうちに上越でやりたい古着屋をしようと決断しました。

「et cetera.tokyo」にあるのは一歩踏み出したファッション。
――決断してからは、オープン準備ですか?
新井さん:新規オープンというよりは、移転オープンといった気持でしたね。正月にチラッと見つけたこの物件もありましたし。
――あの時、この物件を見ていたのは運命だったんですね。
新井さん:良い意味でも、悪い意味でも、思い立ったらすぐに行動する性分なので、1月末に決断して、2月2週目にはトラックで荷物をこの場所に運んでいました。それから友人に片っ端から連絡をして、店づくりをスタート。3月3日にはグランドオープン。めちゃくちゃなスピード感で走りました(笑)

――ん~早過ぎです(笑)。それではショップについて、お聞きします。「et cetera.tokyo」のセレクト基準を教えてください。
新井さん:せっかくなら質の高い洋服を着てもらいたいので、ベーシックを基盤に、そこから伸びていくアイテムを意識してセレクトしています。今流行りのプリントスウェットのような、可愛く安い古着を求めている人にはマッチしません。流行りのアイテムならセレクトショップに行けば買えるし、安さを求めるならリサイクルショップに行けばよくて。そんなところから一歩抜け出したファッションをしたい人に来てもらいたい古着屋が「et cetera.tokyo」です。
――一歩抜け出したい。すごく共感できるワードです。お店を見渡すと、ビンテージの「AKIRA」Tシャツや、「Levi’s」のファースト デニムジャケットなどが普通に並んでいますね。希少なアイテムですよね?
新井さん:ショーケースに飾るべきレアアイテムも、うちではラックに並んでいます。その価値を知っている人に掘り当ててもらえたら嬉しいし、本物に気兼ねなく触れて、着てもらいたいから。そして洋服の知識に+αで、その人がカッコよくなるための手助けがしたいだけ。それが僕の古着屋としての考え方です。洋服だって、人と同じで中身を知らなければ分からないし、「聞いたことある、見たことある」だけでは批評する資格はないと思っています。とにかく、どこにでもある洋服を求めるのではなく、オンリーワンを一歩踏み出して身に着けてもらえたら、古着屋として、スタイリストとして嬉しい限りです。

ファッションはいつになっても、一歩進める。
最近、洋服を取り扱う方にインタビューをする機会が増えています。それは自分の考えに、いい意味で刺激になっていて、年齢を重ねるにつれて変わってきたファッションに対しての考えに、しっかりとした土台を構築してくれています。「et cetera.tokyo」に通うお客さんのなかには、40代になりメゾンブランドに目覚めた人も。どんな洋服を着てきたか、着ているかなんて関係なく、なにかのキッカケで洋服に対しての考え方が変わる瞬間がある、それが古着屋であり「et cetera.tokyo」。値段が高いから良いモノではなく、その1着に込められた時代と思いも羽織ってこそ、カッコイイ男になれるのかなって、背伸びをしはじめた初秋でした。

et cetera.tokyo
新潟県上越市本町3-2
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